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はじまりはじまり。小さな冒険?
414、粗悪品だけど…首輪でした。
しおりを挟むユージアに抱えられたままなので、シュトレイユ王子が寝てしまったことを教えると、私を降ろしてベッドの方へ行ってくれた。
ただ、レオンハルト王子の横に寝かせようと持ち上げた瞬間に、目が覚めてしまったようで、眠そうに目をこすりつつ、ユージアと一緒にこちらへ戻ってきてしまった。
……寝てても良いのにね。
「なぁ…さっきの。首飾りは、なんだったんだ?」
新たに席に着いたシュトレイユ王子のために、水を入れたコップを用意していたユージアの動きが、エルネストの声にぴくりと止まる。
「これは粗悪品だけど『隷属の首輪』……名前は、聞いたことあるでしょう?」
「……あ。すまん。」
「いいよ。気にしないで?……あえて言うのなら、今回のやつの強烈版が、僕の首についてたんだよ」
ここに、と示すように首に触れると、笑いかけて視線を伏せる。
無理しなくて良いのにね。
「あっ…セシリア、触っちゃダメだろ」
「大丈夫。もう…それは魔道具でもなんでもない。ただの壊れたアクセサリーだから」
そばでよく見てみたくて『隷属の首輪』であった物を手に取ると、エルネストに怒られてしまった。
まぁ、得体の知れない物だから、触っただけで操られそうなイメージではあるよね。
ゼンナーシュタットが、大丈夫だよって教えてくれてたけど。
……そういやこれも、ゼンナーシュタットには、美味しそうに見えるんだろうか?
「それは不味そうだから要らない」
「あ、はい…ごめんなしゃい」
うっかり目が合うと、私はまだ何も言ってないのに、拒否されてしまった。
食べさせるつもりは…多分、なかったのに!
憮然としていると、隣に座ったユージアから、くすくすと笑い声が聞こえた。
「ヒヨコ食べようとしたり、金属食べようとしたりとか…悪食だなぁ。ゼンは。あはははっ」
「……あのヒヨコは、魔力の塊だったじゃないか。金属は…そうだな、次は助けてやらん」
「あっ…!また助けてね?!次があったら困るけどっ!」
「さて、どうしようかな~」
次があったら…絶対に無しで!無しでお願いします!と、思いつつ…。
やっぱり笑ってる顔がいいな。
2人のじゃれ合いに、つられて笑みがこぼれる。
さて、手のひらの上の『隷属の首輪』は…ユージアの時とは違って、ベースは布…レースでできていた。
幅の広目のレースで、蝋や樹脂を染みさせたように、硬く弾力のある素材になっている。
そのレースの網目から華奢なゴールドのチェーンが幾重にも垂れ下がり揺れる。
ドレス姿の女性の首に、チョーカーとして存在していても全く違和感のない、綺麗めのデザインとなっていた。
その中にとても小さな魔石が3個つけられていた跡があって、赤いのを中心に1個、その両隣に青いのが2個…多分、赤い方が『護符』と言われる効果を持った、魔石だったのだと思う。
青い方は、赤い魔石より小さいのだけど、2個ついているからね、容量的には赤い魔石より少し多いと思う。
それであれば、多少魔石に知識がある人間なら、中心の赤い魔石は一見して『護符』に見えるし、お守りとして身につけてしまうかも知れない。
「強烈って…レオンについてたのは魔道具でユージアのは古代の魔道具っていう、分類なんでしょう?」
ため息まじりに、カイルザークが紅茶のカップを置く。
気づけば、窓の外の風景はオレンジ色の日差しになり、夕日まではっきり見える。
ここまで陽が傾くと、日没まではあっという間だ。
そんな夕日の中、1人だけ今にも泣き出しそうに、アクアマリンの宝石のような瞳を潤ませているシュトレイユ王子。
心細いんだろうな……。
「ま、そうなるね。どちらにしろ、つけられちゃったら思考を操ろうとするから、それに抵抗してたレオンは凄い…!」
「兄さまは強い……?」
「そうだね。頑張ってた。強いよ」
ユージアにレオンハルト王子が褒められて、途端にぱっと大輪の花が開くように笑顔になるシュトレイユ王子。
褒められたのは兄であるレオンハルト王子なのに、自分の事のように喜ぶとか…本当にお兄ちゃん大好きなんだなと、思わず和んでしまう。
「レイも凄いんだぞ?呪いに打ち勝っただろう?」
「すごい?」
「ああ。すごい」
「えへへっ…すごい?どうしよう」
ユージアに続き、ゼンナーシュタットに今度はシュトレイユ王子自身が褒められて、一瞬にして赤らめてしまった頬に両手を当てて、目をきらきらとさせている。
……素直に照れてて、可愛すぎる。
思わず見惚れてしまったところで『ちょっとごめん』と、おかわりの紅茶とお菓子を乗せたカートをテーブルの傍へつけると、フレアが小さく礼をする。
『……会話中悪いんだけど、そろそろ僕は所用で出かけなくちゃいけないから。あとはルナが来るから、よろしくね。それと…カイ。ライトはまだ勉強中だから、戻るまでもう少しかかるみたいだよ』
「あ…急がないから。ライトは…ええと、しっかりとお願いします」
『わかった。伝えておくよ。じゃあ、またね』
フレアはカイルザークへと向けて、意味ありげにニヤリと悪戯っぽく笑んで軽く礼をしたあと、すっと姿を消してしまった。
ライト…可愛らしい光の精霊だったんだけどなぁ。
やっぱりカイルザークは、ぐいぐい来る感じの女の子は苦手なんだね。
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