私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

333、姉様の趣味全開で。

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「ああ、毎度恒例の黒歴史フラればなしか……いてっ!」


声の方へ振り向いた瞬間、閃光と…ぱん!と手を叩くような軽い破裂音があって、視界が薄暗くなってしまった。
閃光によって目眩しをされてしまったようだ。


「風呂上がりしっとりなのに、ばちん!て…えぇぇ。湿気ってたら出しにくいって言ってたじゃないか」

「そうよ?難しくって、ついつい加減ができなくなってしまうのよ」


微妙に悲しそうにしているフィリー姉様の声が響く。
それはとても芝居がかっていて…姉様の口角が楽しげに上がっているのが見えているわけですが。


「痛すぎだよ……青白い火花が見えたよ…」


声の先には、明度を失ってもなお、鮮やかに映る赤髪。
涙目になりながら肘の辺りをさすっている、セグシュ兄様がいた。


「あら、戻ったのね?お帰りなさい。ゆっくりできたかしら?」

「なんだかとっても白々しいね……まあ、すっきりしたよ」


少し棒読み気味に、ふわりと優雅な笑顔で出迎えるフィリー姉様と、半目になりながら返事をしているセグシュ兄様。
姉弟のじゃれあいだとわかっていても、この2人の会話にはどうしてもヒヤヒヤしてしまう。


「そうかしら?すっきりの割には疲れてるようだけど?」

「……フィリー姉さんのおかげでね!泳いで良いとか教えるからっ!」


はぁ…。と、大袈裟なため息とともに吐き出されたセグシュ兄様の言葉に、思わず笑ってしまった。

どうやら、レオンハルト王子とエルネストが広い浴場で泳ぎ出したらしい。
さらに、それを見たカイルザークまで泳ぎ出してしまって。

しかもそれぞれに、身体を洗う介助が必要だった…と。


「泳ぐし逃げるし、洗わせないし…もう、それぞれに大惨事だったんだからね?!」

「で、早々に逃げてきたと?……なんなら手伝うけど?」


……姉様、目がマジになってて怖いです。
と、思ったけどそうだ、初対面でおむつの確認とか言いながら『カイルザークやユージアの尻を見てしまった!』とかやってた人だった!


「いや……脱衣所で3匹のぼせて伸びてるから、どうしたら良いかな?って聞きに来たんだよ」


セグシュ兄様が、完全に呆れ顔になりながら首を横に振る。
風呂上がり爽快!という感じよりも、お風呂に入る前よりも疲れているのがはっきりと見て取れてる時点で、レオンハルト王子達が本気でお風呂を楽しんでたんだろう事がうかがえる。


(こういうのを見ると毎度、思うんだよねぇ。子供の数が増えると、労力は倍増じゃなくて累乗されていくんだって)


つまりね、2人になると労力は2倍じゃなくて、2乗…えっと、2を2回かけることになる。
1×2じゃなくて1×2×2…。

ほら、増えるのは思考も行動も全て一緒のロボットじゃなくて、全くの別の個性を持っているからさ、ひとつの事いたずらに対する閃きも2人分上がってくるんだよね。
しかも統率が取れているわけでもないから、何をしでかすかも未知数だし。
さらにその2人が意思の疎通ができる年齢であれば、2人で出し合ったアイデアからのさらに強烈な悪戯が飛び出してくる。

これが3人分と考えると……ちょっと凶悪すぎて考えたくないかな!


セグシュ兄様、お疲れ様。と、言う前に……大惨事な光景が容易に想像できてしまって、うっかり笑ってしまっていたらしい。
「笑ってる場合じゃないぞ?本当に大変だったんだから…」と、ため息混じりに頭をポンポンと撫でられてしまった。


「あら…レオンも寝ちゃったの?」

「冷たい風が出るところで、3人とも転がしといたら、そのまま寝ちゃったんだよ」


本当に……全力で楽しんだみたい。
男の子3人の全力とか、親の立場から見たら恐怖だわ……。

同じ年代でも男の子の場合、どうにも言葉での制止が利かないばかりか、思いっきり体力勝負になる。
そういう意味だと、女の子って扱いが楽そうに見えるんだけど…いたずらをしない、と言うわけではない。こっちはこっちで頭脳戦になる。

