私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

357、side ユージア。勉強頑張るよ。

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「たっだいま~」


 寮の自室のドアを、わざと大きな音を立てて開けて挨拶をする。
 同室の者が多い場合は、これが礼儀なのだ。と、養成所ここにきてから教わった。

 公爵家では『ドアは静かに!』と、教えられていたので、毎度ドアの前でどうしたら良いのかと、躊躇してしまうのだけど。


「お…おかえり?」

「僕の顔に…なんかついてる?」


 びくりと驚かれた上に、じーっと見つめられてしまったので、両手でペタペタと顔を触って、汚れてないか確認してしまった。

 ……たまにあるんだよ。
 樹の上にいる事があると、花や葉っぱならともかく、雲の巣とか毛虫とか、頭についてても気づかないんだよなぁ。


「べっ、別にっ!」


 部屋の両サイドに作りつけのベッドとクローゼットがあって、中央にテーブルセットが置かれていて、3人が座っていた。

 僕を見ていた子は、頬を赤らめながら、なぜか怒っていた。
 どうにも意味が分からなくて、首を傾げると、後の2人が軽く笑いながら理由を話してくれた。


「こいつ、容姿を気にしてるんだよ」

「容姿?」

「お前ほど綺麗なら、自分も公爵家で働けただろうか?ってさ~」


 綺麗……ね。
 うーん、今後はあざとさを意識して立ち回った方が、良いのだろうか?
 今の姿は『エルフ特有』の姿ではなくて『人族として』の姿だから、目立つほどの綺麗な容姿、というやつではないはずなんだ。

 無いはずなのに。
 なのに、同じ教室の人たちは、ほぼ全員が1回は必ず見惚れているかのように、こちらを見て固まっていた。
 自分の美醜なんて、正直、よく分からないけれど。
 一応、それなりのレベルではあるらしい?


「なるほどねぇ~。容姿、かぁ……」


 容姿、容姿、容姿……ね。
 教会を出てからも、容姿について言われるとは思ってなかったよ。

 それにしても、そっか。
 雇うかどうかって、本来は紹介屋を介しての、顔合わせから始まるんだっけ。
 それなら第一印象というか、見栄えは大事だよね。

 僕の事も、そこで雇い主セシリアに一目惚れでもされたと思ってるのかな?


(……そういう出会いも、きっと楽しいんだろうなぁ)


 うっかりニヤケそうになるのを抑えつつ、3人がいるテーブルセットに、ノートを開き置きながらソファーに腰掛けた。
 かなり良い作りのソファーで、ゆっくりと身体が沈み込む。

 連日の魔力切れが、まだ回復しきっていないのか、包み込まれるようなその心地よさに、課題なんか投げ出して、そのまま眠ってしまいたい衝動に駆られる。

 うん、我慢。頑張る。
 ……終わったら、思いっきり寝るんだ。


「……なんだそれ?」

「課題。…今日中に終わらせておきたいんだ」


 本当なら歓談の邪魔をしちゃいけないと思うんだけど、この部屋の勉強ができるスペースはここしかない。
 なるべく邪魔をしないようにと端のほうに座ったんだけど『課題』と聞いて気になったのか、身を乗り出すように覗き込んでくる。


「そんなの出てたっけ?」

「ああ、これは親父…親からの課題」


 ちなみにここは4人部屋でルームメイトは僕の他に3人いた。
 みんな今の姿の歳格好と近い子たちで、ちょっと安心する。
 実年齢で言えば、僕が1番年上になっちゃうんだけどね。


「……親からの課題の方が、養成所ここの課題より難しくないか?」

「どっちも難しいよ」


 いつの間に席を立ったのか、1人が紅茶を入れて戻ってきた。
 どうやら僕の分らしい。ありがとう。

 セシリアたちがもらっていた課題とは逆の書き方練習帳で、僕のものは古代語を練習するタイプなのだけど……そもそも元の言葉も読み書きが怪しい部分があるので、結局はどっちも勉強する羽目になってしまった。


「うわぁ全然…読めないぞ……?」

「うん、僕も読めないから。早く覚えてしまいたい」

「それ、どこの国の言葉だい?」


 公用語……という意味かな?
 メアリローサ国は他国との玄関口が、とても狭くて場所も限定されているから、よほど大きな商家とかではない限りは、他国の言葉を習う必要はほとんどない。
 そもそもしゃべる人たちが来ないから。

 別にこの国が閉鎖的だ!と、いうわけではなくて、この国と他の国とを行き来するための陸路が、まず無い。
 大昔はあったのだそうだけど、今はその道もとても危険な道となっていて、冒険者すら避けて通るような、危険区域となってしまっている。


「何処も何も、古代語」

「公爵家では古代語ができないとダメなのか……」

「……んなわけないだろっ!王城の現役魔術師だってほとんど読めねえよっ!」


 うん、みんな、なかなか良い反応だ。
 実際のところ、古代語がちょっとだけ読めるってだけでも、魔術師の中では重宝されているみたいだから、勉強しておいて損はない。
 というか確実に、自分の利点になる。


(僕の場合は特に、公爵家に戻るとセシリアとカイルザークが……あの2人は訳あって、古代語がスラスラと使える代わりに、現代の言葉がものすごく不自由だ。そして、僕のクソ親父までもが古代語が得意だ)


 1人だけ仲間はずれみたいで、イヤなんだ。
 セシリアに至っては、他人に読まれたくないメモは全て、古代語で書いてあるみたいだし、読めないってだけで、1人だけ蚊帳の外にいるようで、本当に寂しい。


「魔法陣にも使われる文字だし、知っておいて損はないでしょう?……ほら、貴族って魔力持ちがほとんどだから、魔法を使うために少しは古代語を習うらしいし」


 課題のノートを教本代わりにして、ひたすらノートに書き写していく。
 今日の授業が午前中終わりだったから、食堂でご飯をとってからまっすぐ帰ってきたんだ。
 今から頑張れば、課題の半分ぐらいまで進めるんじゃないかな?


「そうか、手紙の代筆をさせるくらいだから、古代語も知っておけば…重宝されるかな?」

「少なくとも、顔が良いだけよりは重宝されるんじゃない?」


 ……なんでそこまで顔の良さにこだわるのかがわからないけれど、僕のこの顔が良い顔であるなら、公爵家で数日お世話になった時に、顔が理由での、何かお得な事があったかといえば、一切無かったから!と、強く伝えたい。

 強く……といえば、セリカに強く叩かれたり、蹴られたりがあった気がする……。
 いや、これだって利点でもなんでも無いじゃん!

 正直なところ、そんな事より、何でもいいから何か1つ、特化した特技と言えるようなものがある使用人の方が、確実に重宝されるのでは?と思う。
 古代語はまさにそうで、だってまともに読める人材がほとんどいないんだもの。


「いや…重宝どころか、専門の教師の道が開けるんじゃないか?」

「……俺も!一緒にやって良いかっ?!」

「どうぞ。1人でやるよりは覚えやすそうだし」


 俺も、俺も、と気づけば、結局みんなで勉強する羽目になっていた。
 そして……勉強しながら雑談も続いていた。
 賑やかだ。
 こういう雰囲気は好きだけど、慣れなくて少し困惑してしまう。

 学校も、こういう感じなのだろうか?
 きっと楽しいんだろうなぁ。
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