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はじまりはじまり。小さな冒険?
340、朝ご飯と、ちょっとしたお話。
しおりを挟む食堂に移動すると、テーブルにはすでに大皿にスライスされたパンが山盛り置かれていて、周囲にはハムとか色とりどりの野菜にフライに……どうやら自分の好きな食材を、思い思いにパンに挟んで食べてください!という感じらしい。
手巻き寿司っぽいね!
(マヨネーズにドレッシングにディップソースに…ああ、野菜を好きに盛ったらサラダにもできるってことなのかしら?食べ放題……えっと、ビュッフェスタイルっていうのかな?そういうの、好きだな)
カイルザークの瞳が輝いている。
……野菜好きだもんね。
家族が増えて、食事風景が急に賑やかになったのは良いけど、やっぱり食べるスピードでは、私が1番最後。
なんで置いて行かれるんだろう?と思ったのだけど、わかった。
私だけ、お代わりしてるからだった!
テーブルマナーとしては、カイルザークが一番器用に食べてる気がする。
父様が「どこで覚えてきたんだろう?」と首を傾げる程度には器用に。
(……子どもらしく振る舞うって言ってたはずなのにねぇ。素が出てますよっ!)
エルネストは頑張ってるけど、たまに手が出る。
ちょくちょくフォークがグー持ちになってたし。
つるっと皿から逃げたウィンナーを手でキャッチ!とかやってたし。
(母様に目撃されてしまって、恥ずかしそうに俯いていたけど、私はむしろあの反射神経に感心したよ……)
私?私は完璧よ?と言いたいのだけど、肉を切る時にたまにナイフが逃げたり、フォークが跳ねたりする。困った。
サラダに至っては、フォークでうまく刺したはずなのに、葉物が口に入る前にびよーんと広がったりで、ドレッシングが激しく飛び跳ねて、口周りも洋服も大惨事に。
理由はわかってるんだ。
フォークが上手く掴めていないんだよね。
力の加減をしようにも、握力もまだ足らないみたい。
******
寝起きだから、そんなに食べれないかな?と思ったのだけど、即席で作ったシーザーサラダがとても美味しくて。
今日は主役のパンそっちのけで、黙々とシーザーサラダを作っては食べて、を繰り返してしまった。
『こっちも食べてよね!』
通りすがりにフレアに強制的に盛られた、胡椒のきいたハムをいっぱい挟み込んだサンドイッチ以外は、本当にひたすらサラダだった。
子どもたちが一心不乱に食事をとっている間、大人たちは色々と会話をしていたようだけど……ソフィア王妃はどうにも食が進まないようだった。
「いいからとにかく食べなさいよ」
その隣で、かなり強気に食事を勧めている母様という、いつもの穏やかさからはちょっと考えつかないような珍しい一面を見られて、これはこれで面白いのだけど。
そこまでされないと食事も危ういとか、王妃様がちょっと心配。
ちなみに、その心配の種であるシュトレイユ王子は、にこにこ元気いっぱいにレオンハルト王子に給仕を手伝ってもらいながら、サンドイッチを作ってもらっては、口いっぱいに頬張っていた。
いつもはマナーの先生や給仕のメイドさんが一緒にいることが多くて、そもそも食事を手で掴んで食べること自体が、当たり前というのが珍しいみたいだった。
(まぁ、普通の食事を手掴みしたら怒られるもんね。しかも、自分の好きな具で、自分で作って食べる。これは特に楽しいんだろうなぁ)
上手に挟むことができないから、ぽろぽろとこぼしてしまって、ちょっとテーブルが激しいことになってしまっているけど、気にせずに一生懸命に食べてる。
それ見かねたレオンハルト王子が、好きそうな具を見繕っては、サンドして渡してあげる。と、いうことを繰り返していた。
(レオンハルト王子も、自分で作るということが楽しそうね。いい表情してる)
嫌な顔をせずにいくつも作っては、シュトレイユ王子に渡して一緒に食べていく。
「兄さまに作ってもらった!」と嬉しそうに頬張る姿を見ては、満足げにしてるレオンハルト王子。
ただし!……「次はあれだ、これだ」と作りまくってるけど、そろそろストップしないと、2人とも……昨日の私みたいなぽんぽんお腹になっちゃうよ?
******
「さて……」と、子供たちの食事の手が緩やかになってきたタイミングで、父様が子供たちにも聞こえるように話しを始めた。
内容としては、昨日あった事の説明をざっくりと。あとは今日の予定。
えーっと……昨日の出来事は、衝撃の一言に尽きました。
ごめんなさい。
(みんなに笑われてしまったけど、これは笑い話じゃ済まない気がするのですよ。本当にごめんなさい)
昨日の私はルークから整腸剤を貰って、お風呂に行きたいと再度アピールしてみるも、ことごとく却下されて、心が折れてベッドに入ったわけですが。
……うん、ここまでは覚えてる。
(あまりにも悔しかったから、後日1人で『避難所』にこっそり来て、お風呂に入ろう!って、心に誓ったんだからっ!)
その後が不味かった。
離宮を間借りしていた時に、寝ぼけて離宮の屋根を吹き飛ばしたことがあったのだそうだけど、あれと同じ事をやってしまったようだ。
ちなみに、全く記憶にない。
「いやあああぁぁぁぁぁぁあっ!」と、いきなりの悲鳴と共に、ひどく怯えた真っ青な顔でゆらりと立ち上がると、大人たちが談話中の辺りへ向けて、全力の一発を放った、と。
咄嗟に、ヴィンセント兄様、フィリー姉様、セグシュ兄様がその場の障壁を張り、一撃を受け止めた。
ルークと父様、母様はそれぞれに、ソフィア王妃と他の子供たちの無事の確認と……私の捕獲へと動いたらしい。
「いやぁ…あれは流石にびっくりしたよ。フィリーとセグシュのおかげで防げたけど、1人だったら厳しかったかも」
「幼児が出せる魔法のレベルじゃなかったよなぁ」
「呪いの件があったから、操られてるのかと思ったわ……ていうか、セグシュの障壁しょぼいから!もうちょっとマシなの張れるようにしなさいよねっ!」
「おかげで私の負担が大きくて、しんどかったんだからね?!」と、ぷりぷり怒りだすフィリー姉様。
「咄嗟だし、杖無かったし……」
「非常時に張るのが障壁なんだから、そんなのなくても自分を守れるくらいには、しとくものなのよっ!」
……どれだけ強烈な一撃だったのか。
言い合いがすぐに始まってしまうフィリー姉様とセグシュ兄さまは放って置くにしても、威力が気になる。
大人たちが咄嗟に張った障壁でギリギリ、怪我人が出ない程度の威力。
どんな感じだったのだろう。
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