私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

358、side ユージア。良いのか悪いのか。

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「……それにしても、やっぱり良いよなぁ。公爵家!しかもガレット家!」


 顔!容姿!って騒いだ次は、公爵家か……。
 ちなみにこのやたらと拘りのある子が一番年下で、15歳になったばかりなのだそうだ。
 魔力測定では『魔力無し』と測定されると、地元の学校に通うことになる。
 13歳で最高学年で、2年ほど作業の手伝いをしてお金を貯めて、ここに入所したのだそうだ。
 ……街の中では比較的裕福な家の子なのだろう。

 養成所ここの学費は、そんなに安くは無い。
 王都の平民の月収が銀貨3枚くらい。
 街の暮らしは、自給自足的な部分が全く無いから、生活費が異様に高い中で、ここの1年分の学費が銀貨20枚と……子供のためにポーンと出すには、高額なんだよ。

 現にあとの2人は、同じように自力で学費を稼いでの18歳スタート。
 ヴィンセント兄様の一つか二つ下だったかな?確か。

 この2人に関しては、社会経験も豊富なのだろう、話を聞いていても街の噂や情勢やら、情報量の多さに舌をまく。
 ここに来た当日から、わからない事をさりげなくフォローしてくれている。
 使用人はそもそも、主人やといぬしのフォローをさりげなくすることが仕事だから、かなり優秀だということに。

 言い方を変えると、僕はこのルームメイトを追い抜かす勢いで頑張らないとセシリアと交わした『さっさと帰る』約束は守れないことになる。
 それでなくても『公爵家の使用人として~』って無駄に厳しくされてるし!


「そもそも、そんなに良いところなの?」

「悪い噂を一切聞かないし、何より、騎士団長だろ?魔術の方の」

「そう…らしいね」

「しかも奥様は大聖女様!どちらも気さくで優しい方で有名だ。使用人の募集が来ると応募者が殺到するんだぞ?」

「そう、なんだ?」


 確かに、人使いは荒い!という雰囲気ではなかったし、夜も…襲撃しちゃった側の意見で申し訳ないが、使用人たちもしっかり休まされていた。
 ……おかげで行動しやすかったんだけどね。

 そもそも、ガレット公爵家の使用人たちは、穏やかな雰囲気の人ばかりで、そんな殺到する応募の中を勝ち抜いてきたような猛者には見えないんだけど……。
 実はセリカのように、武芸に秀でているとか、それぞれに何か隠れた凄い技術持ちなのだろうか?


「使用人を大切にする屋敷は、離職率もほぼ無いからな、新規の募集もほぼ無いんだ。だから、ユージア君のように、そんな狭き門の公爵家に就職が決まってから、養成所ここに通い始めるってのも、すごく稀なんだぞ」


 扱いとしては、すでにガレット公爵家の使用人だから、養成所ここの費用もガレット公爵家持ちになっている。
 授業料天引きというわけでもなく、しっかりとこの間の給料も支払われるらしい。と言う話も聞いていた。


「……逆にいえば、毎度大量に募集かけてくる屋敷は…」

「お察しだよな」

「まぁな」

「いなくなるから、不足分を補うために募集をかけるんだ…確実に良い場所ではない」


 例えば……と、例え話のはずなのに、実名が出てくる恐ろしさ。
 すらすらと上位貴族の名前、御屋敷の位置、領地、さらには裕福かそうじゃ無いかとか、見てきたかのように情報が出てくること!
 しかもそのどれもが、当たっている……。

 ああ、ちなみに、なぜ当たっているかわかるのか?それは教会にいたころ、そういう情報をまとめたものをずっと見てたからね。


(でもぶっちゃけ、教会の資料よりも、彼らの情報の方が詳しいと思う)


 一体、どうやって調べあげてきたんだか。

 ちょっと笑ってしまったのは、スルーズヴァン辺境伯についての話題。
 領地の使用人の募集はあっても、絶対に王都にあるお屋敷からは募集がこないそうだ。

 王都のお屋敷を使っていない…わけでもなく。
 むしろ当主が王城勤めなので、使っていないわけがない。

 ただ小さな女の子が1人で、小間使いとしてちょこまかと頑張っている。
 むしろその女の子以外の使用人を見たことがない。

 これ…ね。

「不思議お屋敷もあるんだなぁ、どんな暮らしをしてるんだろう?」とか思ってたらさ、よくよく考えたら、その小さな女の子って風の乙女シルヴェストルのことだよね……。
 同じように教会の資料にも、お化け屋敷のような書かれ方をしてたし。

 今思うに、クソ親父が使用人を雇わずに、精霊に全てを丸投げしてたってだけなんだよね。
 内情を知らないで噂だけで資料を作られると、僕の実家はとんでもない家になってしまうようだった。

 ま、あながちハズレではないし、アタリでもないけど、面白そうだったからあえて意見はしないでおいた。


「なるほどねぇ…。でも僕は公爵家に雇われてるわけじゃないんだよ。そこの娘に専属として雇われてる」

「なおさら凄いじゃないかっ!今、あの家にいるの子供は末娘だけだろう?どうやって手懐けたんだよ」


 手懐けた。と、言われて思わず笑ってしまう。
 見た目はともかく、小さいし可愛らしいし、それなりに素直だから、そう見えるのかな?

 中身がいろいろ残念だけど……。


「手懐けた、かぁ。どっちかといえば、僕が拾われた感じなんだよなぁ」

「拾う…?どういう意味だ?」


 実際『拾ってあげる』ってセリフを聞いた記憶がある。
 これも嘘じゃないし、良いよね?
 まぁ詳細は話してはいけないような気がしたら、大まかにぼかして話すつもりだけれど。


「そのまんまだよ。あ、いや…行き倒れてるところを、助けてもらった」

「幼児にかっ?!」


 課題の書き取り練習をしながらも、こくりとうなずいて見せる。
 すると……なんだかとっても残念そうなため息が聞こえてきた。


「情けねぇ…」

「俺も倒れてたら拾われるんだろうか?」

「いやいやいや…!多分あれは特殊な状況だったからだと思う…よ?」

「どんな状況だよ…やっぱり顔か?!」


 顔って……行き倒れてるのに、どうやって顔をアピールするのかと…。
 容姿への執着の強さに、思わず呆れ顔になる。


「違うって…。誘拐事件あったでしょ?」

「あぁ……公爵邸が教会の雇った傭兵だか冒険者に襲撃を受けて、娘が連れ去られたってやつ!」

「それそれ、そこから自力で脱出してきたんだよ、あの子」

「ちっこいのに、凄いな!」

「……まぁ、その脱出の最中に助けてもらったんだ」

「情けないな……」

「そこ耳が痛い…ていうか、さっきも聞いたし!」


 情けないのはしょうがないじゃないかっ!
 どうにも説明しがたい状況だったんだから!とは思いつつも、説明上はあくまでも『行き倒れ』だからね。
 行き倒れを、単独行動中の幼児に助けられるとか……確かに情けないっ!
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