336 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
336、続、分離作業。
しおりを挟む「技術提携の管理者がセシリアなのか……ふっ。あははっ!どういう偶然なんだろうな?こんなにすごい施設型魔道具を作り上げてしまうような人物と勘違いされるなんて…どんな穴があったんだろうな」
あまりにも予想外なところに私の名前があると言われたようで、父様から、乾き気味の笑いが聞こえた。
あ、はい…大穴ですね。
魔導学園が前世でいう特許のようなものをたくさん持っていたんだ。
まぁ、魔法関係の研究機関併設だから、子供たちから見れば魔法の学校だけど、大人たちから見れば、魔法や魔道具の開発の最先端を行く巨大な企業であったり、医療機関でもあった。
そこの総責任者が……もちろん部門別に代表者が置かれているので、そちらで対処が基本なのだけど、繁忙期には代理として手配から予定の管理から、お手伝いと称してラディ学園長が全てをこなしてしまえるほどの知識量を誇っていた。
とても……優秀な人だった。
もちろん、メンテナンス等は開発した部署ごとで行っていたけれど、それでも致命的な問題が起きてしまった時には、学園長も同行する。
すると、やはり何事も無かったかのように、問題解決を見て帰ってくる。
(今、その学園長の代理として私が登録されてしまっているわけだけど…本当に代理としての能力を示せと言われたら、到底無理な話だわ)
これだけ優秀な人だし、広大な施設を統べている学園長ともなれば、かなりの…それこそ老人をイメージしがちなのだけど。
実際の姿は20代後半、もしくは30代くらいの美丈夫だったりする。
(確かに目の保養だったしなぁ。学園長が出席する学会系は、意味もなく出席率が上がるってよく聞いていたし)
どうにかお近づきになりたい!とか、下心が!というよりは、ただただ見てるだけで幸せになれてしまうっていう美人さんって、いるでしょう?
本当にそんな感じで、文字通り眼福の人でした。
学園内でそのお姿を見かけたら、幸せな1日がおくれるとか、最高の運気なのだとか、学園内の女子たちがジンクスのように口を揃えて言ってるくらいだから、きっとシシリーの審美眼は間違っていなかったはずだ。
ちなみに学園長は独身だったので、社交界でも大人気だったそうですよ!?
(……そういえば、学園長って年齢不詳だったのだけど、実際はおいくつだったのかしら?
出会った頃からあんまり変わってないような……あれ?)
今更ながら、妙な違和感を感じたりしたわけだけど、そこで我に返る。
脱線してる場合では無い!
ルナに抱かれたまま、周囲を改めて見回す。
天井が高いことばかり意識していたのだけど、実際は横にも広くて。
この部屋は『避難所』のサロンほどでは無いけれど、それに近いくらいの広さがあった。
だからこそ、出入口が小さめのドアひとつしかないという作りに、部屋の構造の異様さが際立っていた。
(だって、サロンであれば、夜会や舞踏会なんかの会場に使われるような、屋敷の中でも一番豪華な作りになるような部屋のはずなのに、部屋の装飾と考えるにしても不似合いな、小さなドアがポツンとあるだけなんだもの)
……サロンなのに、お客さんを招く気がないでしょう?という作りの、みすぼらしいドア。
部屋自体は、天井に飾り彫りのオブジェがあるほどに手が込んでいるのに。
父様は、分離作業中の魔物の裏へ回り込むと、その奥に守られるように隠されていた、この部屋唯一の出入り口となる、小さなドアから廊下を覗き込んでいた。
確か、カイルザークと一緒にここに来たときは、閉まっていたはずなんだけど、今は遠目にも分かるほどに大きく開け放たれている。
父様は、こちらへ振り向くと小さく首を横に振り、そろりとドアを閉めると、長杖を手から消す。
運動後のストレッチなのか、腕を伸ばしたり、肩を上げたり下げたりしながらこちらへ戻ってきた。
「さて……討伐は終わったようだけど、思ってたより呆気なかったなぁ」
「そうだねぇ。聞いてたより瘴気も薄かった…のは良いんだけど、報告と違うような気がするんだよね」
魔物だったものの上に陽炎のように揺らめく瘴気が濃くなっていくたびに、瘴気を払ってくれている守護竜が話す。
闇の妖精たちへの『宝』の返却作業は順調に進んでいて、討伐直後の大きさの半分以下になっていた。
「……セシリア。カイの説明より大分…魔物のサイズが小さいようだが…この個体のことだったのか?」
「違う…と思う、思い、ます。……ここにいた魔物って、この1体だけ…ですか?」
「ああ、そうだが。これがセシーたちが倒せなかった魔物じゃないのか?」
「違い…ましゅ。私が見たのはもっと、もっと大きくて……」
ふあぁ。と、会話中にもかかわらず、あくびが出てしまった。
(あ、これ、魔力切れ間近だ、やばいかも……)
そう自覚すると同時に、急激な眠気の波が押し寄せてくる。
ルナ、相当しんどいんだろうなぁ。とか思いつつも、私の魔力補給も限界がきてしまった事に焦りを覚える。
(……あともう少しだから。この『宝』を返却し切れるまでの魔力が、私に残っていますように)
そう思った直後、首の力がすっと抜けてしまった。
すかさずルナが頭を支えて、お姫様抱っこから、普通の抱っこのような状態になった…と思う。
あまりの眠さと、ルナにかかえるように抱っこされた安心感からか、さらに意識がすっと遠ざかった。
……が、いつもの睡眠状態と何か状況が違う。
完全に身体は脱力していて『これは寝てるな』と自分でも自覚できるのに、聴覚と思考がしっかり機能しているという、不思議な状況に陥っていた。
『セシリアの言った通りです。形状がまず違います…あと、足りません』
「足りない?アレで全部ではないのか?」
『これを構築していた素材の大半は、闇の妖精の探していた「宝」よりも、つい最近になって追加された素材のようです』
「素材…か」
素材……。ルークの問いに淡々と答えていくルナから出た言葉に、父様が反応していた。
『遺体』と言われないのは何故なのか、思わず私は考えてしまいそうになるのだけど。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる