私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

419、野営っぽい事をしよう。

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『レイ、少し落ち着いて?エルが困ってるよ……ふふっ。冒険者って言われる人たちはね、食料をたくさん持ち歩けないからね。その場で調達って事がよくあるんだけど、そんなにいつもご馳走が食べれるわけじゃないんだよ?』

「まぁ…焼くだけが基本だったな」

「味付けは?」

「無い。……塩があれば良い方かな?」

「ええっ?!」


 ルナのフォローとエルネストの説明に、心の底から想定外だったようで、目を見開いて固まるシュトレイユ王子。
 本当にころころと変わる表情が可愛らしい。


「せめて……ハーブは?」

「ありません」

「…スープは?」

「水すら、ない時がある」


 エルネストの説明に『それはちょっとワイルドすぎるだろう…』と思ったのだけど、実際、水の持ち歩きなんて、水筒程度だから。
 長丁場を想定した場合でも、水筒をもう一つ追加するくらいだった。
 それ以上はね、効率が悪いんだ。

 まぁ時と場合による…と、いってしまえばそれまでだけど、大所帯ではない場合は基本、そんなものだ。


(水は大事だけど、重いからね。その分進行が遅くなると、余計に日数がかかれば食料が必要になる、それに合わせて水も、もっと欲しくなる…ってほら、際限がないでしょう?)


 商隊のように、最初から馬も荷馬車も大量で、それに見合う護衛も雇って…と、大所帯が確定であれば、馬も荷馬車もあるし、余裕を持って乗せている場合も、ある。


(まぁ、荷馬車は商品満載だから、基本はその水だって、積まれていたとしても『商品』だってことを忘れてはいけないのですよ…)


 そう考えると、本当にメアリローサこの国の街道整備、そして治安の良さはありがたい。
 街道に一定距離ごとに設置されている野営広場まで辿りつければ、水場が必ずあるんだもの。
 火を起こすための薪だって、集める手間もなく、無償で使えるようになっている。
 これは本当にありがたい事なんだよ。


『ん~…流石に試してみようか?ってことは難しいからなぁ。ルーク様の授業で、野営の仕方を教わってみたら良いんじゃないかな?それなら、きっとお外でご飯を…自分で作るんじゃないかな?』


 ルナがちらりとウッドデッキの向こう、空を見上げている。


『まぁとりあえず、野営っぽいご飯にするなら…ダッシュで追加の食材を調達して来なきゃだから、戻ったらお手伝いしてくれるかい?』

「お手伝い?何をするの?」


 不思議そうにルナを見上げるシュトレイユ王子の頭を優しく撫でると、小さく笑みを浮かべる。


『野営の時は、みんなでご飯を作るんだよ。だから、ちゃんとお手伝い。お願いね?』


 シュトレイユ王子が『もちろん!』とすごい勢いで、頷いた。

 その視界の奥、カイルザークとエルネストは『野営っぽい食事』と聞いた途端に、なんとも微妙な表情になっていて、それを見て、ユージアがけらけらと笑い転げている。
 ……まぁ、食べたことがある身としては、そうなるよね。

 貴族のご飯と、一般的な野営のご飯。
 確実に貴族のご飯の方が美味しいもの。

 ルナが『調達に行ってくるから、良い子にしててね?』と悪戯っぽく笑って、姿を消した。





 ******






 感覚として、30分くらいかな?
 もう、楽しみでしょうがないシュトレイユ王子が、キッチンの周囲をうろうろとして、ユージアに注意されたり、エルネストとカイルザークが『野営っぽい食事』のメニューについて、戦々恐々と話していたり。


(……って、2人の話す野営の食事の内容が、あまりにも質素すぎて、聞いていてこっちも恐ろしくなってきたんだけど!)


 よくよく考えたら、この2人……獣人だったわ。

 獣人の里の生活は質素だと聞いたけど、狩りでも獲物を追いかけて遠方まで軽く移動するらしく、カイルザークやエルネストのような小さな子を連れていても、野営が当たり前で、その時の食事が子供心にトラウマレベルで質素というのは…ある意味、すごいよね。


(こんな小さな子、特に遠方に移動というのが前提であれば、足手まといなだけだから、そもそも連れて行くという判断が、私にはできないと思う……何かあったら、怖いし)


 そう思ったのだけど、獣人では5歳になると狩りの戦力に数えられるのだそうで。
 それであれば1つ年下の4歳から、練習も兼ねて連れて歩くと言うのも、よくあることのようだった。
 獣人ってすごいね……。


 そうやって呆れとも感心ともつかない話を聞いているうちに、ルナがそこそこ大きな袋を抱えて帰ってくると、早々にキッチンへとこもってしまった。

 そんなルナの背を追うようにして、きらきらと期待に瞳を輝かせてついて行くシュトレイユ王子が、どうにも親鳥の後を必死についていく、雛のように見えて可愛らしかったのだけど。

 少しすると『わあっ!』とか『何それっ!?』と悲鳴じみた驚きの声がキッチンから聞こえてくるようになって、いよいよエルネストとカイルザークの顔色が沈んでいった。

 そうなってくると流石に心配になったのか、ユージアが手伝いをしようとキッチンのあるカウンターを覗き込もうとすると『じゃあお皿を並べておいて!』と大量のお皿やら調味料の入れてあるバットを押し付けられて、なんとも言えない顔になっていたりと、そんな風景をぼんやり見つめていた。


『みんなも手伝って~!』とルナの声に、カウンターに近づくと、山と盛られた食材の他に、串刺しにされた食材と…ん?なんか、バーベキューっぽいな?


『そこの獣人たちは、なんで青い顔してるのさ?ちゃんと美味しく食べれるから、しっかり手伝って?』


 カウンターに続々と並べられていく大皿を受け取っては、ウッドデッキへと運んでいく。
 完全に日没を迎え、満天の星と屋根の終わり、軒先を縁取るように設置され、ゆらゆらと風に揺れる小さな魔石ランプのオレンジ色の優しい灯と。


(そうね…野営というよりは前世にほんでいうバーベキューとかお家キャンプ的な雰囲気ばっちりだわ)


 ウッドデッキには、木製の立派…とはちょっと言いにくいかな?
 シンプルな、そしてやたらと雰囲気のある1枚板のテーブルに、丸太で作った椅子。
 中央にはいつの間にやら、囲炉裏のようにウッドデッキをくり抜いたようになっていて、煉瓦レンガ造りのバーベキューコンロが設置されていた。

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