私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

361、side ユージア。課題の仕上げに。

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「なんかよくわからないけど、すげー眠い……。悪いけど、先に休ませてもらうわ」

「あ…おやすみなさい」


 魔力無しなのに、魔力切れなのだろうか?
 先ほどまで一番、眼をきらきらと輝かせて、積極的に古代語の練習や魔法陣の用紙を見ていたりしていたのに、今や眠い眼をこすりながら、フラフラとベッドへ向かい、そのまま倒れ込むと、ピクリとも動かなくなってしまった。

 大きな耳をぴこぴこ動かしながら……。


「……ふっ。耳っ!何、あの耳!?」

「獣人化って言うのか…?あれは…ははっ…」


 すやすやと気持ち良さそうな寝息が聞こえてくる状態の彼の頭の上で、真っ白な長い耳がぴょこぴょこと音を拾っては動いていた。
 笑ってはいけない!と思いつつも、それぞれで笑ってしまっていた。

 それぐらいに彼の姿が衝撃的だったし、そうなってしまった原因が、これから自分たちも行う自作の魔法陣だったわけだから。


「あ~笑った!この魔法陣って失敗すると、とんでもないことになるんだね……嫌だなぁ、僕も失敗したらウサ耳生えちゃうのかな…?」

「その耳が飾りの耳じゃないところがイヤだな。しかもあれ、思いっきり本物だし…」


 まぁあれは見た感じ『変化の魔法』の様だから、時間経過で元には戻ると思うけども。
 それでもあからさまな、頭部、耳のあの変化にはびっくりする。
 実際、あの真っ白ふわふわのウサ耳に視線は釘付けだった。


「いや、作り物でもさ……野郎のウサ耳…誰が喜ぶんだよ」

「まぁ、あいつもだけど、ユージア君くらい可愛くて、さらにウサ耳ついてたら教室の女子が大喜びしそうだけど?ふふっ」

「……そんな事に需要があっても、全く嬉しくないです!」

「だよなぁ…あははっ」


 笑いながら席を立つと、新しい焼き菓子を盛り付けて持ってきてくれた。
 紅茶まで入れてある。
 本当に気が利くし、要領のいい人だ。

 って、僕が一番新入りなんだから、これって僕がやったほうがいいんだよね?きっと。
 ……執事を目指す、ということは、こういう気配りや行動で、この人を軽く越えなきゃいけない…って無理そうなんですけど?!


「話はズレちゃったけどさ、古代語の、僕の最初の目標は……これを読める様になる事なんだ」


 席を立つと、ベッドに立てかけておいた、セシリアから借りた杖を2人に見せる。
 杖の中心部に近いあたりに、深くはっきりと何かの文字列が彫り込まれているのが見える。

 ガッツリ使い込んでも擦れて消えてしまわない様に、深くはっきりと彫り込まれていたので、とても大事な言葉なんだと、思っている。

 これはセシリアなら知ってると思うし、その場で意味や内容を聞いてしまえばよかったのだけど、何しろこの存在に気づいたのがこちらに移動した後だったから。


「杖の銘でも書いてあるのかな?」

「杖って思い入れのある言葉とかが彫られてたりするでしょう?位置的にも。だから気になって」


 男性用と女性用の武器につけるアクセサリーものは、意味合いが違う!とも、たまに聞くけどね、結局は大事なモノを飾る、というのは変わらないからね。
 そんな場所に大事に彫られている文字、気になると思わない?


