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はじまりはじまり。小さな冒険?
374、さぁ、課題の総仕上げですよ。
しおりを挟むシシリーのサブで使っていた杖。
そして、フレアからの贈り物で『精霊の杖』と呼ばれるものだ。
しゃらしゃらと杖についているチェーン状のアクセサリーが揺れる。
シシリーが結わえ付けていた、紫色のリボンの鈴もついていた。
杖の形状は蔓が絡まり合うようにして杖の形状をとっているような造形で、燻銀のように、少し鈍く光を発して、核石は紫色をしていた。
『取り返した後にね、ちょっとだけ小さく作り直したの。また……使ってくれる?』
「もちろん!ありがとう!」
心配そうな顔をして渡されたけど『精霊の杖』は精霊からの『大好き!』の証だ。
フレアの杖とは言ってるけど、本当はルナとフレアからの贈り物。
使わないわけがない!
杖を渡されて思わず笑顔になると、フレアはほっとしたような表情になった。
杖の握り部分も、測ったかのように今の私の手に馴染む。
最高の杖ですよ?!
「じゃあ…」
『うん!』
フレアの『頑張って!』と、私の「行ってくるね!」の声とほぼ同時に、ゴウっと唸りを上げて強風が吹き上げる。
『きゃああああ~やっだぁ~』
「レイ…凄いなっ!」
風の向かった方向では、いきなりの強風に煽られて、火の妖精がきりきり舞いをしていた。
そういえば……シュトレイユ王子の得意な魔法って、風だったね。
内緒話の盗み聞きや、逆に音を届かないようにする耳栓のような小さな魔法だけかと思ったら、こんな力任せな、大きな魔法まで使えるなんて!
セグシュ兄様からも驚いた!と、感嘆の声が上がる。
「飛ばすから……受け取って!」
「カイっ!投げるぞっ」
「……行きますっ!」
シュトレイユ王子の声に、セグシュ兄様はカイルザークを呼び寄せると、勢いよく自分の手を踏み台のように踏ませて、そのままバネのように放り投げる。
『まだ捕まらないよーっだ!』
そんな声とともに、カイルザークの手から、すんでのところで回避する。
セグシュ兄様の投げと、カイルザーク自身のバネで、ずいぶん高いところまで飛び上がってもバランスを崩さずに、火の妖精を目掛けて手を伸ばせる、カイルザークの運動神経の良さに感心してしまう。
そして、するりと逃げる火の妖精に『おしい!』とギャラリーから声が上がる。
カイルザークはそのまま天井付近の壁に捉まると、再度、火の妖精へと向かって飛び降りた。
流石に警戒されていたのか、今度は簡単に躱されてしまった。
「セシリア?!おかえりっ!……燭台、つけられちゃったら消してくれる?」
「はぁい!」
着地とともに、杖を構えている私に気づいたようで、声を。
……まぁ妥当な内容だね。
正直あんなにアクティブに動く3人に、フォローできる魔法を使うなんてできる気がしない。
とりあえず、部屋の端に転がされていたコップを拾うと、そのそばに置かれている大きめの桶から水をすくう。
(えっと……このお水で、燭台の火を消していけば良いんだよね?)
魔力操作、苦手なんだよなぁ……。
セグシュ兄様やユージアたちに恐れられている、あの回復魔法のひどい痛みの原因も、この魔力操作が下手だからっていう話だし、直していかないといけないんだけどさ。
さて、苦手意識がある時点で、苦手決定になっちゃうから……それに今回はフレアから杖も貰ってるからね!
気にせず使ってみよう!
なんとかなるはず!
(今、火が灯されている燭台は2箇所……あ!1箇所増えた)
ひらりひらりとシュトレイユ王子の風の魔法や、カイルザークの追跡を躱しながら、付近の燭台に火を灯していく火の妖精の位置を確認しつつ、みんなの邪魔にならないように、一番離れた場所の燭台に狙いを定める。
(水鉄砲のイメージで、燭台へと水を飛ばすにはちょっと距離があるかなぁ……)
私が狙った燭台は、天井が高く作られているこのサロンの、ほとんど天井付近に設置されていた。
天井、焦げないかしらね?というくらい、天井に近い位置で、コップをそのまま投げつけても届く気がしない高さだった。
(水を一塊にして飛ばすとして、外したら……恥ずかしいわね?というか、この距離だと、当たる気がしないから、水の形状を少し工夫したほうが良いかも)
うーん。考えてコップ1杯の水で作れる効果的な形状……傘みたいな形ならどうかしら?と思い立って、コップの水へと魔力を通し始める。
魔力の通った水は、コップから溢れ出すようにフヨフヨと飛び出すと、その場で球状になる。
それをしたから上へと、魔力で一気に押し出す……!
──パシャン!
何故か、私が水を被った。
直後、観戦席の方から「ぶっ…!」とか「ぐふっ!」とか変な笑いが聞こえてきたけど、気にしない。
さぁ、気を取り直して、集中!集中!
「……もう1度」
桶からコップで水を汲むと、中の水を水球にする。
ここまではできた。
次は、これを上に飛ばす……のだけど、さっきは飛ばなかったから、ゆっくり運ぼう。
見上げながら作業をして、燭台と大体同じくらいの高さまで水球がゆらゆらと上がったのを確認すると、今度は水球の形状を変えて…お椀型になった!
……そのまま燭台に被せる!
さぁ一気に横に移動だ!
と、思った瞬間に、お椀型だった水の塊が激しく粉砕した。
「あ……もう1度」
そう呟いた直後……。
『きゃああっ!濡れちゃった…っ!もう少し遊びたかったのに!』
いきなりの悲鳴に、思わずびくりとなる。
……燭台の灯火は消えずに、偶然だけど、カイルザークの追跡を楽しそうに躱していた、火の妖精に水が直撃したようだった。
火の妖精は、少しムッとした表情で、ひらひらと私の目の前まで降りてくると、小さくカーテシーをして、笑う。
『あら…あなたまでずぶ濡れじゃないの!』
コレならおあいこね!と、笑いながら、私の服に触れると、一瞬で洋服が乾いてしまった。
カラッと乾いた衣類は、心なしか、乾燥機から出したばかりのような熱さを感じた。
「ありがとうございます」
『うん!良い子ね!また遊んでね?』
そう言うと、ヴィンセント兄様の付近にいた火の妖精たちへと、合流してしまった。
ひらりひらりと、赤く仄かに身体から光を放ち、ゆらゆらと動く様は、本当に火の粉のように見えていたのだけど、近くで見ると、蜻蛉のような羽をいく枚か持ったアシンメトリーな裾の真っ赤なドレスを着た、可愛らしい妖精でした。
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