私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

364、ラスボスもだけど色々…困った。

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 どうしてこうなった。
 もう、ひたすらにこの言葉。

『核の再構築』と、腕輪に命じた結果ではあるのだけど……。

 さて、今、ここには父様たちがいない。
 というか、私を抱えていたルークしか・・いない。

 前方、ここから少し部屋の奥の方では、ぼろぼろになって倒れているドラゴンもどきと……人?


(どうみてもラスボス部屋ですよね?!しかも、戦力をほとんど置いてきちゃっての、ラスボス部屋っ!!)


 人……ルナは『いない、存在していない』って言ってたけど、やっぱり居たんだね。
 とにかく助けないと!と思ってルークを見上げると、なんとも険しい顔。

 助けないの?と、顔の近くをゆらゆらしているマントをツンツンと引くと、部屋の奥をきつい眼差しで見据えたまま、小さく首を振った。


「あれは人では、ない」

「人にしか見えないけど……?」


 ルークはそっと、彼らに気づかれないように部屋の端へと移動していく。
 壁に背を預ける状態となったところで、頭上から、フッと小さく息を吐く音が聞こえた。


「……2人だけで…話す時間が欲しいとは思っていたが、これは…なかなか」

「せ…せめて、お茶が出てくるようなところでお願いしましゅっ!」


 ふわりと視界が高くなると、小脇に抱えられていた体勢から、お姫様抱っこへと変わると、そのまま自然な流れで、おでこにキスを落とされた。

 って、顔!近いよっ!近いっ!


「少しは…令嬢らしい返しができるようになってきたじゃないか」


 噛んでるけど。と、あでやかにクスクスと笑う。

 美人は3日で慣れるとか、何かの言葉で聞いたことがあったけど、この美しさには…やっぱり慣れない。
 毎度毎度、その笑顔の優美さに見惚れてしまう。

 ……おっと、見惚れている場合じゃなかった。
 それにしてもこの状況、どう対処すべきなんだろうね?


 こうなる直前、私は『核の再構築』と腕輪に命じたんだ。
 すると途端に、周囲の壁という壁がするりと溶け消えて、真っ白なだだっ広い部屋へと変化した。
 つまり周囲の、部屋と全てがつながるということで……。

 怪しいねと言われていたあの部屋ともそのまま、ひと繋がりの大きなフロアになってしまって…今の状況に至る。

 するりと壁が抜け落ちるのと同時に、一緒にいた父様やフィリー姉様、守護竜アナステシアスまでもが姿を消してしまっていた。
 どうやら、核の再構築をするにあたって、建物内の異物を全て外に排出して…と、施設自体のリセットも行われているようだった。

 ちなみに、核の再構築というのは、ダミーとして使われていた核を、本来の核として置き換える作業の事だ。
 その労力としての大量の魔力や、核自体に秘められているべき広大な魔力の補給方法としては『施設内に存在する魔力源を使う』と腕輪に表記されていた。


(どういう意味なんだろう?と一瞬思ったのだけど、あのぼろぼろになって倒れている2体の魔物(?)竜っぽいのと人っぽいのを見て納得した)


 つまり、人工的に作られた核とはいえ、なんらかのトラブルで本来のダンジョンの核のようになってしまったり(ダンジョン化)
 核の消失…それこそ核自体が魔物化、もしくは核が魔物や、第三者に取り込まれてしまった場合の奪還方法だったようだ。

 そう、あの2体……双方ともに核の魔力の恩恵を受けていたようで。
 私が『核の再構築』を命令した影響から、新しい核となった元ダミーの核に、体内に溜め込んでいた核の魔力を一斉に吸い取られて、現在の状況に。
 ……急激に魔力を奪われて、身動きができない状態になっていた。


「さて、あそこの2体だが…他にも少し、予想外なことが起きている」

「予想外……?」

「今は『核の再構築中』だ。関係者以外は立ち入り禁止となっているはずだ…。現に宰相や水の乙女オンディーヌ……守護龍までもが『部外者』として退場させられたのだが…あれは」


 そう説明しながら、奥の2体を……って、そうか、今ここに存在できてるのって、『管理者』や『使用者』…つまり、持ち主と製造責任者等のサポートで来た人間だけって事になるんだけど。


「2人…いるね?」

「そうじゃない……2人という意味なら『使用者』と『核』を飲み込んだモノであれば、条件を満たすだろう?」

「あ…しょうか」


 ふふっ。と、軽く笑う声が頭上からきこえた。


「彼らが何故『堅牢の封印』の中にいたのかって事だ。閉じ込めるための部屋に…わざわざ屋敷の主人が入る必要はない、だろう?」

「あっ…なんでだろう……?」

「つまりだ、どちらも味方ではない、という場合があるって事だ。セシリア、今のうちにルナを。それと『補助者』として、私と宰相、守護龍……一応、フィリー嬢を登録してくれ」

「はぁい」


 家主が自ら…自宅の牢に入る。ちょっと意味不明だし。
 どちらにしろ、あの2体にしても何かしら異常事態に直面していたのかな?と思いつつ。

 ルークの指示通り、父様たちを『補助者』つまり、再構築のお手伝い要員として再入場させる登録てつづきを腕輪に……って、さっきから近かったルークの顔がまた、ぐいぐいと近づいてくるので、思わず両手で顔を押し戻す。


「……って何してるのっ?!」

「……」


 じりじりと近づいてくるルークの顔を必死に押し戻しつつ、登録を進めていく。
 ん~相変わらず綺麗な肌!
 まぁ流石に、幼児の腕力じゃ必死に押し返しても、ぺシャリと負けてしまって、そのとんでもない美貌が間近に…というか、おでこや頬にその美貌の頬を押し当てられてグリグリされてるわけですが。


「ちょっと!気が散るからっ!」

「少しくらい良いじゃないか……」

「良くないっ!もしかして『2人だけで話がしたい』ってのも、これが目的とか無いよね?!」

「ああ、あれは……シシリーの私物を、いくつか預かったままだから、セシリアキミが使いこなせるのであれば、返そうかと思ってね」


 そう話しながらも、離れる気はないらしく、私が必死に押し返そうと、ルークの顔に当てている手すらも掴むと「ふわふわだな」とか言いながら、手のひらにキスを落としてみたりと、やりたい放題である。


「勿論、こっちが目的でも全然構わないが?」

「構うからっ!!」


 まぁ、眼福ではある。ありすぎる。

 明らかに楽しげに上がっている口角。
 優美な顔が間近で…いや、近すぎてパーツしか見えないけど!
 そんな柔らかな唇が耳に押し当てられた後、耳元で普段よりもずっと優しい声で囁かれた。


「……記憶ほど曖昧なモノは無いからな。シシリーの記憶があるとは言っても、どこまでの記憶があるのか、分からなかったから」

「とりあえず、近すぎっ!」


 なんとか登録が終わって、顔を押し戻すことに必死にジタバタとしていると、付近に人の気配が近づいてきた。


「……またやってる」

「ハンス…セシーを気に入ってるのはわかったから、時と場所をだな……」


 思いっきり呆れた声色のフィリー姉様と、父様……。
 いや、父様?娘の危機だよ?助けようよっ?!
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