私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

356、最奥の部屋にて。

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「……なにも、無いわね?」

「無いな?」



 部屋の様子…と言いたいのだけど、最初のサロンと同じ位の広さで、内装もほとんど一緒。
 水の乙女オンディーヌの情報の通り、室内は無人で、部屋の中央より少し奥に、豪華な布張りの台座に、占い何かに使えそうな水晶玉のようなものが、大事そうに飾られていた。

 多分……あれが『核』だ。

 形状としてはふわふわとした球体。
 ダンジョンの最奥にある『ダンジョンの核』と同じ存在で、心臓部。
 司令塔でもあり動力源でもある。


「ユージアと逃げてた時は、見なかった気がする」

『ありましたよ?』

「えぇぇぇ……」


 父様の肩口から、ひょこりと女の子が顔を覗かせて、悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
 水の乙女オンディーヌだ。
 あったんだ……全く気づかなかった。


「それだけ、必死だったってことだろう。頑張ったな」


 思わず唖然としていると、笑いながら父様に頭をポンポンとされた。
 褒められちゃった。えへへ…。


「えっと……」


 さて、気を取り直して……私の研究室が関わった施設型の魔道具というのがほとんど無いために、研究室単位でのメンテナンス等は、依頼を受けたことがないのだけど……。
 一般常識程度でのマニュアルでなら、操作方法を読んだことがある。

 メンテ中の誤作動の事故を避けるために、ダミーの『核』と差し替えて、施設とのリンクを確実に切断してから、作業に入る。
 この方法が確立されてから、施設型の魔道具がいくつも作られるようになったんだって。


「できるか?」


 できるか?と聞かれると……正直できない。
 マニュアルをさらっと読んだことがある、だけだからね?

 ……まぁ多分、この『腕輪』がなんとかしてくれる!はずなので、小さく頷いて見せる。


 そして、とりあえず『腕輪』と『核』に『メンテナンス』と囁いてみる。
 通常であれば、これで起動するはずなんだけど……さてどうだろうか?


『メンテナンスモードを終了してください』

「えっ……?」


 唐突に、女性のような声が響き渡った。
 これ……魔導学院へ強制転移させられた時にも聞いた声だ。
 その声とともに、腕の付近に懐かしい文字列が浮かび上がった。

 ……うん、この文字なら読める。


「……っは?どういう事かしら?」

「どういう意味だ?」


 想定外の言葉が響き渡った直後に、父様とフィリー姉様が近づいてくる。


「待て…これは……」


 ルークも私の腕輪から浮かび上がった文字列を見て唖然としていた。
 この文字列には、直近のメンテナンスの内容が書かれていた。


「これは……『核』を消失している」

「その黒いのが『核』とかいうやつじゃないの?」

「これは…ダミーだ。メンテナンス時に使うためだけのものだが……メンテナンスモードのまま軽く1000年ほど、放置されていたようだ」


 かなり端折って説明しているようだけど、まぁ正解ってことにしておこうかな。


(むしろこれ、メンテナンスをしたまま放置されていたのではなくて、開発途中のまま放置されてるだけだし)


 だってこれ、完成・始動の記載がないんだもの。
 前世にほんの家電にも書かれてるアレです。製造年月日ってやつ。

 上の方に魔導学院の名前があって、いくつかの研究室名が並ぶ。
 ……当時の施設型の魔道具アーティファクト制作の最先端を担っていた、壮々たる顔ぶれだった。
 見事に有名どころだわぁ……。
 って、末席に私の研究室名を見つけた。なんだろう?


(生活特化のようなものしか作っていなかったから、技術協力できるような、そんなものを作った記憶はないんだけどなぁ)


 まぁ、製造責任者、技術協力者の名前から始まって、ある程度の製造日程まで書かれていた。
 そして1番気になるのは、放置が始まってしまったその日の事。

 それまでは、学院内で製造されていたようなのだけど、星詠みのクロウディア様の嫁入り行列と共に、メアリローサ国に持ち込まれていた。


(どうやら、魔物の氾濫スタンピードの余波を受けて『監獄』の製造にストップがかかったらしいんだ)


 だけど、どうしても諦めきれなかったのか、完成間近だった『監獄』を製造責任者である学院へと本来であれば返さないといけなかったのに、どさくさに紛れて、そのまましれっと持ち出してきてしまった者がいた。

 履歴を見る限りでは、それからしばらくは開発が続いて、ある日を境にパタリと更新が止まっている。


(きっとなんらかの事情により……って、まぁ多分、亡くなったのだろうけど。施設自体への立ち入り記録も、同じ日付で途絶えたきりになっていたし)


 問題はその後だった。

 直近で100年くらい前から、また更新が始まっている。
 更新と言うよりは利用記録だね、これは。

 出鱈目デタラメにそこら中を弄って、偶然設定されてしまったのがあの『監獄』だったようだ。
 まぁ正確には『監獄』じゃなくて、移動型の魔物保管庫だったのだけど。

 そこから、少しすると、使用者の名前が更新されていた。


(大体、20年おきくらいで更新されているので、きっと先祖代々受け継いでゆく~的な感じだったのかな)


 一番最後の履歴は……ガレウス司教になっていた。

 ちなみに、今は空白となっている。
 どうして空白になったのかが理解できない。


「セシリア……できるか?」

「多分……?」


 真剣に考え込んでいたところで、耳元で囁かれて、思わず返事をしてしまったけど……。
 さてさて、うまく動いてくれるかな?


(どこまで完成しているのかが分からないけど、多分最終的なチェック前くらいまでは進んでいるような履歴だったから……きっとリカバリはできるはず)


 そう思って『腕輪』と『核のダミー』に命令した。

『核の再構築』と……。

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