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はじまりはじまり。小さな冒険?
346、探索中ですよ!
しおりを挟む「……どうした?」
「違和感が…」
どうしても腑に落ちなくて、周囲をキョロキョロと見渡しながら考え込んでいると、ルークが心配そうに声がかかった。
心配そうな琥珀色の相貌が間近にあって、私を覗き込んでいる。
いやぁ…眼福ですね!じゃなくて、あ、でも眼福です。
周囲を見やすいようにとお姫様抱っこされてるんですよ。
まぁ片手抱っこだから、微妙に違うのかもしれないけど。
端正な顔が手が届くどころか、艶さらの黒髪がかかったり、むしろ吐息がかかる距離というのは、幼馴染みだったシシリーでも見た事がない、なかなかに新鮮な景色だったりする。
「おや『違和感』だなんて、セシーは本当に難しい言葉を使うね」
「ふふっ。セシーは聡い子だと言ったろう?教えた覚えもないのに、語彙が多いんだ」
「それは凄いね。耳が良い上に、意味をちゃんと理解しているということだね」
何故か、父様と守護龍アナステシアスのうちの子可愛い談議が始まってしまった。
小さい頃からこうだった!とか、今も十分小さいですから、やめてください!
「えっと……」
「ちゃんと…聞いてやれ。困ってる」
ルークが助け舟を出してくれたけど、父様はどこ吹く風……。
以前の時と景色が違う!と、いう事を必死に伝えようとするのだけど、父様はひたすらニヤニヤしていた。
「ほら、賢いだろう?」とか、今、親バカを披露してなくて良いから!
守護龍アナステシアスも父様の親バカ談義に付き合いながらにこにことこちらを見つめている。
お互いに自分の子供の話で盛り上がりながら……。
本当に、ちゃんと聞いてあげて?!
絶対に聞いてないよね?という感じの態度なんですけど。
『戻りましたっ!』
必死に説明するも虚しく、どうにも理解してもらえていない感じで、ちょっと苛つき始めたところで、ルナが戻ってきた。
ルナはさっきのサロンから廊下を先行して進んで『10部屋の様子』を探ったら帰ってくる。
そう、父様に指示されていたんだ。
ちょっと疲れているように見える。
『僕が見てきた限りでは、生存者はいませんでした。……魔物も。あとこの先の個室は、遺体の保管場所か何かみたいです。今は食い散らかされて、部品しか落ちてませんでしたが』
「部品…て」
父様が呆れた声を出しているが、ルナはさらりと、遺体を部品と言ってのける。
こういうところは性格なのかなと思ってたけど、精霊故に『悼む』とか、そういう感情がまだ理解できていない感じなのかな?と思うようになった。
『あ、特に指示がなかったので、妖精たちが回収してしまったのですが、良かったですか?必要であれば、復元させてからお返しします……あのままじゃ可哀想だ』
「と、いう事は被害者か?」
『はい。ユージアよりも若い子供ばかりで『帰りたい』と泣いていたので。あまりにも可哀想だったから』
「……クソがっ!」
ルナの説明を聞いていた父様の暴言にびくり!としてしまった。
普段、本気怒りをしない人が怒と怖いってのは本当だね。
怒りたいのはわかる。
私も怒ってるし、あんまり表情に出ないけど、ルークも怒ってる……。
(ルーク、頼むから暴走しないでね?!)
父様とルークの怒りは…私にもすぐに理解できてしまっていた。
この『被害者』というのはまだ子供だということからも『籠』の被害者のことなのだろう。
死んでも弔いすらされずに、こんな寂しいところに捨てられてたということだ。
「ルナ、人数だけ、後で教えてくれ。子供たちは…そのまま『宝』にするのか?」
『いえ…子供の場合は、無垢ですから。『宝』として存在する以前に天へ還ります。還れるように癒すのが彼らの仕事なので』
「では、頼む」
悔しそうな顔のまま固まってしまっている父様に代わり、ルークが会話を引き継いでいた。
……父様の乱暴な言葉、初めて聞いたかもしれない。
我を忘れるほどに、悔しかったのかな。そんな表情だった。
「宰相『クソ』なのは分かるけど、子供の前だよ?」
「ああ……すまん。ルナもありがとう。次の10室も頼む」
『はい。では、行ってきます』
守護龍に宥められて、はっと我に返りつつ、父様はルナを見送っていた。
その姿が見えなくなると一つ息を吐いてから、くるりと後ろに振り向いた。
「……セシーも、ごめんな。こんな怖いところの手伝いをセシーもだけど、セシーの精霊にまで手伝わせちゃって」
「大丈夫、です!」
……ま、自分の幼い娘にこんな手伝いをさせるのは、正直なところ言語道断だけど。
『私』なら、良いよ。
むしろ大歓迎。
ユージアが見送った子たちの仇を取るんだ。
そのための力が私にあるのなら、頑張るからね。
「ん?なーんか、キリッとやる気の顔になってるけど、そういう顔は、自分の足で歩いてからにしような?」
ごめんと言いつつも、にやりと父様の顔にいたずらっぽい色が浮かんできていた。
ぽんぽんと頭を撫でられる。
「あ!歩きましゅっ!」
「……ダメだ」
「えぇぇ」
しかも、ルークには即答で断られてしまうし。
これじゃあ、どうしようもないじゃん……。
思わずジト目になって父様を見つめ返すと、ちょっと驚いたような顔をして、ルークと私をと交互に見ていた。
「あれっ…父親よりも過保護がいた…あははっ」
「何があるか、分からないからな」
「歩けますよ…?」
「……違和感があるのだろう?そういう勘は、信用した方が良い」
そう言いながら抱える腕に心なしか力が籠ると、頭に頬を寄せられてしまった。
『失礼します。最奥まで到達しましたわ。最奥が以前の…魔法陣のあった部屋でした。その手前の数部屋から物音がしていましたが、中の様子は覗き見る事が出来ないようになっていました』
ふわりと目の前に浮かび上がるように姿を現したのは、水の乙女だった。
彼女にはルナとは逆に、まず、1番奥の部屋を目指してもらった。
1番奥から10部屋ずつ様子を探ってもらう。
その指示に従って水の乙女は1番奥まで見に行ってくれていたのだった。
ちなみに、奥にたどり着くまでの廊下には、魔物の気配はなかったらしい。
ユージアとゼンナーシュタットと必死に脱出を試みたときは、あんなにいっぱいいたのにね。
そしていくら広い廊下とはいえ、あの竜のような魔物の巨体が隠れられるような隙間はない。
そうなるとやはり怪しいのは、水の乙女が侵入できなかった部屋だろうか?
『それとですが……ここは少し瘴気が濃くなっています。子供には…』
「ああ、そうだね。うっかりしてた」
水の乙女は、ちらりと私を見る。
すると守護龍がサッと手をあげると、周囲の空気が瞬間にして、冷たくなったように感じた。
『ご対応、ありがとうございます。では、続きを見て参ります』
水の乙女はカーテシーをしながら、水面に映し出された姿のように揺らめくと、次の瞬間には姿を消していた。
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