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はじまりはじまり。小さな冒険?
345、探索の始まり始まり。
しおりを挟む「どちらにしても、だ。危険になれば『避難所』に帰ってくれば良いだけの事だ。それはセシーもできるから」
私とルークはできるけど、父様と守護龍アナステシアスが出来ない。
父様はともかくだけど、まさかの国の防衛の要である守護龍が『避難所』に登録されていなかったのだった。
しかも、新たに登録しようにも条件がついていて『姫の血筋のみ』で、それ以外は出来ない。
登録してみても、弾かれる仕組みになっているのだそうだ。
「だってそれ、私がこの国の守護を担う前に作られたものだからね?生まれてないし」
「……そうだ。守護龍がいる前提では作られていないんだ」
そもそも龍は簡単に死なないから良いんだけど。と、笑っているけど、緊急時に『避難所』に出入りできなかったら、王族との意思疎通が大変じゃないのかな?
でも、そういわれてみれば、シシリーの時のメアリローサ国って守護龍いなかった気がする。
1000年ほど前に作られた『避難所』と300歳くらいの守護龍。
うん、確かに生まれてない。
******
「実際『避難所』が使えると出口が近い分、いつものダンジョン攻略よりは、ずっと移動が楽なんだよ。何かあればすぐに戻れるから、大丈夫だ」
周囲を安心させるように、笑みを浮かべて見せる。
母様もソフィア王妃もみんな、先ほどまでは祈り出しそうなほどに心配の表情だったのに、今は安堵の表情にも近い、はっきりとした応援の色が見て取れる。
こういうところは流石、師団長!と言うべき所なんだろうなぁ。
本当に周囲の雰囲気や、仲間の士気を上げるのが上手い。
『あとは、セシリアが魔力回復剤を飲めれば良いんだけどなぁ…魔力切れの心配がなくなるし』
「子供はダメっ!」
咄嗟の父様の声に、思わず笑ってしまった。
ルナ……父様の格好良いシーンが台無しですよ。
それとだ。魔力回復剤を子供にあげちゃダメでしょ……。
ルナの突拍子もない提案に、思わず遠い目になる。
(魔力回復剤はかなり貴重な薬草を使うので、保存が効くようにアルコール濃度が高く作られているんだ)
……つまり、お酒だったりする。
しかも、長期保存を目的としているので、かなり濃い。
子供の味覚では、ビール(4%)程度でも「ぐああああ」ってなるのに、魔力回復剤はワイン(12%)よりも濃い、ブランデー(40~45%)レベルの濃さ。
そんなのを飲まされた日には、舌が痛くて、泣いちゃうよ?
『大人にしても、ダメ……?』
ルナが上目遣いになって、父様におねだりをするかのような姿勢になっている。
「余計にダメっ!!」
『ですよねぇ。とりあえず、魔力ヤバそうになったら、どういう状況であれ、戻りましょ。何かあった時に対応できないのが一番恐ろしいし』
はぁ。と、父様のため息が聞こえた。
ルナの魔法は、見た目を変えてるだけだから、余計にダメっ!
ちなみに、魔力回復薬の過剰摂取はとても身体に悪いのです。
(……って、そんな強いお酒をガンガン飲んでれば、誰だって倒れるよね)
それでも、薬効は確かで、魔力切れになっていた人間が、フルパワー充電状態にまで一気に復活する。
なので、大規模な魔法を使う時には愛飲する人が絶えないのでした。
そして、薬なだけあって、副作用もしっかり存在している。
……こんなのを、幼児に飲ませようとか、アウトですっ!
お酒は二十歳に……じゃない。大人になってから!
それでもこちらの世界だと『大人』が15歳からだもんなぁ。
ちょっと早い気がする。
何とも微妙な顔をしてルナを見つめてしまっていたのか、ルナがこちらに向いてごめんと顔の前に手を小さくあげていた。
まぁ精霊から見ればシシリーだろうがセシリアだろうが、私は私だから。
年齢どうこうより、ちょっと縮んでるくらいにしか見えてなかったんだろうなと思ってる。
……精霊の寿命は長いから、人の死を理解できないことが多いんだ。
まして私の場合は、転生という前世の記憶を持った状態で存在してしまっているので、余計なのだろうね。
「では、セシリア。頼む」
背後からのルークの声とともに、視界が高くなった。
あれっ?と、状況を理解するよりも先に「まただわ」と、フィリー姉様の呆れた表情が目に入った。
ああ……抱っこされたんですね。
「また何もない中空に転移させられても、困るからな」
「そうだな……できれば核に近い部屋がいいな」
ルークもだけど父様まで…好き勝手言ってらっしゃる。
守護龍アナステシアスは、そんな様子をにこにこと見つめつつ、そばに立つ。
あとは水の乙女だけど……目視はできないのだけど、きっと父様のそばに潜んでいるのだろう。
いる。と、いうことにして腕輪に『解錠』を命じると、私を中心に赤い魔法陣が幾重にも折り重なるようにして展開されていった。
******
「ここは……」
「前回来た部屋だな。カイとここに来たときも、この部屋に飛ばされたのではないか?大方、この部屋が玄関口という扱いなのだろう」
確かに大きなサロンだものね。
お客様を出迎えるには最適だ。
(って……そこに魔物を配置しておくのは反則だと思うけどね!)
今は魔物らしきものの気配はない。
シンと静まりきったサロンにゆっくりと降り立つと、この部屋の唯一の出口となっている、部屋の構造とは違和感すら感じるほどに、小さくみすぼらしい扉へと向かう。
「特に異変は……ないな」
少しだけ先行するように進む父様がドアをそっと開けて、外の様子を伺っている。
「この部屋は最深部のようだから、とにかく核の部屋を探そう」
ルークの言葉に小さく頷きながら、父様は軽く安全確認をしたあと、ドアを大きく開ける。
すると、ドアの開閉がトリガーとなっているのか、一斉に廊下に灯りが灯る。
(……あれ?確か、初回に核のある部屋へたどり着いた時、こんなに丁寧に灯りはつかなかったんだよなぁ)
そもそも、石造りの積まれた石がそのまま露出して見えているような無骨な壁に、床もかなり凸凹とした、所々に苔は生えるわ、不衛生な水たまりが散見されているような廊下だったはずだ。
なのに今歩いている廊下は、白い漆喰を基調にした、とても上品な廊下。
床だって木製の床材の上に丁寧に茶の絨毯が敷かれていて、一見して貴族の屋敷の廊下と見間違うほど豪華な作りだった。
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