356 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
356、最奥の部屋にて。
しおりを挟む「……なにも、無いわね?」
「無いな?」
部屋の様子…と言いたいのだけど、最初のサロンと同じ位の広さで、内装もほとんど一緒。
水の乙女の情報の通り、室内は無人で、部屋の中央より少し奥に、豪華な布張りの台座に、占い何かに使えそうな水晶玉のようなものが、大事そうに飾られていた。
多分……あれが『核』だ。
形状としてはふわふわとした球体。
ダンジョンの最奥にある『ダンジョンの核』と同じ存在で、心臓部。
司令塔でもあり動力源でもある。
「ユージアと逃げてた時は、見なかった気がする」
『ありましたよ?』
「えぇぇぇ……」
父様の肩口から、ひょこりと女の子が顔を覗かせて、悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
水の乙女だ。
あったんだ……全く気づかなかった。
「それだけ、必死だったってことだろう。頑張ったな」
思わず唖然としていると、笑いながら父様に頭をポンポンとされた。
褒められちゃった。えへへ…。
「えっと……」
さて、気を取り直して……私の研究室が関わった施設型の魔道具というのがほとんど無いために、研究室単位でのメンテナンス等は、依頼を受けたことがないのだけど……。
一般常識程度でのマニュアルでなら、操作方法を読んだことがある。
メンテ中の誤作動の事故を避けるために、ダミーの『核』と差し替えて、施設とのリンクを確実に切断してから、作業に入る。
この方法が確立されてから、施設型の魔道具がいくつも作られるようになったんだって。
「できるか?」
できるか?と聞かれると……正直できない。
マニュアルをさらっと読んだことがある、だけだからね?
……まぁ多分、この『腕輪』がなんとかしてくれる!はずなので、小さく頷いて見せる。
そして、とりあえず『腕輪』と『核』に『メンテナンス』と囁いてみる。
通常であれば、これで起動するはずなんだけど……さてどうだろうか?
『メンテナンスモードを終了してください』
「えっ……?」
唐突に、女性のような声が響き渡った。
これ……魔導学院へ強制転移させられた時にも聞いた声だ。
その声とともに、腕の付近に懐かしい文字列が浮かび上がった。
……うん、この文字なら読める。
「……っは?どういう事かしら?」
「どういう意味だ?」
想定外の言葉が響き渡った直後に、父様とフィリー姉様が近づいてくる。
「待て…これは……」
ルークも私の腕輪から浮かび上がった文字列を見て唖然としていた。
この文字列には、直近のメンテナンスの内容が書かれていた。
「これは……『核』を消失している」
「その黒いのが『核』とかいうやつじゃないの?」
「これは…ダミーだ。メンテナンス時に使うためだけのものだが……メンテナンスモードのまま軽く1000年ほど、放置されていたようだ」
かなり端折って説明しているようだけど、まぁ正解ってことにしておこうかな。
(むしろこれ、メンテナンスをしたまま放置されていたのではなくて、開発途中のまま放置されてるだけだし)
だってこれ、完成・始動の記載がないんだもの。
前世の家電にも書かれてるアレです。製造年月日ってやつ。
上の方に魔導学院の名前があって、いくつかの研究室名が並ぶ。
……当時の施設型の魔道具制作の最先端を担っていた、壮々たる顔ぶれだった。
見事に有名どころだわぁ……。
って、末席に私の研究室名を見つけた。なんだろう?
(生活特化のようなものしか作っていなかったから、技術協力できるような、そんなものを作った記憶はないんだけどなぁ)
まぁ、製造責任者、技術協力者の名前から始まって、ある程度の製造日程まで書かれていた。
そして1番気になるのは、放置が始まってしまったその日の事。
それまでは、学院内で製造されていたようなのだけど、星詠みのクロウディア様の嫁入り行列と共に、メアリローサ国に持ち込まれていた。
(どうやら、魔物の氾濫の余波を受けて『監獄』の製造にストップがかかったらしいんだ)
だけど、どうしても諦めきれなかったのか、完成間近だった『監獄』を製造責任者である学院へと本来であれば返さないといけなかったのに、どさくさに紛れて、そのまましれっと持ち出してきてしまった者がいた。
履歴を見る限りでは、それからしばらくは開発が続いて、ある日を境にパタリと更新が止まっている。
(きっとなんらかの事情により……って、まぁ多分、亡くなったのだろうけど。施設自体への立ち入り記録も、同じ日付で途絶えたきりになっていたし)
問題はその後だった。
直近で100年くらい前から、また更新が始まっている。
更新と言うよりは利用記録だね、これは。
出鱈目にそこら中を弄って、偶然設定されてしまったのがあの『監獄』だったようだ。
まぁ正確には『監獄』じゃなくて、移動型の魔物保管庫だったのだけど。
そこから、少しすると、使用者の名前が更新されていた。
(大体、20年おきくらいで更新されているので、きっと先祖代々受け継いでゆく~的な感じだったのかな)
一番最後の履歴は……ガレウス司教になっていた。
ちなみに、今は空白となっている。
どうして空白になったのかが理解できない。
「セシリア……できるか?」
「多分……?」
真剣に考え込んでいたところで、耳元で囁かれて、思わず返事をしてしまったけど……。
さてさて、うまく動いてくれるかな?
(どこまで完成しているのかが分からないけど、多分最終的なチェック前くらいまでは進んでいるような履歴だったから……きっとリカバリはできるはず)
そう思って『腕輪』と『核のダミー』に命令した。
『核の再構築』と……。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる