私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
421 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

421、せっかくだから、楽しく、美味しく。

しおりを挟む
 


「しかし、中々に変わった趣向だね。こういう賑やかなところも、気になるお年頃なのかな…」

「ごめんなさい…」

「野営が…どんなものか知りたくて。でも、僕が思っていたものと、全く違うみたいで…」

「あぁ……セシリアも一度だけ野営、してたもんなぁ。レイも気になったのか」


 私が謝っている背後から、シュトレイユ王子の声。


「はい。エルもカイも……ユージアも野営をしたことがあるって。僕だけが知らなくて……」

「それでこうなったのか!まぁこれは、野営というよりは屋外での炊き出しのようだが」


 そう言うと、食材が置かれているテーブルに向かって歩き出す。
 そのテーブルには、野菜が切り分けられたものや、お肉、魚等が串に刺してあるもの、そして、お肉は塊のまま置かれているものもあって『これは美味しそうだな…』と、覗き込みつつ呟く声が聞こえていた。


「気にしなくて良いよ。怒りにきたわけじゃないんだ。それより、私たちもまだ、ごはんを食べていないんだ。一緒に食べていいかい?」


 父様の言葉に、シュトレイユ王子はほっとしたのか、途端に瞳をきらきらと輝かせて、力強く笑うと、手に持っていたお皿を、差し出していた。


「はいどうぞ!これ!僕が焼きました!」

「王子の初料理!…だよなぁ。夫妻にも声をかければよかった」


 父様は一瞬目を見開くと、シュトレイユ王子から差し出されたお皿を受け取り、小さく息を吐くと、残念そうに呟いていた。

 我が子の『初めて』これは、親にとって一大イベントだからね!
 どんな些細な事でも良いの。
 失敗したって良いの。
 初めての事に、一生懸命取り組んでいるその姿に感動しちゃう。


(とにかく、初めてのことにワクワクしながら頑張っている我が子を、ハラハラしながら見守る事!……心臓に良くないんだけどさ、でも、幸せ)


 これが実は、とても楽しい。成長を実感できて、とても嬉しい。

 まぁ、あまりに手際が悪すぎると、手を出し、口を出し…と思わずしてしまいそうになるのだけれど。
 これはこれで、親への試練なのかもしれない…ね。


「父さまと母さまは…」

「レイ、大丈夫だ。お二人ともご無事だよ。ただ、こんなことが続いてしまって、どうしても忙しい。……寂しいだろうが、もう少し頑張れるかい?」

「はい!みんながいるから、大丈夫です」


 ……みんながいるから大丈夫!だなんて、面と向かって言われてしまうと、ちょっと恥ずかしいね。
 ただ実際、私もみんながいてくれて心強いし、楽しい。
 なんのためにここに避難しているのかを、忘れてしまいそうなほどに。


「父さん、レオンに後遺症等はなさそうです。寝てるのは…魔力切れですね」

「よかった…!」


 レオンハルト王子はどうやら熟睡だったようで、診察しても反射的な反応はあったものの、声をかけても寝ぼけ程度に覚醒したのち、また眠ってしまったそうだ。

 そう説明しながら、父様の隣の丸太に腰かけたので、カイルザークが焼いてくれた串焼き…ほとんど野菜のだけど。を、お皿に盛って渡す。


「兄さま、どうぞ」

「ありがとう!美味しそうだね」


 ……受け取った時、一瞬引き攣った表情だったのは気にしない。
 ほとんど野菜の串焼きだったからかなぁ?
 お肉欲しいよね?

 これから焼くから待っててくださいよ!


「みんなで準備しました」

「それはすごいね?!これはエルが焼いたのか?」

「はいっ!」


 と思ったら、颯爽とお肉のみ(!)を盛ってあるお皿が、エルネストによってヴィンセント兄様の前へ運ばれていった。
 ああ、ここに肉魔人がいたんだった。


(そういえばコンロに火を起こしたあと、すごく嬉しそうに、ずっとお肉焼いてたもんね)


 同じ獣人なのに、好みが正反対すぎて、様子に笑ってしまう。


(お肉の塊がカウンターに置かれていて、その都度ルナが切り分けてくれていたのだけど、なんかもう、その塊にそのままかぶりつきそうな勢いだったんだよ)


 確かに、柔らかくて美味しいお肉だったんだけどね。

 自分で食べたいものを串に刺したり、元から刺してあるものを取って焼いたりしながら、食事を楽しみつつ、大興奮でマシンガントークになってしまっている、シュトレイユ王子の話に相槌を打ちつつ……避難中だって事をすっかり忘れたかのように、楽しく食事が進んでいった。

 ……父様とヴィンセント兄さまから、酒が欲しいとか話してるのが聞こえたけど、聞かなかったことにしとくよ。

 って、カイルザークまで『分かります』って顔して頷いてるんじゃないわよっ!

 ああ、でも呑むなら日本酒かなぁ?
 ワインも良いんだよね。
 もちろん、主役はバーベキューだから、酔いが回らない程度になるように、軽いのが良いんだけど、なんなら炭酸飲料や葡萄ジュースで割ってもいい。
 意外なところで、甘めの紅茶で割っても美味しい。

 うん……私も呑みたくなっちゃうじゃないか!

 まぁ、実際は幼児だからさ、味覚がきっと合わない。
 不味く感じちゃうんだろうなぁ。
 もったいないなぁ。


(そうだ、今度アルコール無しのワインゼリー作ってもらおうっと!)


 大人向けに作る場合、アルコールを飛ばしてあっても、お酒っぽい味に仕上げるから、子供味覚で苦手になってたら、あんまり美味しくないゼリーだったりする。
 子供向けなら、葡萄ジュースじゃんじゃん入れちゃうから、葡萄ゼリーと変わらない感じするんだけどね。


「でね~。セシリアがレオン兄さまを泣かしちゃったんだ!」

「…はっ?!」


 いきなり衝撃の言葉が、そしてギョッとした視線が二つ……!
 私に注目している。


「ななななななな…なにもしてましぇん!」


 ああっ…。どうしてこういうタイミングで噛むのさ…。
 あ、でも、あの素敵な髪は堪能したけども。


「セシー…。その態度だと、余計に怪しく見えちゃうから、落ち着こうね?」

「ひゃい…」


 焦りすぎて、危うく食べてた串を落とすところだったわ……
 そんな反応が面白かったのか、コンロから、肉と野菜の量が均等にさしてある串をお皿に山盛りにして、テーブルに運びながら、ユージアがくすくすと笑う。


「あはははっ。セシリアが『頑張ったね』って褒めたら、緊張の糸が切れてしまったみたいで、泣いてしまったんです。もう、号泣。……そのまま、泣き疲れて寝てしまったようで」

「……なるほどね。喧嘩でもしたのかと思ったよ。みんなも遊ぶのはいいけど、大きな怪我をするような事だけはしないようにね?」


 ため息をつきながら、疲れたように笑っている父様。
 私、喧嘩なんてしませんよ?!

 今まで、そんな喧嘩するような相手すらいなかったんだから…そもそも喧嘩の仕方を知らないっ!
 あー……なんか悲しくなってきたから、いいや。

 うん、でもね、喧嘩はしませんよ。
 絶対に。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...