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はじまりはじまり。小さな冒険?
412、悪夢再び。繰り返させないけどね。
しおりを挟む「最近の教育方針は随分とまぁ…非人道的なんだね。びっくりだよ」
ぽつりと呟かれたカイルザークの言葉すら、レオンハルト王子には届いていないようだった。
レオンハルト王子は、レイの姿をしているゼンナーシュタットの手を掴むと、無理矢理引き寄せるように引っ張る……が、ゼンナーシュタットはびくともしない。
「おい…気づいてるなら外してやれ…カイ」
「えぇ…僕なの?!いきなり飛びついたら、後ろの護衛役の人に切られちゃうんじゃないかなっ!……ほらっ!ゼンも笑ってないで何とか…っ。してっ!」
反論しつつも、瞬時にレオンハルト王子に飛びかかる。
それに合わせるように、ゼンナーシュタットが引っ張られる腕を、さっと払う。
ぐらりとバランスが崩れたところで、カイルザークが足を払い、尻餅をつくように押し倒して、抵抗されないように上から座り込む。
最初は、子供同士の馴れ合いかと静観していた護衛の騎士が、カイルザークの一方的な攻撃行為を見かねて、レオンハルト王子から引き剥がそうと手を伸ばしてくる。
「しょうがないな、お前らは…眠れ」
ゼンナーシュタットが『眠れ』と言った途端に、護衛として後ろに控えていた大人たちが、バタバタと倒れ始める。
「僕が手を出すと…謹慎が伸びるんだよ……くそっ」
「それは…御愁傷様っ!って!ちょっ…エル助けてっ!」
ちなみに私とシュトレイユ王子は、現在、ユージアの小脇に抱えられて、部屋の隅にいる。
(お腹の音大笑いされたあと、黙々とご飯…でもさ、食事中に邪魔されたら、お腹なるよね?!誰だって!)
なので、食事をしながら裁判の様子に耳を傾けていようかと思っていた時に、レオンハルト王子がちょうど現れたのだった。
その直後に何かを察したのか、ユージアは私とシュトレイユ王子をソファーから引っこ抜くように抱え上げると、両の小脇に抱えて、部屋の端へ移動した。
おかげで、私は肉あんをパン生地で包み込んで焼いた、惣菜パンのような感じのちょっと硬めのパンを持ったまま、ユージアの小脇に抱え込まれている。
……ま、食べちゃうけどね。
お行儀とか考えてたら、このメンバーの場合、一瞬で自分の分がなくなることに気づいたから。
お腹鳴らしてるより良いと思うんだ。
シュトレイユ王子も同じく、片手にパンを持ったまま固まってる。
「…っは?レオン助けたら良い?」
「違う違う、レオンの頭だっ。頭を押さえてっ!」
レオンハルト王子の上に跨って押さえつける格好のまま、必死にしがみつくカイルザークと、そこに近づき『どうすれば?』と首を傾げてるエルネスト。
3歳のカイルザークと4歳レオンハルト王子の体格差。
個人差もあるけど、この年頃の1年の差ってとても大きいんだよね。
身長で言えば10センチ以上違ってしまう場合がある。
カイルザークは3歳でも小柄な方だし、さらに。
そんな状況だから、なんとか体重をかけて押さえていても、抵抗されると辛そうだ。
「エル。レオンの首についてる、飾りを壊すんだ」
ゼンナーシュタットの声に、エルネストはハッと我に返ると、レオンハルト王子の頭を押さえるようにして、首飾りへと手を伸ばして…引っ張ろうとした瞬間、バシン!と火花が散った。
弾かれるように尻餅をつく、エルネスト。
「っってえっ!!外れないよ?!」
「ゼンっ、護符付きだ。エルにはまだ…っ」
ふと、私とシュトレイユ王子を抱えるユージアの腕に力が入る。
視界が少し下がる。
廊下に人の気配を感じて、警戒してる感じだ。
「……なるほど。騒がしいと思えば。エル、そのまま押さえてるんだ」
バルコニー席の入り口から、ひょいと顔を出したのは父様だった。
折り重なるように倒れている、レオンハルト王子の護衛の人たちを軽く飛び越えると、エルネストとカイルザークの間に手を伸ばし入れる。
少しの火花と、衝撃音が聞こえたあと、ジタバタと抵抗していたレオンハルト王子の動きが止まり、ぐったりとおとなしくなった。
「レオンっ!レオン!!大丈夫かっ」
「兄さま……っ!兄さまっ!」
シュトレイユ王子がユージアの腕の中で、降ろして欲しくて、もがいている。
父様もいるし、もう大丈夫そうだし『降ろしてあげたら?』と言おうとユージアを見上げると、いまだに警戒の色を解いていない。
「嘘が…使えて、よかっ…た」
「レオンは…すごいな。首輪に抵抗してたのか。頑張ったな」
父様の落ち着き払った声が響いた。
レオンハルト王子が、レイの姿をしているゼンナーシュタットへと向かって行ったのは、わざとだったようで。
王子たち2人の、内緒の作戦だったらしい。
本当のことがすぐに言えない時に、当たり前のことをわざと間違えて発言する。
今回は、ルークのことをハンスと呼んだことと、シュトレイユ王子を巻き込まないために、わざとゼンナーシュタットをレイと呼ぶように、思い込むようにしていたのだそうだ。
うん、4歳でそこまで考えられるとは、凄いな!と思うのと同時に、小さくても結構いろんなことを考えてるんだなぁと、前世で幼い息子や孫を見ていて思っていたことが蘇る。
懐かしく、そして子供たちの可愛さに再度、にやにやしそうになっていると、じりじりと視界が後退していく。
「カイ…こっちも、助けて欲しいな?」
ユージアの声に正面を見ると、一人の使用人が真っ直ぐこちらへ向かってきていた。
手に黒いレースに金の華奢なチェーンを重ね、赤と青の小さな宝石がきらりと…いや、あれは魔石に見える。
そんなアクセサリーを、ユージアの首へ向かって手を伸ばす様にして近づいてきている。
じりじりと後退していたのだけど、足が何かに当たる感覚がして…壁だよね。
これ以上逃げ道がないことに気づく。
「おーい。助けてって…ばっ!……もうっ」
メイドの手が届く寸前のところで、ぐんと沈み込んで避けると、そのまま身長差を利用して、脇を駆け抜ける。
そのまま父様のところへ…と行きたいのだけど、他にも人影が見えて、近づけない。
父様がレオンハルト王子を抱えて、立ち上がろうとしているが、同じように、数人が近づいていくのも見えた。
「……カイ、エル。宰相に掴まって。ユージア、5を数えるうちに宰相を掴んで目を瞑って……1」
シュトレイユ王子の独り言のようにも聞こえる、小さな囁き。
しかし獣人二人組にはしっかり聞こえたようで、父様のマントをしっかり掴んでいる。
「……2、3……」
「待って待って~!…っと!」
ユージア身をかがめると、ゆらゆらと歩き迫ってくる、スタッフたちを器用に躱しながら、父様へと突進していく。
「つか…んだっ!」
「4…5……っ!」
シュトレイユ王子の、可愛らしい声でのカウントダウンの終了と同時に、視界が真っ白になる。
目が痛くなるほどの、強い光の爆発が幾重にも幾重にも足元で起きていく。
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