私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

389、おはようございます?。

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「えっと…あれ……?」


 気づいたら朝で、ベッドの足元には、少し疲れ気味のセリカがいた。
 ずっとそばにいてくれたのかな?
 椅子に腰掛けた状態で、うつらうつらと頭が揺れている。


『しー!』と口元に指を当てて、フレアが現れると、そっとセリカにブランケットをかけていた。


『セシリア、おはよう。随分良くなったみたいだね』

『魔力熱にかかってたんだよ。負担になるから出るなって…心配だった!』


 ひょこりと、フレアの影からルナが現れる。
 2人ともセリカを起こさないように、とても静かに話してくれている。

 それでも表情は何故か泣きそうになっていて『助かってよかった』と口々に言いながら2人して私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
 一通り撫でて満足したのか、にこりと笑うと『僕たちのためにも、もう少し寝ててね』と言葉を残して姿を消してしまった。


 ──生還、したらしい。


 なんかもう、辛過ぎて『あ…これは死んだな!』って、思うタイミングが何度かあったけど、なんとか乗り越えれたみたい。


(……子供たちに、こういう辛い思いをさせないために、シシリーわたしは予防薬を作ってたんだけどなぁ)


 かなり辛かったし、私にはあまり効かなかったみたいだった。

 ユージアは大丈夫だったのだろうか?
 魔力熱で朦朧としてた時に、来てた気がするんだ。
 あの子も魔力が高い……まぁ、ルークが色々と薬草を持ち帰ってたし、特効薬とまではいかないだろうけど、症状の軽減できそうな薬くらいは作ってそうな……。

 ……薬。

 そういえば、飲まされた気がする。
 ユージアと一緒に誰か、お見舞いに来たって……で、薬をもらった。
 飲ませて…もらった。


 どうやって?


 介抱してもらって。
 薬と一緒に水を流し込まれて……。


 だから、どうやって?


 不意に思い出される唇の感触。
 伏せられた長い睫毛に縁取られている瞳が開き……唇からひんやりとした感触が離れる頃には、照れたような笑みに変わる光景。

 間近で見ていたはずだ。

 間近で……。


(なにをされてるんだ、私はああぁぁぁぁぁああっ!!)


 いやいやいや……あの男の子だって、目の前で反応すら、薬すら飲めなくなって、ぐったりとしている子に、口移しで薬を飲ませてくれただけだから!
 医療行為だからっ!!


 落ち着け!と思うほどに焦り出してしまうのと同時に、はた、と気づく。


 ユージアと同じ背格好の男の子って事は、中高生くらいだよね?
 そして……セシリアわたしは幼児なのですよ。

 これで医療行為以外の感情があったのなら…ねぇ。
 ロリコンとか、そういう怪しげな性壁を警戒しなくてはならないのでは?


「ああっ!セシリア様!おはようございます!!」


 まさか……でも…と、混乱しつ頭を抱え始めたところで、セリカが私が起きている事に気づいたようで…というか、恥ずかしさでもがいてたから、起こしちゃったかな……?

 ルナとフレアのような泣き笑いに、安堵の色が混ざった声が響いた。






 ******






「まだ…お顔が赤いですね?熱が完全に下がっていないようですから、もう少し寝ていましょうね」


 私の顔を見て、おでこに手を当てて、ふわりと優しく笑う。

 父様と母様は、王城に詰めているらしい。
 母様は、私と同じように魔力熱で倒れてしまった王子2人の看病につきっきりなのだそうだ。


(ああ、ちなみにね。私は放置されていたわけではなかったみたいよ?)


 全く記憶にないけど、私の病状が落ち着いた後に、王子たちが発症したのだそう。
 そのあと、エルネストも……。

 ちなみにエルネストは、現在、王宮…というか、王子たちと一緒にいるらしい。
 発症した直後に風の乙女シルヴェストルによって、王宮へ運び込まれたと、知らせが入ったそうだ。


(セリカの説明によると、魔力熱が流行ったときは、発症者は各地の治療院、もしくは王城へと運び込まれる手筈になっているらしく、まぁ間違いではないのだけどね)


 どうも風の乙女シルヴェストルの独断の行動だったらしく、珍しい!と、ルークも父様もびっくりしてたそうなんだ。

 ……ちなみにカイルザークは魔力熱の症状は一切なく、手薄になった屋敷内を元気いっぱい暴れまわったのだそうだ。
 根負けした家令が、気分転換になればとライブラリへ連れていったところ、大喜びで本を引っ張り出し始め、そのまま籠ってしまったらしい。


(う…羨ましい。私もライブラリ行きたかったのに!)


 今日も、早朝から使用人の住居まで押し掛けて、司書を叩き起こし、食事前からライブラリへと引きずっていってしまったらしい、と呆れたように笑いながら話してくれた。
 食事も司書と一緒にライブラリで済ますくらいに、ライブラリから出てこないみたい。いいなぁ……。


『この状況ではヴィンセント兄様も母様も1週間程度、留守になるかもしれません』


 お寂しいかもしれませんが……と、悲しそうにセリカが説明してくれたけど、たった1週間だ。
 ……ヴィンセント兄様には、帰宅直後でまた泊まりがけのお仕事になってしまって申し訳ないけれど。

 でも、1週間だ。

 魔力熱の流行る期間は短い。
 そのたった1週間という、短期間のうちに、広範囲に流行る。
 猛威が一瞬で国中を駆け巡る。

 そして、進行もほぼ1日程度で悪化のピークを迎える。
 魔力の高い子ほど、致死率が高い。


「さぁ、もう一眠りしたらおかゆをお持ちしますから、今はお休みくださいな」


 そう言うと、そっと姿勢を倒されて、寝かし直される。
 ふんわりと、柔らかな毛布を掛けられて、ぽんぽんと優しく撫でられながら子守唄を歌われると、不思議とすとんと眠りに落ちそうになる。

 まだ…魔力切れから、回復しきっていなかったのかな?

 そんなだるさを感じながら、セリカの時折ふれる手の温かさと、優しい歌声、そばにいてくれているという安心感から、簡単に意識が遠のいていった。
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