女の子の場合は体力を使わないだけマシ、というだけの話なのだけれど。
育児って本当に体力勝負が基本だから、体力がどんどん消費されていくのは本当に辛い。

兄様達、お疲れさまです…。


「ふふっ…あの子、チビのくせに気を張りすぎなんだもの、ちょうど良かったわ」

「それはわかるけどさぁ……本当に大惨事だったんだからね?!」


特にうちのチビ2人がっ!!と、いうセグシュ兄様の叫びのような言葉は、どうやらフィリー姉様には、意図的に届かなかったようだけど。

うちのチビ2人って…そりゃ獣人だから。
体力面というか、筋力の発達が明らかに違うからね?

……兄様の言葉に笑いつつも、大人達がちゃんとレオンハルト王子の様子を気にかけてくれていたことにホッとした。


「とりあえずレイが寝てる隣のベッドに寝かせて…かしら?……手伝い、いる?」

「肌着だけで、着替えもそのままに寝ちゃってるから、今、兄さんが着せてるところなんだ。運ぶの手伝ってもらえると助かる」


セグシュ兄様とフィリー姉様が席を立ったので、一緒に行くつもりで私も立ち上がる。
フィリー姉様はやる気満々のようで、ドレスの袖を思いっきり腕まくりをしてしまっていた。
……繊細なレースがダメになっちゃうよ?と、不安になる勢いで。


「じゃあ、手伝ってくるから、セシリアは寝かせやすいようにベッドの毛布をまくっておいて?」

「はぁい」


残念!お留守番を言いつけられてしまった。
まぁ、せっかくだし、1人でゆっくりしてるべきかしら?

とりあえず、食堂まではお見送りをしようとついて行った。


『ライトちゃんも行きますっ!』


食堂に入ったところで、フィリー姉様の前へ小さな女の子が転がり出てきた。


『はいは~い、ライトはカイマスターから魔力を奪いすぎない勉強をしてからね?……まだ途中だよねぇ?』

『はっ、はいぃぃぃぃっ!』


背後から怒りのオーラが見え隠れしている、一応笑顔…?の、ルナの声が聞こえると、ライトが悲鳴じみた返事を返す。

あれ…そういえばライトはお風呂に一緒に行かなかったんだな。と、思ったのだけど、どうやらルナに捕まってたらしい。
ルナはフィリー姉様達に軽く礼をすると、ライトを抱え上げて、食堂のテーブルへと連れ去っていった。


『フィリー様、私が運びますので、ベッドの……いや、寝室の部屋割りをお願いします』


カフェ風のロングのエプロンを外しながら、ルナに代わってフレアがフィリー姉様に話しかけていた。


「ああ、気にしないで良いわ。子供くらいなら全然苦でもないし。それにフレア、倒れてるあなたを運んだのは、私なのよ?」


腕力には自信があるわ。と、姉様は片手を軽くひらひらと「大丈夫よ」と言わんばかりに振りながら楽しげに笑う。


『えぇ…。それは申し訳なく……』

「それにね…」


片手を口に添えると、悪戯っぽく笑んで囁いた。


「エルも、寝てる時はカイのような耳としっぽが出てるって聞いたから、見てみたいのよ」

『そっち……』

「あら、とても大事なことよ?ふふっ」


「あの子も、レオンと同じ感じで真面目っぽいでしょう?きっと普段じゃ見れないと思うのよね!」と、意気込んでいた。
……多分そう。フィリー姉様の見立てはきっと当たってる。
だから、と対策を取られてしまってはどうしようもないね。頑張れ!エル!

楽しげに遠ざかっていくフィリー姉様の背を、どんどんグッタリとしていくセグシュ兄様の背をキッチンのさらに奥へと、少し遠い目になりながら見送る。


「……本当は、着替えも楽しみたかったわ!」

「姉さん…寝衣だからね?!…エル達は着せ替え人形じゃないからねっ!!」

「そうね、明日の朝、頑張ることにするわっ!」

「そうじゃない…そうじゃないんだよ……」


そんな、声が小さく聞こえてしまったのだけど、これは聞かなかったことにしておくよ。

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