私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

392、闘病生活?軟禁生活かも

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 なんか、さりげなくさりげなく、周囲に夜のお散歩を怒られて。
 でも、なんだろう、こうやって心配してくれる家族がいるのって、嬉しいね。
 ……心配かけちゃダメなんだけどさ。

 以前、怒られてるのに、微妙ににやけ顔だった、カイルザークの気持ちが分かった気がする。


「おとひゃま…いひゃい……」

「せめて元気になってから、いや、それでも夜の外出はダメなんだが……」


 頭をゲンコツぐりぐりの刑から、ほっぺをつままれて、ちゃんと喋れない。
 外してほしくて少し涙目になっていると、じーっと見つめている父様と、目が合う。
 いつもより、少しだけ伸びてしまっている前髪が、眉にかかっている。


「……みんな、心配してるんだから、少しはおとなしくしていてくれ」

「はぁい……」


 セシリアわたしの誘拐事件から始まって、教会との対応、これをきっかけにしての反乱、落ち着く間も無く、魔力熱の流行と。
 まぁ、魔力熱の対応に関しては、今回、お手伝いしてくれている精霊の手が多いので、被害は最小で食い止められたらしいけど、それでもやはり犠牲者が出てしまっているようだった。

 そういう話を、ポロリとこぼしていく。

 魔力持ちの子供は、基本的には魔術学園の生徒だから、王都にいるので、フォローは簡単なのだけど、精霊たちがお手伝いしているのは、魔術学園に未就学の子どもたち。
 ……そう、5歳以下の子供たちへの対応だ。

 前世にほんと違って、車はないからね。
 王都へ連れて行けば、適切な治療を無償で受けることができると知っていても、病気の進行が早過ぎて、地方からでは連れて行けない。
 そもそも、そんな小さな子供を連れての長旅の方こそ、子供を消耗させてしまうから……。


水の乙女オンディーヌとセシーとカイの精霊、この4人が手伝ってくれているおかげで、今年は被害がかなり抑えられてるんだ。ま、セシーの精霊は、後半からのお手伝いだったけど」


 ……ルナとフレアの2人は、私が倒れている間は、姿を現さなかったんだものね。
 これはしょうがないね。
 文字通り国内を飛び回って、救急車のように治療院へと救急搬送をしていたらしい。

 そう、近況を話しながら、私は再度ベッドへと寝かされて、頭を撫でられつつ、ぽんぽんと肩をリズミカルに叩かれて……徐々に眠くなっていく。


「次に起きる頃には……良いお話がいくつかできるはずだから、しっかり寝ていてくれ」


 良いお話ってなんだろう?
 聞き返す間も無く、すとんと眠りに落ちてしまった。






 ******






「完全復活だね!セシリア!」


 私のベッドに腰掛けて、とても嬉しそうに満面の笑みで話すカイルザーク。
 あれから1週間が経った。経ってしまった。

 気づけばセグシュ兄様は魔術学園へと帰ってしまっていたし、週の途中からは、王子たちや、国中から搬送されてきていた子供たちの病状も、安定してきたようで、母様もちゃんと帰宅するようにはなっていた。

 ……逆に父様は、忙しいのか、ちょこちょこと姿を現す事はあっても『夜にはちゃんと帰宅してくる』という事がなくて、母様が少し寂しそうにしていた。

 ちなみにエルネストは……帰ってきていない。


(私と同じく、1週間の軟禁……まぁ、王子たちと一緒に軟禁されていたそうだから、楽しかったんじゃないかな?)


 魔力熱の大流行という混乱の間、1人健康体だったカイルザークは放置されるかの如くライブラリにもっていたのだけど。
 なんと司書を過労で倒れさせるというとんでもない事態を発生させて、司書が回復するまではライブラリ立ち入り禁止になってしまっていた。


(そうなると次の標的になるのは……まぁ、私ですよね)


 隙あらば大量の本を抱えて、セシリアわたしの部屋へ侵入し、読書会を始めてしまう。
 その本のチョイスが、私の興味のあるものばかりで。

 寝てなければいけないはずの私も、思わず一緒に読み始めてしまい、私の様子を見にきたセリカに見つかってはつまみ出される……を、繰り返していた。

 今もベッドの上で大きな本を抱えるようにして、読み耽っている。
 ゆらゆらと楽しげに揺れるしっぽを、ぼんやりと見つめつつ思う。


「ねぇ…星詠みのクロウディア様の予言…私のは『死亡を回避しろ』だったのだけど……回避、できたのかな?」

「うーん、セシリアの場合は『この時』って指定がなかったから、まだあったりするんじゃないかな?」


 抱え込んでいる本から視線を離さずに、声だけで返事があった。
 そうなんだよなぁ…クロウディア様からは『死んだらルークが面倒なことになるから、死なないように』としか、言われていない。


「何その顔。思いっきり面倒そうな顔してるね?」


 そこは、不安そうな顔になるんじゃないの?と、ふと本から顔を上げてカイルザークが笑う。


「いや……なんて言うか、公爵とか貴族とかって、面倒だなぁって」

「何を今更……」


 思いっきり、呆れました!という顔で深いため息をつかれてしまったけど、本当に面倒だなって。
 衣食住が保証されているのはありがたいけどさ、命を狙われまくるとか、平民より、治安の悪い世界に生きてませんか?


「僕まで巻き込んでおいて、それはないよねぇ~」

「……あっ。そういえばそうだ!ごめん」

「ごめん、じゃないでしょ……大丈夫。そばにいるから。次こそは、守る」

「守らなくて良いよ。そばにいてくれるだけで、良いの」


 可愛いから。とケモ耳の生えたカイルザークの頭を撫でる。
 撫でられると、すっと目を細めて少し上向きになる嬉しそうな表情が可愛い。
 緩やかにふわりと揺れるしっぽ。
 昔からの癖だもんね。


(私が『一緒にいたい!』と、お願いしたから『公爵家うちで引き取る』と、父様と母様が迎えてくれたんだ。だから、養子だろうがなんだろうが、今はカイルザークも公爵家の子息ということになっている)


 ……カイルザーク自身は、孤児院を探していたようだったけど。


「ねぇ……ライブラリここの書籍を読み漁ってて分かったんだけど、魔法の形式がかなり変質してる。認識の変化…と、でもいうのかな?ルーク、は……正そうとしなかったのかな?」

「カイ……まだルークを呼び慣れないんだね…ふふっ。昔は最初はルークって呼んでたのに」


 こことか、こことか…。と、カイルザークは真剣に話してくれているのだけど、ルークの呼び方が何度も引っかかっていたのが気になっていたので、思わず聞いてしまった。


「……それはっ!本当に最初の頃だけでしょ?ずっと先輩って言ってたし!」


 最初……会ったばかりの頃。そして魔導学園入学くらいまで。
 ある日いきなり『先輩』と呼ばれて、それから疎遠になってしまうその日まで。


「今度は『ルーク先生』だけどね。認識は…多分だけど、そもそも気付いてなかったんじゃないかな?ずっと籠ってたみたいだし」

「思いっきりありそう……使えりゃ良いってところがあったし」


 ぺたん。とカイルザークの耳が後ろに下がる。
 これは呆れてるなぁ。
 私もつられて苦笑いが出てしまったのだけど。
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