私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
405 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

405、表の顔と裏の顔。

しおりを挟む
 


「なぁ、結局のところ教会は何をしてたんだ?」


 徐々に、緊張から回復しつつあるエルネストから、ちょっと声が裏返りつつの質問が聞こえる。
 緊張が強く、見方によってはおびえてるようにすら見えてしまう。


「ん~…まぁ、ありとあらゆる悪事。かな?」

「ユージア…もうちょっとわかりやすく。詳しく・・・説明できないの?」


 ぴくりと、ユージアのポットを持つ手が止まると、ちょっと考えるような素振りそぶりで小さく息を吐くと、ポットをカートの上に戻す。
 エルネストと向かい合わせになる席に座ると、顔を覗き込むようにして、説明を始める。


「ええと、そうだなぁ。教会といえば孤児院や冠婚葬祭、あとは喧嘩の仲裁やら、お悩み相談とか、スラムでの炊き出しとかね。慈善事業って言われる、人に優しいお仕事をしている所の事らしい・・・んだけど」

「らしい…って」

「実際は経営している孤児院の子どもを売り捌くさばく。冠婚葬祭・悩み相談と称して街中の個人情報を握って、それすらも商品にして。スラムの炊き出しで汚れ仕事の斡旋……ほら、慈善事業を悪用し放題でしょう?」

「ああ、悪用しようと思えばそういう使い方もできるのか……」

「まぁ…ね。で、今日の内容としては、主に子供の誘拐とその後の出来事に…ついてのお話かなぁ」


 最後の方の言葉が少し掠れる。

 子どもたちのその後の出来事…考えたくもないけど、そのほとんどが死亡してるのだそうだ。
 そのことについてはユージアも以前から話してたし『籠』みたいなものが存在してる時点で……。

 事実『監獄』と呼ばれていた、施設の部屋から…たくさんの子供とみられる遺体が見つかっている。

 遺体を見かけた…そして回収していったルナもヘルハウンドも、絶対に話そうとはしないけど『たくさん』と、表現していた。


(数え切れないほどの、数え切れないからの『たくさん』だよ……1人だって許しちゃいけないのに)


 今回は、色々と予想外な出来事が起きたために、私たちは無事だったけど。
 一歩間違えれば私たちも、その中の1人になっていたかもしれないんだ。

 ぞくりと冷たいものが背を走る。

 ……あのタイミングで、転生に気づけて良かった。


3歳児ちびっこで何もできないけど、それでもみんなの未来を変えることができたのであれば、それで良い)


 そう、思わずにはいられない説明が、ユージアの説明と重なるようにして、下階の音を拾うスピーカーから聞こえてくる。

 待ちくたびれるほどに長く、こと細やかな説明はきっと、ルーク渾身の作だろう。
 裁判官によって抑揚無く読み上げられる、本来なら小難しくて眠くなってしまう、意味不明の言葉の羅列られつになりがちな説明が、まるで吟遊詩人の冒険譚でも聞いているように、するすると頭に入ってくる。

 そして……その丁寧な説明は、目を覆いたくなるような内容すら、容易に、そして鮮明に、頭に浮かんでしまう。
 まるで、その場に居合わせてしまったかのように。

 現に、一般の傍聴席……裁判が開始した直後は、たくさんの街の人たちでごった返していて、口々に裁判官や騎士団へと向かって罵声が浴びせかけられていたんだけど、開始から1時間程度で、女性も男性も口元を押さえて気持ち悪そうに、嘔吐えづきながら、どんどん退場していく。


(でもね、街の人たちが怒っていたのもわかるんだ。教会という今まで自分たちの信仰してきた神様が、いきなり邪悪!という判断で閉鎖・解散させられてしまったようにしか見えないんだもの)


 それがどうだろう『それはでっち上げた罪だ!』『教会を陥れようとしている!』と叫んでいた街の人たちまでもが、信仰心すら無くしてしまうほどに、弁明の余地すら見出せないまでに、完璧な証拠と説明をあげていく。







 ******






「ほら、僕は暮らしていた里が襲われて、里ごと誘拐されたし。エルは…お世話になるはずだった乳児院から、売り飛ばされちゃった☆」


 小さく首を傾げながら、にこりとおどけて見せる。
 明るいエメラルドの髪がふわりと揺れる。

 大人たちの説明を聞きながら、ユージアの説明を聞いてしまうと……まぁ的は射てるんだ。
 射てるんだけど……なんだかとっても、軽い。
 わざと言ってる部分もあるんだろうけど、果てしなく軽い。


「なぁ、子供の親たちは…っ?…親は来てないのか?!」

「ん~うちの変態親父なら来てるけど。他の親は……来てないかな。そもそも売っちゃった子だから、それはもう、親じゃないよね?」

「……っ!」


 焦るように階下の席を見渡し、何かを探し始めるエルネストに、ユージアは冷たく答える。


「ユージア…言い方。親はどんなことがあっても親だよ……。ただ、その親が消息不明だったり、そもそも存在していないことが多いんだ」

「存在…していない?そんなっ!」

「帳簿が……でたらめなんだ。…それに『売った』って事は『生活に困って』という理由がほとんどだからさ……」


 ユージアが言いにくそうに、説明をしていく。
 帳簿って、裏帳簿とかいうやつだよね?
 取引のミスがないように帳簿きろくは必要だけど、公には出せない帳簿きろく


「ユージアの言う通りだ。それと。なんとか消息を探っても、生存していない事が多い」

「……お、俺の親はっ…!」

「エルの場合は…ガレット公爵家が、身元おやになってる。カイもだけど」

「いや…っ!お…僕の親は……」

「ごめん。エルネスト、その話もね…あとで話されると思うから。今は、待とう?」


 ゼンナーシュタットはエルネストの頭をポンポンと撫でると、優しく諭していく。
 その言葉に、ゆっくりと顔を上げる。


「ユージアは、知ってるのか?」

「…うん。調べるの、手伝った」

「そっか……ここで聞けなくても…あとで教えてもらえるか?」

「必ず。僕よりは親父か、エルの今の父様と母様に教えてもらった方が、詳しくわかると思うよ」


 ユージアの口元が、何故かむずむずとしているのが見えて…本当は話したくて仕方がないんだろうな!というのは理解した。
 でも、我慢してる感じがわかって、ちょっと感心する。


「先に、言っておくね。エルネスト。ユージアも、キミの今の父様母様も、仕事上、キミの両親のことを知ってしまったけど、キミに話さなかったのは、守秘義務というのがあるからなんだ」


 ゼンナーシュタットが、優しげな笑みを浮かべながら、焼き菓子が盛られたトレイを取り替えていく。
 ……なんだかんだ言いつつ、食べるの早いよっ!

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...