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はじまりはじまり。小さな冒険?
373、聖樹と種、どっちも大きくなーれ。
しおりを挟む発芽まで…って、発芽するまでに土に植えなくて良いのかしら?
根っこ、傷まないのかな?
確かに好光性種子ってのもあるけどさ、それでも水とか温度の条件が必要よ?
ルークは、意味がわからずに思いっきり考え込んでしまった私の頭を撫でると、クスクスと笑い出す。
「大丈夫だ。発芽の準備ができたら、種が教えてくれる。セシリアを苗床にする、という話ではないから、大丈夫だ」
それは余計に怖いです……。
ちゃんと発芽時期を教えてくれるのかな?と思わず手のひらの種を凝視してしまう。
胡桃ほどの大きさ…というか、ほぼ見た目は胡桃なんですけど。
さっきみたいに手放そうとすると必死にくっ付いて離れない。
でも、今みたいに見つめてるだけなら、手のひらの上をころころと転がせそうなくらいに、単なる胡桃だ。
(まぁ、転がせるほど私の手は、大きくないんですけどね。握ってるだけで精一杯だし)
着替えとかをすると、いつの間にやら、ポケットから新しく着た服のポケットへ、勝手に移動している。
どうやら『種をポッケに入れたまま洗っちゃった!』みたいな大惨事には、なりそうにもない。
そういう意味ではちょっと安心な子だ。
とりあえず、うっとりが止まらないフィリー姉様と、セシリアを見つめてニヤニヤが止まらなくなっている父様をどうにか引き連れて『避難所』へと移動した。
守護龍アナステシアスはここから別行動となった。
一足先に、王様の傍に戻るらしい。
龍のフォローが必要と思われる、魔物の討伐は完了したし、シュトレイユ王子への呪いに関しても、危険な状態を脱することができているから。
「ただいま~って、あら?」
移動は、父様から『知ってても緊急時に使えないんじゃ困るから!』と、教わったばかりの『おまじない』を実際に使ってみろと言われたので、私が『避難所』へと続く煉瓦敷きの小径を呼び出した。
ちゃんと小径が現れた時は、ほっとしたのだけど……『避難所』の室内はカオスなことになっていた。
「ヘルハウンド……収拾つかなくなってるようだが?」
『おや…?』
眉間を抑えつつ、ため息を吐く父様の視線の先、仔犬姿に戻ったヘルハウンドが返事とは正反対に大きくしっぽを振っていた。
……楽しそうですね?!
課題をこなしているはずのレオンハルト王子はソフィア王妃に膝枕をされて、ダウン中。
その隣では、楽しそうにお菓子を片手に応援中のシュトレイユ王子。
……その楽しそうな姿に、少しは楽になれたのかな?と安心する。
で、シュトレイユ王子が応援していたのは……。
「セグシュ兄さまっ!上っ!上ですっ!!」
シュトレイユ王子の声に即座に反応して、上を見上げるセグシュ兄様。
しかし、上と言っても3メートル……一般の民家の天井よりも遥か上の燭台の近くで、火の妖精が再び火を灯そうとひらりひらりと舞い遊ぶ姿が見えた。
「えっ…カイっ!」
「と…届きませんっ!エルっ!…は無理か」
カイルザークが短杖を持って、セグシュ兄様へと向き直る。
ちなみにエルネストは……レオンハルト王子同様にダウン寸前のようで息も絶え絶えになりながら、フラフラと観客席のようになっている場所へと歩き始めていた。
「はっ…あー…辛い。ちょっと、休憩させて……」
「僕が…!」
ここ最近ずっと使っていたソファーセットではなくて、サロンの奥の方、シュトレイユ王子が寝かされていたベッドのあたりに、とても大きなソファと少し長めのテーブルが準備されていた。
足元には毛足の長い、真っ白でふわふわのラグが敷かれていて、どうやらそのラグの範囲内は、妖精たちは近づかないようになっているようだった。
……完全に観戦席だよね。
そんな席から、シュトレイユ王子が立ち上がって、エルネストの代わりにと飛び出そうとする姿に、エルネストは焦って止めようとしていた。
ソフィア王妃も先ほどまでの笑顔が即座に心配そうに曇ってしまった。
「ああ、シュトレイユ王子は…」
「良いですよ。行ってらっしゃいな」
「クロウディア!」
母様だった。
その声を聞いて、足取り軽く飛び出していってしまった、シュトレイユ王子の背を心配そうに見つめているソフィア王妃。
そんな様子に、母様はにっこりと笑みを浮かべるとソフィア王妃の背を優しく叩く。
「大丈夫よ。もう……大丈夫なのよ?」
「でもっ!」
「ふふっ…。子供はね、本人が楽しいのなら、それが1番の回復方法なの。いっぱい遊んだら、いっぱい寝れるでしょう?それにここには、ヴィンセントも私もいるわ。大丈夫」
そんな姿を目にしながら、私たちは帰還した。
……ちなみに、ヴィンセント兄様は、すでにダウンしていた。
きっと、セグシュ兄様の前に、頑張っていたんだろうね。
観戦席と化している絨毯の後方にある、大きなソファーに足を投げ出すようにして、転がっていた。
いつもきっちりしているヴィンセント兄様にしては、珍しい光景だ。
そんなヴィンセント兄様のすぐ近くを楽しそうに、ひらひらと火の妖精たちが舞う。
まるで火の粉が舞い上がるような、きらきらと幻想的な光景だ。
どうやらそこにいる妖精たちは、すでに『捕獲』となった子たちらしく、その場から移動する気配もなく、むしろ、テーブルに置かれた砂糖菓子を嬉しそうに啄んでいた。
「あと、精霊は1人…か。燭台はほぼ消えている。みんな、頑張ったなぁ」
「大人も混ざっていたようだが……兼ね合格だな。シュトレイユ王子を見てから、課題終了としよう」
呆れを通り越して、遠い目になりつつある父様の労いの言葉と、ルークの判定と。
これで兼ね合格ってさ、どう頑張ったら、完璧な合格になるんだろうか……。
(獣人であるエルネストが、ダウンするほどの運動量が必要とか、人間だけじゃ到底無理な気がするんですけど?!)
父様ほどではないけど、同じく遠い目になりかけていたところで、背後からフィリー姉様の声がかかる。
「…ハンス先生、セシリアも課題受けなきゃダメですよねぇ?」
「なるほど……」
「ほらっ!行ってらっしゃい!」
妙に意地の悪い笑みを浮かべているフィリー姉様の助言で、ルークの抱っこから解放された。
そして、さっさと行けと言わんばかりに背を姉様にトンと押される。
『あっ!セシリア!待って待って!これ使って!』
いやぁ、なんか走るの久しぶりだね!とか、走り出した直後にフレアに呼び止められて、杖を渡された。
……あれですよ、属性検査の時に魔術師団の団員さんに物色されて姿を消してた杖!
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