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はじまりはじまり。小さな冒険?
344、戦力になっちゃう?。
しおりを挟む「ねぇ火力はいいけど、父様たちのメンバーに回復がいないわ」
フィリー姉様の声で、思考の海から戻ってくると、すでに役割分担が父様によって発表された後だった。
『監獄』探索組は、父様・ルーク・守護龍アナステシアス・私と精霊のルナと水の乙女。
ルークの契約精霊である風の乙女は、今回は不参加。
フレアのフォローに徹するそうだ。
……ちょっと疑問だったのは、メインで頑張っているはずのフレアは姿を現して、給仕をやったりうろちょろしてるのに対して、風の乙女は存在こそ分かるのだけど、ほら、ちょっと彼女に関しての軽愚痴とか冗談を言うだけで、抗議をするかのように突風吹いたりしてたでしょう?だから『避難所』内にいるのは分かるんだ。
でも、姿を現さない。
それほどまでに、負担が大きい状態になっているのだろうか?
そうであれば申し訳ないと思って、ルークに聞いてみたら……。
「よく分からないが『誰にも気づかれない新鮮さを満喫している』のだそうだ」
……そういうプレイだったようで。
思わず遠い目になってしまった。
まぁ、フィリー姉様の言う『回復役』ではないけど、彼女は立派な戦力だからね。
あれ…確かに戦力はいるけど、回復を使える人がいない。
父様(前衛)ルーク(前衛・補助)その他×4人(戦力外)これだっ!
……足手まといが、戦力の倍いるような気がする。
「セシーがいるだろう」
当然。と、言わんばかりに、さらりと指定されてびっくりして父様を見上げると、真面目な顔で指定されました。
あれ、私ってば戦力外じゃなかったんだ?
「ああっ!父さん…セシーのあれは本当にヤバいから……」
僕の時の、見てたでしょう?と、セグシュ兄様が必死な形相で、父様に訴えている。
ヤバイとか……ヤバく無いですよ?
セグシュ兄様の時は特に心を込めて、優しく治療した…はず。
「回復が必要な時というのは、動けないくらいの大怪我の時だけだから、回復量的にもセシーが適役だろう?そういう時こそ、すぐ復帰できないと困るんだから、ちょうど良いじゃないか!」
溌剌にからからと笑う父様。
対してセグシュ兄様は、少し泣きそうな表情になりつつ、心配の声をあげていた。
確かに、魔法を使った時、痛そうにはしていたけど、そこまで痛かったんだろうか?
「セシーのは…すごく痛いんです。回復どころか、むしろトドメを刺されたかと思うくらいに」
「だが、結果的には一番復帰が早いだろう?」
「本当に、痛いんですよ?」
大丈夫大丈夫。と、笑って見せる父様。
……今のはセグシュ兄様ではなく、私に向いて言ってましたよね?!
「……それが嫌なら、怪我をしなければ良い」
「そうなのですけど…ね」
ルークがボソリと、極論を言う。
確かにそうなんだけどさ、でもまぁそうね、ルークや父様の動けないくらいの大怪我をしているとこなんて見たくもないし、して欲しくもない。
「セグシュがひ弱なだけなんじゃないのかしら?治癒魔法が痛いだなんて、聞いたことがないもの」
「本当に!ヤバいくらいに、痛いんだって!」
セグシュ兄様は力説しているけど、フィリー姉様は、あの場にいなかったからね。
でもさ、私も治癒魔法が痛いだなんて、今まで聞いたことがなかったんだよね。
「セシリアが行くなら、僕も一緒に!」
「僕もっ!!」
レオンハルト王子とカイルザークだった。
2人の真剣な顔見ながら、父様は首を横に振る。
レオンハルト王子に至っては、真剣というより悲痛なほどに思い詰めた色をしていて、私がリーダーであれば、思わず『良いよ』と言いたくなってしまいそうな雰囲気を醸していた。
「ダメだ。レオン王子はレイ王子のそばで……起きたら、笑わせてあげてくれるかい?みんなが心配そうな顔でいるとね、一緒に心配に、弱気になっちゃうから、笑わせてあげて?」
「はい!」
カイルザークが『僕は良いよね?』と、言わんばかりに期待を込めた眼差しで父様を見上げている。
その様子に眉間を押さえつつ、小さくため息を吐く。
「カイもダメっ!理由はわかるよね?……キミの覚醒の条件がセシーだから。その力は使わせない。あと、少しでも光の精霊と仲良くなって、ヴィー…兄様たちの手伝いをするんだ。……返事は?」
「はい……」
しょんぼりと、耳としっぽだけでも感情が分かるほどに、下がる。
でも、微妙に緩くしっぽが嬉しそうに揺れていた。
覚醒の力って何だろうね?
父様が使っちゃダメというくらいだから、きっとかなり身体の負担になるのだろう。
ただ、気になる。
「ほら、エルはちゃんと待っててくれるみたいだよ?」
子供たちの中ではエルネストだけが、大人しく席についたままだった。
父様の指摘にすら、気づいていない様子で真剣な面持ちで軽く俯くようにじっとしていた。
「ああ…エルネストには魔法の基礎練習をするようにと言ってある。他の子は基礎はともかく魔法を使えてるようだから」
「……と、いう事だ。本当はセシーも連れて行きたくないんだけど……腕輪がセシーしか使えないからね」
ふふふ…父様、ちょっと締まらなかったね。
エルネストをよくよく見ると、目の前に置かれている水の入ったコップを凝視している。
魔力操作の練習かな?
魔導学園の初等部で、一番最初に習うやつだった。
最初はコップの水に波紋を、その次は振動を、そして水滴を浮かべる。
それができたら今度はコップと水を分ける、次は別々に両方を浮かべて見せる。
……これが意外に難しくて、大人でもたまに失敗する。
(まぁ、初等部の狙いとしては、この作業が完璧にできることではなくて、魔力を狙った場所へと放出、作用させることができるようになることが目的なんだけどね)
つまり、これが出来るようになれば、あとは属性を乗せるだけで、初期の魔法が『それなりに』使えるようになってしまう。
ちょっと懐かしくなって微笑ましく見つめてしまった。
「父さん、私は同行しなくて良いのでしょうか?」
ヴィンセント兄様も心配そうな面持ちで聞いてきていた。
今回は守護龍アナステシアスも同行する。
(龍が同行するなら安泰じゃん!と、言いたいところなのだけど、それだけに危険なところだということで。そもそも龍が『戦力として』同行とか……滅多にない事だからね?)
魔物の討伐隊に同行する事はままあるのだけど、そういう時は基本的に後方支援だったり、士気を上げるためだけに来ていたりする。
国を守護してくれている龍が同行してくれるのだもの。
騎士団としてはとても誇らしいことだからね。
「うーん、来て欲しいのは山々なんだけど…レイ王子を呪った本人に会えるかどうかわからないし、会って、呪いを解いた時にどうなるかも分からない。万が一を考えて、レイ王子のそばにいて欲しい。なにより、呪いの影響を抑えてるのがセシーの精霊だから。今回は相方もこちらで作業をすることになる。フレアへの魔力供給が不足するような事態にはならないようにはしたいが……」
ヴィンセント兄様に返す言葉というよりは、独り言のようにぶつぶつと考えていることを説明し始めた。
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