「それ、女性用だよね。ユージア君の恋人の杖とかだったり?」

「……いたら、僕は行き倒れてたりしてないと思うんだ」

「そういえば、そっか」

「この杖は、雇い主セシリアから、借りたんだよ」


 ……どうしてそんな質問になるのかと顔を上げると、2人の内の1人が、からかい半分だったのか、魔法陣に古代語表記での数字や文字を書き込みながら、にやにやとしていた。


「公爵の末娘か。随分な業物ワザモノに見えるんだけど、公爵はそんなモノまで幼児に与えてしまうのか……」

「業物…?ていうか、女性用って、よくわかったね?」

「ああ、実家が武器屋だからね。木材加工系の…特に杖はよく作ってたから…ちなみにだけど、その材料に使われてる素材が、今ではほとんど産出されないってのも、よーく知ってるよ?」


 クソ親父曰く『シシリーセシリアが、服でもなく宝石でもなく、唯一、お金をかけて拘って作ってもらった杖だ』と、少し呆れ気味に言っていただけのことはあるって事だろうか?


(貸して?って、お願いした時も一瞬、一瞬困ってたもんなぁ。相当なお気に入りだったのかな?)


 ……にしても『唯一』ってさ、女性なんだから、お化粧とかアクセサリーとか、ドレスとか…そういうオシャレなものへの興味は無かったんだろうか?


(あ……無かったんだろうなぁ。あのクローゼットだもんなぁ……)


 杖を見つめながら、思わず遠い目になってしまった。

 魔導学園で、シシリーの私室として使っていたという、部屋での出来事が脳裏に浮かぶ。

 魔力切れの眠さから、堪えきれず眠ってしまったんだ。
 そんな昼寝から起きたら、隣で何故かセシリアまで一緒になって昼寝をしていて、風呂上がりのクソ親父がちょうど部屋に戻ってきたところだった。

 ベッド近くで大量の衣類に埋れていた、1人がけソファーを使おうとした親父。
 衣類を魔力でふわりと浮かび上がらせると、軽くたたみあげてクローゼットを……。

 開けたら、中からさらに大量の衣類が雪崩れてきた。

 スローモーションに見えてしまったほどに、それはもう見事な雪崩っぷりだった。

 その瞬間の親父の顔と言ったら…!
 いつもの澄ました顔はどこへ行ったのか、文字通り唖然。と、固まっていた。


(……手伝わされたけど、あれは、なかなかいいものが見れたと思ってる、うん)


 流石に衣類が多すぎたので、そのままぎゅっと詰め直すこともできず、一つ一つきれいにたたんで、レンガのようにきっちり積み上げていって、やっと全てがクローゼットに収まるような状況だった。

 あまりの服の量に、僕も途中まで手伝わされて、一緒に黙々とたたんでいたのだけど、ふと親父の動きが止まる。
 なにサボってやがる!と、思ってそちらを見ると、その手に掴まれていたのは下着で。

 その顔が、すごい勢いで茹で上がっていくのを見てしまって、笑い転げていたら、思いっきり睨みつけられた上に『さっさと風呂に行け!!』と、追い出されてしまったわけだけど。

 あの生活の無頓着さだもんなぁ。
 本当に、おしゃれに全く興味なかったんだろうなぁ。とは思う。
 そんなことより何よりも研究が面白かったのか、学校が面白かったのか、そのどちらにしても、僕が体験をしたことがない世界だから、ちょっとうらやましかった。

 そんなシシリーがこだわって作り上げた杖だ。
 かなり高性能なものだと期待ができる。

 ……と、言いつつも、まだちゃんとした魔法が使えないから何とも言えないんだけどね!

 それでも、杖を手にしている僕より、見かけただけでその価値を言い当てることができる、その慧眼はすごいと思うんだ。


「すごいなぁ…ねぇ、それも『一芸』ってやつになるんじゃないかな?武器の目利きができるって、とても頼もしいと思うんだけど」

「詳しいのが杖系だけなんだよ…いろいろできたら胸も張れるんだけどね」


 そこまで詳しければ、杖系だけ!と限定して言い切ってしまっていても、充分な『一芸』というかスキルだと思うんだけどなぁ。


「さて……私の魔法陣、完成だよ」

「私も…耳が生えないと良いのだけど」

「僕も……っ!」


 3人ほぼ同時に魔法陣が描き上がった。

 完成度を確かめ合う様に、それぞれの魔法陣とを見比べながらも、魔法陣に手をかざした。

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