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はじまりはじまり。小さな冒険?
376、チーズフォンデュのような何か。
しおりを挟む『うーん、ごめん。献立のチョイス間違えたかもしれません……』
そう言いながら、内装を眺めて少し困った笑みを浮かべつつ、フレアとルナが食事を載せたカートを押し、食堂から顔を出した。
先ほどの課題の観戦席になっていた場所は、毛足の長い真っ白な大きめラグを残したまま、寛ぐタイプのソファーセットから、ちゃんと座れるタイプのソファーセットへと変更されて、テーブルも装飾の見事なものから、少しだけ広く、実用的な形のものに変わっていた。
そのテーブルに所狭しと並べられたのは……。
もう、あからさまに子供好きのする料理たちだった。
……私が前世で『チーズフォンデュという料理が流行っている』と、テレビで見て、孫たちが遊びに来てくれた時に振る舞った料理だった。
どうも、私は勘違いをしていたようで、実際のチーズフォンデュとは全く違う料理を作ってしまっていたのだけど、子供たちには好評だったというメニュー。
息子夫婦には『酒のつまみだよね、これは』と苦笑いをされてしまったが。
その割には、以後、リクエストされることが多かったメニューだ。
……懐かしい。
『今回は、火の妖精がお手伝いをしてくれるとのことで、ちょっと変わった趣向にしました』
と、説明をしつつ、楽しげな笑みを浮かべているフレア。
ルナは黙々と、周囲に小皿や小さなスープボウルをいくつも配っていく。
その様子にレオンハルト王子とエルネストの目がどんどん輝いていく。
(やっぱり、子供はちょっと変わった事が大好きだよね)
中央にはスープ上のものが入った器がいくつか。
そこから好きな味のスープを小皿に貰って行って、あとは大皿に盛り付けられているスティック状の温野菜やパン、クッキー、果物や加工肉につけて食べてね?というもので。
チーズフォンデュって、つけるのがチーズだものね?
私、色々なものをつけて食べるのかと思って、シチューぽいのとか、カレースープとか、マヨネーズベースの山葵ソース、ニンニク……とにかく付けダレというのかな?
たくさん作って出しちゃったのよねぇ……。
本当、懐かしい。
(ちなみにおすすめは、フライドポテトに山葵ソースかなぁ。チーズ系のソースとパンも良いし、うーんどれにしよう)
これ、準備するのは種類が多くて大変だったけど、こうやって作ってもらってテーブルに並べられてると、すごく楽しい!
苦笑いされてしまっていたけど、息子たちも…喜んでくれてたのかな?
そうだと良いなぁ。
『子供が好きそうなメニューのつもりだったのですが……肝心の子供が、寝ちゃってるんですよねぇ』
ルナが、チラリとすぐ脇のベッドを見て笑う。
そうなんだよね、シュトレイユ王子とカイルザークが熟睡中なんだ。
ソフィア王妃が心配してたけど、シュトレイユ王子の今回の寝顔は、満足げで、笑みでも浮かべているような…というか、寝言で思いっきり声を上げて笑ってたし、今までの辛そうな雰囲気とはガラリと違っていた。
もうこれは、確実に魔力切れからの脱力だよねって、みんなで笑ってしまった。
この2人の晩ご飯は『起きてきたら』食べさせるからね?という話になって、私たちの食事がスタートした。
「エル、こっちのパンにチーズソースつけると美味しい」
「チーズか…レオン、この肉、半生っぽいんだけど柔らかくて、甘酸っぱいマスタードみたいなソースが美味いよ」
レオンハルト王子とエルネストはお互いに勧めあいながら、黙々と食べ続けていた。
……双方共に、ソフィア王妃と母様の膝の上で。
******
──『監獄』と呼ばれてしまった施設型魔道具の探索も完了。
闇の妖精たちへ『宝』の返却も完了。
そして、その間『避難所』に待機となっていた子供たちへとルークが出した課題も無事に『完了』という形で終了したので、少し早めの晩御飯を摂って、今日はこのまま就寝することとなった。
途中で帰ってしまった守護龍アナステシアスのように、この後、ソフィア王妃と父様と母様、ルークは一足先に帰宅…というか、反乱の直後だからね?
まだまだ混乱が続いている部分があるそうで、早急に戻ることになっていた。
ソフィア王妃は、2人の王子の側に居たかったみたいだけど…。
そうそう、レオンハルト王子がすこぶる機嫌が良かった。
さっきの膝枕とか、久しぶりに母親である王妃に甘えられたからなのかな?と思ってる。
(……言ったら怒られそうだけどね)
でも、食事中、ずっと王妃のそばにべったりだったんだ。
シュトレイユ王子の心配もほぼ解決へと向かって、安心したってのもあるだろうけど、2人ともとても明るい笑顔になっていた。
父様と母様の仲良し弾丸トークも健在で、ただ、母様の膝の上にはエルネストがずっと確保されたままになっていた。
エルネストが隙を見て逃げ出そうとするのだけど、母様が離さない。
食事中は思いっきり顔を赤らめながら、母様と一緒に食事を楽しんでいた。
……うん、楽しんでたと思うんだ。
なんだかんだ言いつつも、はにかむように嬉しそうに母様を見上げては、笑みが浮かんでいたし。
向かいの席には同じく、ソフィア王妃の膝の上で食事をするレオンハルト王子も居たし。
(私と目が合うと、2人ともものすごく恥ずかしがるから、見ないフリをしてたけどさ……可愛かったよ)
ちなみに私はというと……安定のルークの膝の上でしたよ!
なんというか、もう…逃げようがない感じ?最近ちょっと諦め気味になってきた感もある。
困った。
そのルークはと言えば、周囲…主にフィリー姉様が見惚れて動きが止まってしまうほどの、満面の笑みをその端正な顔に浮かべては『これが美味しい、あの組み合わせもいいな』と、私にじゃんじゃん勧めてくるんだけど、そんなに食べ切れないからね?!
そして暇さえあれば、頭に頬擦りをしていたり撫でていたり…落ち着いて食事をさせてください……本当に。
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