私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

363、side ユージア。既にホームシックです。

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「そういやお前、辺境伯の息子って本当なのか?」


 ああ、やっぱりそこ、突っ込まれますよね?
 さっきの精霊め……守秘義務くらい守って!?


「あぁ…いや、貴族だから、どうとか言うつもりじゃないんだ。ただ、辺境伯の息子であれば、公爵家の使用人に志願する必要はないんじゃないかな?って。行くなら王家のような気がしてさ」


 ちょっと引きつり気味の、愛想笑いと共に説明されるわけだけど。
 言いたいことはわかる。

 貴族にも階級があって、公爵はほぼ最上位と言っていい。
 その次が侯爵、伯爵、子爵、男爵と続くんだ。

 辺境伯っていうのは、一応伯爵なんだけど、国の防衛も担っていることが多いから、実質は侯爵や…状況によっては公爵と同等の扱いをされる辺境伯もいる。
 親父の場合も同じで、公爵と同じ扱いのようだった。

 なので、同じ格の家の子を使用人として使う…てのは、おかしいよね?というお話なんだけど。


「一応、息子だけどね?でも、今は公爵家の使用人だから」

「言いたいことはわかるけど…それなら、いずれは家に戻るんだろう?」

「戻る必要が、全く無いんだけど……?」

「いや…必要とかじゃなくてだな…貴族なんだから」


 言いにくそうに手元の魔法陣に浮く球体をぷよぷよとつつきながら、話していた。

 家督関係だろうか?
 家を継ぐとかそういうお話ね?
 そういう意味であればさらに、僕には全く関係がない。


「貴族だけど、そうじゃないみたいな?」

「どっちだよ……」

「名前だけ『辺境伯』の息子だからだよ」

「名前だけって……あのエルフの方かっ!」


 エルフの方……そういう区別なのか!と。
 まぁスルーズヴァン辺境伯は、自分の領地でも、王都でも同時進行で活動中ですからね。
 わかりやすい言い方で『エルフの方』になったのかな?

 なら、まぁ説明も簡単そうだな!とサイドの髪をかきあげるようにして、耳を見せながら話す。


「それで僕、エルフに見える?」

「見えねぇ…見事にハズレを引いたなぁ」


 ハズレ…どうにもこの言葉、苦手だなぁ。
 やたらと刺さる気がする。
 ずっと言われ続けちゃったからだろうか。


「そういう事!親より短命じゃ、どんなに頑張っても継ぎようが無いし、現状、親だけで仕事が回ってるなら、手伝う必要だって無いでしょ?」

「無いな……」


 ごめん。と、なんとも申し訳なさそうな顔をされてしまった。
 まぁ、元の姿に戻れば……僕だってエルフ種には変わりはないだろうけどさ。

 親父はハイ・エルフという、エルフの上位種なのだそうで。
 寿命でいえばエルフの倍以上を軽く超え、そこらの龍と同等か、それ以上にもなるそうだし。


(それってどう頑張っても、エルフの僕より長生きするよね?!)


 セシリアには『お父さん似だったら良いね』とは言われたけど、こうやってハズレを引きまくる僕だよ?
 ハイ・エルフな訳がない。


「まぁ、貴族なら戻ってお屋敷に引きこもっても~なんて考える人もいるだろうけど、あのお屋敷……使用人もいないんだよ?どうやって暮らしてるか想像もつかないし、ていうか、戻ったら居候どころか資材扱いされて人体実験されそうだし?」

「あぁ……」


 何か物凄く同情的な顔をされてしまった……。


(人体実験、冗談のつもりだったんだけど…同情されるとか、親父の普段がどんな印象なのか、よくわかるよね?!)


 まぁ実際、暗部に所属していた時は、親父は暗部に敵対する中でも最重要危険人物あくのおやだまだったわけで。
 どんな人物か調べようにも秘密が多すぎて、そして行動も姿も捉えることができなくて、本当にヤバい相手だ!と、絶対に関わるな!と…説明を受けていたんだよ。


(まさかそんな相手が自分の父親とか…事前に頭に入っていた情報が情報なだけに、恐怖でしかないんだけど)


 でも、見た目・・・だけは、それだけは、目にすると安心してしまう。
 ……だってその姿は、暮らしていた里が襲われて僕が攫われるまで、それまで大好きだった『父さま』の姿、そのままだからだ。

 中身は…50年ぶりの再会でいきなり襲いかかってくるという変態だったわけだけど。
 見事に変質して…いや、もしかしたら、あれがなのか?


 考え込みすぎて、ちょっと頭が痛くなりながら、2人の魔法陣を見つめる。
 僕の魔法陣の上に浮かんでいた球体は、先ほどの精霊に食べられてしまったのだけど、2人の魔法陣の上の球体は、まだ存在していた。

 そのままふよふよと柔らかな球体を保っているものと、もう片方は……。


「これ、可愛いね!…精霊が動かしてるのかな?可愛いなぁ…」


 そう、小さな丸い球体は、そのまま真っ白なふわふわの毛玉に姿を変えていた。
 手のひらサイズの子ウサギに見えるそれは、小さな体で足元をチョロチョロと転がるように走ったり、宙を駆けたりしていた。


 これは可愛いな!セシリアにも見せてあげたいなと…思いながら眺めていた後の記憶が実は、無い。
 いや、あることにはあるんだけど、かなり曖昧になっていった。

 どうやら、ウサ耳を生やした彼と同様に、魔力切れとなってしまったようで、猛烈な睡魔に襲われて耐えきれずに、先に寝てしまったのだった。

 
(……まぁ後の2人も僕が寝たあと少ししてから、同じく魔力切れを起こしてダウンしたようなのだけど)


 3人とも目を覚ましたのは翌日の朝で、ウサ耳は消えていたし、可愛い子ウサギも消えて……ずっと魔力の球体のままだった最後の1人は、起きたら魔法陣の上に、小さな小さな小瓶に入った、蜂蜜が置かれていたそうだ。

 朝食後に紅茶を出してくれたんだけど、それがその蜂蜜入りの紅茶でね、すごく美味しかったんだ。
「お礼を言いたいね」と、話しながらいただいた。

 ささやかなお願いって、蜂蜜を貰うのもささやかなのかな?
 また機会があればお願いしてみようとか、そんな話をしつつ、今日も勉強が始まったのだけど……。


 親父に手紙を送って、一晩経ってしまったのに返事がない。


(さして重要な内容ではないからスルーされてるってだけなら良いんだけど……セシリア、無事かな?)


 返事ができないほど忙しいとか、大変な状況になっていませんように。

 思わず、セシリアの杖を持つ手に力がこもった。
 ……早く帰ろう。

 頑張るから、あんまりトラブルを起こしたりしていませんように。

 セシリアが、無事でありますように。
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