413 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
413、避難した先に。
しおりを挟む真っ白の世界から、徐々に視界が復活していく。
「あ、ゼン忘れた…」
「いるよっ!」
シュトレイユ王子の呟きと、焦ったようなゼンナーシュタットの返事とで、ちょっと笑ってしまったのだけど。
相変わらず私とシュトレイユ王子は、ユージアの小脇に抱えられたままなんだけど、すぐそばに父様もいるし、恐怖心はなかった。
「ここは…ああ。良い判断だ、レイ」
「そっか『避難所』か!」
父様とユージアの声に、ほっとする。
ここなら…入ってこれる人たちが限られるから、あの場にいるよりもずっと安全だ。
あまりにも目眩しに使われた光が強すぎて、いまだに視界が緑色というか白い感じでよく見えないのだけど、ここは室内のようで。
ぼんやりと見え始める景色には、大きな窓がたくさん。
窓の外には薔薇が咲き乱れている。
ユージアも安全が確認できたのか、小脇で降ろして欲しくて、じたばたしていたシュトレイユ王子をそっと降ろす。
「兄さま…兄さまは…っ?」
「無事だよ。呪いのようなモノと頑張って戦ってたから、少し疲れているだけだ。寝かせて休ませてあげよう」
「よかった…です」
父様がにこりと笑みを浮かべると、ベッドへとレオンハルト王子を運んでいく。
声も聞こえていたので、意識はあるみたいだった。
レオンハルト王子をベッドに寝かせ、シュトレイユ王子に任せると、父様はこちらに戻ってきた。手には何かが握られている。
「ユージア、これは見たことは、あるかい?今までのものより、かなり完成度の低いもののようだが……」
「無い、ですね……」
小さく首を振ると、ぎゅっと私を抱える腕に力が入る。
同時に、ユージアの抱っこから…逃げそこなったことに気づいたわけだけど。
……まぁいいかな。この状態がユージアの精神安定剤なのであれば。
(本当は裁判の話以外では、完全に『隷属の首輪』そして、教会関係の話からユージアを遠ざけたい。早く終わらせてしまいたい。もちろん罪を償わせるのは絶対だけど)
そのためとはいえ…古傷を抉るようなことを、繰り返すことはしたくない。
古傷といえば……私の魔法で治ってなかった、あの古傷も、いつか治してあげたい。
父様はユージアの頭をぽんぽんと軽く撫でると、ゼンナーシュタットのそばに行き、同じように『監獄』で見かけなかったか?と確認していた。
私とゼンナーシュタットが『監獄』で見た、見つけた『隷属の首輪』は、ユージアの首についていたものだけだったと思うのだけど、他にも落ちてたのかな?
『みんな!おかえりなさい!』
キッチンから、底抜けに明るいフレアの声とともに、ひょこりと金の髪の頭がこちらを覗き込んでいた。
フレアはカートにお茶とお菓子を乗せて進みつつ、軽く手をあげると、以前『避難所』を使った時のような配置でソファーセットが姿を現した。
そちらにかけるようにと、みんなを促しつつ、お茶の準備を始める。
『ルナが状況の確認と、みんなの無事を伝えに行ってるから…安心してね』
「動きが早いね…」
『そりゃもちろん!色々な事態に備えておくのが、デキる大人なんでしょう?』
「何をどう教わってるんだか……」
ジト目になりつつあるゼンナーシュタットと、フレアの会話に少し和みつつ。
風の乙女に本当に何を教わってるのかと、ちょっと不安になる。
(……風の乙女はルークの契約精霊だからさ…変なことは教えないと思ってたのだけど)
どうも主人と違って、とても活発というか…不思議な感性の持ち主のようなので、最近少し不安になってる。
『冗談はともかくとして…今日の司法の建物さ…精霊たちは立ち入り禁止になってるんだよね。まぁ無理して侵入する必要も無いんだけどさ』
「禁止なの…ですか?」
「ああ、罪人の出入りもあるから、基本的には精霊や妖精等の出入りができないようになっている。魔法もエリアによっては使用不可になってるね」
父様はエルネストの反応に『悪い人は、一筋縄ではいかないような者も多くてね』と、頷きながら答える。
裁判の最中こそ、脱走のチャンスだ!というのも、ままあることらしく。
そのきっかけになるような面倒ごとが起きないように、魔法を封じられているのだそうだ。
その延長上で、妖精や精霊の立ち入りも禁じられている。
「あれ……?僕たちは使えてたよね?」
「そうだな…罪人が立ち入るエリアは使用不可だが、基本的には、あの場所を含め、司法関係の施設全体が魔力半減のエリアになっている。」
ふと…裁判が始まる前の、シュトレイユ王子の魔法で、準備中の会場が騒然となった理由が分かってしまった気がした。
綺麗とか、素敵、という感情ももちろんあったのだとは思う。
ただ、それ以上に、魔力が半減になっているあの会場で、小さな子供がまともに魔法を使えてしまった事にも、反応したのではないか?
そう思うと、必要以上に目立ってしまったのでは?と背筋が寒くなる。
……教会関係者は、魔力持ちの、しかも光の属性持ちが欲しい。
そんな人たちに、わざわざ光の魔法を披露してしまったのではないか?
「ま、それでも今回のように魔道具を使われてしまうと、防ぎきれない場合もあるんだが……」
頭をわしわしと掻きながら『対策を考えないといけないんだけどね』と、ポツポツと説明してくれている父様を見上げつつ。
あの場で魔法をご披露してしまったからこそ、今回の騒動が起きてしまったのでは?とも思えてきてしまうと、あれもこれもと心配事が止まらなくなっていく。
『……アルフレド様、会場の確保、完了したようです…戻られますか?』
「ああ、頼む。…みんなは迎えが来るまで、ここにいるように。いいね?」
フレアに話しかけられて、一瞬考え込むような仕草をしたあと『何か気づいたことがあったら教えてくれ』というと、テーブルにチェーンのちぎれたアクセサリーを置いて、父様は『避難所』を後にした。
少しの間、席にいた全員がそのアクセサリーを注目したまま、沈黙。
あまりの雰囲気の悪さに、レオンハルト王子の休むベッドへと視線を向けると、心配そうにそばにいたはずのシュトレイユ王子が、椅子に座ってベッドに突っ伏すようにして、眠ってしまっていた。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる