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はじまりはじまり。小さな冒険?
328、大好き!のカタチは色々で。
しおりを挟む──僕には国の治世なんて関係ない。
大好きだった王の血筋が途絶えてしまったのなら、この国の守護を続ける理由もない。
……だって関心があったのは、大切だったのは『王と王の血筋』だけだもの。
そんな、龍の声が聞こえるような気がした。
「さて、レイを助ける理由。もう、わかるよね?龍から見たら王家は『大好きだった友人の子孫』で、可愛くて大切で、ずっと見守りたい存在なんだよ。それが瀕死の状態で、自分なら助けられる」
「むしろ自分だけが助けることができる状況だわ」
フィリー姉様も笑って答えている。
エルネストも納得が行ったのか、ホッとした表情になって小さく頷いていた。
「謝ってくるっ!」
「そうだね。僕だって助けたいと思う。だから龍が『助けてくれる』ってみんなの意見は不確定なものでは無いんだよ」
ヴィンセント兄様の声は、エルネストに届いたのかな?
よくできました!と言わんばかりの優しげな視線達が、食堂へ一目散に駆けていくエルネストの背を見送っていた。
******
「エルは心配症だなぁ……」
「そうかい?心配しすぎるくらいが、ちょうど良いって時もあるからね……っと、セシリアはお菓子終了ね?……これは心配とかいうレベルじゃないな。お腹ぽんぽんだろう」
エルネストの背が食堂へと消えた後、カイルザークがポツリと呟いた言葉に、ヴィンセント兄様が……って、ぽんぽんって!!!
でも、ちょっと落ち着いて確認してみると……確かにお腹がぽっこり出ていた。
それも、服の上からはっきりと確認できるほどにぽんぽんでした。
しかも、妊娠中の『お腹が張る』っていうあの感触のように、お腹が硬い。
これ、お腹を軽く押されたら、何かが出てくるわ……。
「ほんと!何そのお腹っ!?ちょっと食べすぎよ?」
「……お菓子いっぱい食べてるとは思ったけど…これは。食べすぎでしょ。はははっ!」
呆れ返るフィリー姉様と爆笑中のセグシュ兄様。
こういう時だけ仲が良いのね。
しかし、父様の膝の上でお菓子を取るときに気持ち前に屈むような姿勢になると、息苦しさを感じてたのは、腹が出てたからなのね…?!
「ふふっ。やだもう…。あなた、どれだけお菓子詰め込んじゃったの?お腹壊しちゃうじゃない」
「……」
父様に勧められるままに食べちゃってたから、どれだけと言われても、実感がございませんっ!
ていうかこのお腹、ちゃんと元どおりに引っ込むのだろうか……。
不安になるくらい、見事にぽっこり出てる。
『あぁ~。ちょっと遅かったもんねぇ。晩ご飯。食堂に準備できたんだけど……移動よろしいでしょうか?』
フレアの声がけに「セシリアはこれ以上食べちゃダメだからね?」とか言いながら、ゾロゾロとみんな食堂へと移動を始める。
えぇっ!?ちょっと待って!
これって『お菓子食べすぎて晩ご飯食べない子』そのままじゃないですかっ!
そんな…!意図してないからね?!
……ご飯食べたいです。
(晩ご飯、パンじゃなくてお米だよね…さっきから炊き上がりのなんとも言えない香りが漂ってきてたもの。炊き立てのご飯、食べたいよ!)
愕然としたままその場で固まる私を覗き込むように、フレアがしゃがみ込んで、頭を撫でる。
『セシリアも行こう。そんな悲しい顔してなくて良いから……雑炊、ちょこっとだけ出すから。温かいものを入れて、お腹、落ち着かせよう?』
こくりと頷くと、間近にあった澄んだ紫の瞳が、嬉しそうに細められると、そのまま抱き上げられてしまった。
あまりにショックすぎて、声が出なかったんだよ。
(せっかく作ってくれた食事を無駄にしてしまう事。これは絶対にしてはいけない事だと前世では子供達に教えてきた事だし。作る大変さだって知ってるから、料理を簡単に残された時の悲しさだってわかる……)
子や孫達に『絶対にしちゃダメだよ!』と、教えて来た事を、まさか自分がやってしまうだなんて!と、ルナ達に申し訳ないやら悲しいやら。
「甘やかしちゃダメよ?」
『これでも僕の主人だからね?喜んでくれるなら、全力で頑張りますよ~』
フィリー姉様の声に、私を抱えたまま笑顔で答えるフレア。
私のことを『主人』だなんて言ってるけど、どこまで本気なんだか。
「じゃあ、暴走やめたら良いのに……」
『それとこれとは話は別!…というか、僕たちを超えてくれたら、勝手に治るんだけどね。今は僕たちの方が勝っちゃってるみたいなんだよねぇ~。頑張って育ってね?』
カイルザークの呟きにまでしっかり答えてるけど、ねぇ、シシリーの時も、当たり前のように暴走してたよね?
(あの時のシシリーは年齢的にも体力的にも、魔力は一番充実している時だったと思うのですが。それでも暴走してたってことは、今世でも相当努力しないと生涯暴走しっぱなしってことじゃないのかしら?)
なんて、思ったり思わなかったり……。
出会ったばかりの頃は、本当に線が薄くて今にも存在ごと消えてしまいそうな儚さのある、精霊になりたての小さな存在だったのに。
逞しくなったもんです。
「ってことは、僕もライトに負けちゃってるのか……」
『そうだねぇ。人形を自然と取れるほどの精霊なら、エルフなみの魔力とか知識がないと、競り負けちゃうと思うよ?……まぁあの子の場合は、再会の喜び暴走ってやつだったんだけど。落ち着いた今はどうだろうね?』
そう言いながら、ちらりとカイルザークの隣を歩くライトに視線をやる。
フレアの視線に気づいたのか、ぷくーっと頬を膨らませると眉をつり上げた。
『ライトちゃんは!良い子だもん!暴走なんてしてませんよ~だっ!』
『あ……うん。カイ、頑張れ!』
「ですよね……」
『なんでですかぁぁぁぁぁっ!』
「あーなんでもないよー。うん、ライトが立派に成長して嬉しいねーって、ねー」
『うわっ…すげぇ棒読み……』
怒るライトに、遠い目のカイルザーク、そして、思いっきり笑いを堪えているフレア。
喋り方が素に戻ってるよ?フレア。
ちなみにだけど、制御できてたら…周囲に喧嘩売ったりしません。
特に、自分より格上だと思われる精霊相手には、絶対にしない。
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