410 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
410、子供のする事だから。
しおりを挟むカイルザークに『めっ!』と怒られるシュトレイユ王子。
なんだろう、なんだかとてもその光景が新鮮で、思わずニヤけてしまう。
「だめ…?」
「ダメっ!……それは小さな子だけがやる事だし、その時だけ許される事だから、これからは…やめたほうがいい」
上目遣いになって、カイルザークにおねだりでもするように問いかけるシュトレイユ王子の姿も可愛いわけだけど、残念ながら…すげもなく断られている。
私なら『いいよ、いいよ~』って、思わず言ってしまいそうになるくらい、可愛い。
ああ、そうか。
カイルザークが後輩指導のようなことをしている姿が、珍しいんだ。
優しい子だから、世話を焼くことはあったけど、弟のような存在がいるのが珍しかったんだ!
現在、裁判自体は、お昼休憩に入っている。
途中に休憩を挟むとか、こういう事はそうそうないらしいんだけど、今回は一つ一つがどうにも長すぎて。
ただ、長いからといって一つ一つ区切るにしても、その前後の情報が足らなくなってしまうこともあり、これでも細かく区切った方なのだと言う話を耳にした。
もうしばらくしたら、再開されるであろうこの場に備えて、階下ではスタッフが入れ替わり立ち代わり、書類や食品が運び込まれ…と、忙しく動き回っている。
「レイもカイも来ちゃったけど…実はまだ、お話はそこまで進んでないんだよねぇ」
困った顔のまま、愛想笑いのような笑みを浮かべるユージア。
「あれっ?そうなの?」
「うん」
そうなんだ。
シュトレイユ王子もカイルザークびっくりした顔になってるけど、午前中ですべて終わるはずだった内容は、まだ半分も終わっていなくて。
この調子で進んでいくのなら、今日の終了予定時間は夕方だと説明を受けていたのだけど、これは確実に…夜にずれ込む。
「まぁ……セシリアの冒険譚が聞けそうだから、僕は問題ないけどね」
「僕も…カイと、みんなと一緒にいたい!」
「……あんまり良いお話ではないと思うけどねぇ…」
「全くだ」
ユージアのため息混じりの呟きに、同意をするゼンナーシュタット。
むしろ、教育上に問題があるような気がするから、この話が終わるまでは退席していて欲しいとすら思う。
休憩後、始まるのは……私たちが『籠』に運び込まれるところからだ。
その場で起こったのは、『聖女フィア』による、一方的に攻撃を逃げ惑う、一方的な『戦闘』だったけど、それだけなら良かったんだけど。
…まぁ良くは無いか。
でも、その『籠』の中身。
そしてその仕様用途・犠牲者の数…そういったところが、きっと事細かに説明されていくのだと思う。
(私としては今回のこの話が1番、凄惨な出来事だと思っていたの)
でもね…一般傍聴席の、明らかに教会擁護の人々がこの話が始まる前の、他の悪い事を聞いただけで、そこに座っていられなくなる程の狂気・気味の悪さに、ほとんどの人たちが退場してしまっている。
今、傍聴席に座っている人たちは、席に空きができたために途中から入場してきた人達だ。
最初の人たち同様『濡れ衣を着せられた、教会を助けるんだ!』という感じの、意気込みが感じられる人たちばかりに見える。
また同じように途中退場をしていくのかな…と、ぼんやりと眺める。
それくらいインパクトのあるお話を、できればシュトレイユ王子には聞かせたくない。というか子供には、聞かせたくない。
そして…もう1人、気になるのは…。
「セシリア、大丈夫?」
周囲を見渡しながらぼんやりと食事をする私を、心配そうに覗き込むユージア、キミだよキミ。
私なんかより、よほど心配な子。
他のみんなは食事を前にして、この場に似つかわしくないほどに、にこにこと楽しそうにしているのに、ユージアだけは…口調は相変わらずだけど、どんどん笑顔が薄く、硬くなっていってる。
どう見たってユージア自身が1番、大丈夫な状態から程遠い位置にいると思う。
「大丈夫。ユージアも、大丈夫……?」
「……うーん。正直わかんない。許せないとは思うんだ。罪も償わせたい。仕返しだってしたい。そのために調査も協力したし、思い出したくもない話だって覚えている分は全て、親父に話した。……でも」
いつもなら、まっすぐに見つめ返してくる、明るい金色の瞳。
今はその瞳の色すら暗く見えるほどに、伏せ目がちになって、首を小さく横に振ると、ぽつりぽつりと囁くように言葉を紡いでいく。
どんな時でも、いくらでも楽しげに、さらさらと淀みなく喋るユージアとは真逆な…そう…『籠』から助け出された時も、こんな雰囲気だったなと気づく。
「これから始まる話は聞きたくない。とも…思う。ここに、いたくないとも思う。結果を…知りたくないのかな?どうなんだろう?……セシリアの魔法みたいに、全部、ドーンって無くなっちゃえば良いのに」
「ドーンて…」
最後は本当に小さく呟いていたけど、予想外な言葉に、思わず笑ってしまった。
ずいぶんと、幼い発言に聞こえる。
見た目で言えば、13歳程度の姿をとっているから、余計にそう見えてしまうのかもしれないけど、精神年齢は3歳程度だ。
(まぁ、今までの微妙な経験や『隷属の首輪』装着の間に覚えた語彙があるから、3歳児相当だ!と完全に言い切ろうとすると、今度は逆に大人びて見えてしまうという、矛盾が出てくるのだけどね)
和気藹々と進む、楽しげな食事に水をさしたくないのか、話を聞かれたくないのか…そっと席を立つと、ソファーの一番端に座る私の隣までくると、その場で蹲ってしまった。
なんとなくだけど、泣いてそうな気がして、ユージアの前にしゃがみ込んで、様子を見てみるけど、表情すら窺えないし、しょうがない。
思わず、小さなため息が出てしまったわけだけど、立ち上がるとユージアの頭をぽんぽんと宥めるように、撫でる事にした。
0
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました
朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。
魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。
でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる