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はじまりはじまり。小さな冒険?
436、ささやかな幸せ。
しおりを挟むベッドの配置は『このままで良いか…しょうがない』との事で、配置の変更はせずに王子側の端にルーク。
反対側から見ると、こちらの端は父様…ではなくて、私とエルネスト。
一応落ちないようにと、ベッドの終わりにクッションを置いてある。
その隣に父様、その奥にみんな…と並んで寝ることになった。
ちなみに端と言っても、ベッドの横幅がかなりあるので、端に置かれたクッションに私が到達するには、何度も転がっていかないと辿り着けないくらいの余裕があった。
これなら寝相が悪くても、大丈夫!
(……いや、エルネストを抱えているから、転がっていくこと自体が、そもそもないと思うんだけどね?!)
わざわざクッションを置かれているってことは、信用してないよね……。
「セシーは、寝れるかい?」
「大丈夫……おやすみなさい」
腕の中に小さな子を抱えて眠るのって、久しぶりだなぁ……。
まぁ、自分が小さな子だったからってのもあるんだけどさ。
前世での私の子供たち。
だんだん生意気になって、気づけば別の布団で眠るようになってしまったけど。
確か、小学校入学前までは、布団を『もうお兄ちゃんだもんね』と言ってわけようにも、涙ながらに嫌がられていた記憶がある。
『一緒に寝たい。一人はイヤなの』って泣くけどさ、実は私も『寂しくなるな』って思ってたんだ。
それでもそろそろ……と思って、心を鬼にして…ってほどでもないけど。
お友達から『まだママと寝てるの?』と、笑われないように、心配からの提案だったんだからね?
まぁ結局、別の布団に寝るようになったのは2年生も後半で、私とは別になったけど、自分の布団は使わずに、旦那の布団に潜り込んで寝るように……。
つまり、一緒に寝る相手を変えただけという。
(それなら、嫌がるまで一緒に寝てればよかったと、少し後悔してしまった)
なぜって、一緒に寝るって、慣れるまでは少し邪魔だったり、気になって眠りが浅くなったりはしたけど。
慣れてしまうとね、すごくよく眠れる。
なんというか、安心感が違う。
子供特有の高めの体温と、あの柔らかさ。
『子供を寝かしつけようとして、親が寝てしまう』なんて、よく笑い話にされるけど、あれは本当によくある話で。
不思議と落ち着いて、心地良くなって、気づけば寝てしまっているんだ。
まぁ、その頃にはどうにも寝てくれなかった子供も、一緒に寝ているんだけどね。
久しぶりの1人の布団は寒いし寂しいし、妙な違和感があって。
これまた慣れるまで、軽い不眠が続いた。
それくらいに貴重で、幸せな体験だった。
だって、これが毎晩なんて、自分に幼い子供がいないと出来ないことだから。
……とは思いつつ、子供って寝相が悪いから…しっかり抱えていないと、とんでもない場所まで転がっていったり、その場で回転して枕に足があったりとか。
それだけなら、まぁ眠くても『なにこの寝相!』って、ちょっと笑いながら直してあげれば良いだけなんだけど。
ひどい時は、そんな体勢からのラリアットや裏拳。
いや、蹴りや踵落としなんかが、顔面に綺麗にきまる。
(寝相だから『手加減』なんて言葉は存在しないし、寝相だから無意識だし…寝相だから怒れないし……寝相だから……)
そんなストレスが軽く溜まったりもするけど。
そんなこんなも、全てひっくるめて、私の宝物で、幸せな温もりだった。
******
「重くないか?」
「エル、可愛い……大丈夫。ちゃんと寝れます…」
「ごめんな、ありがとう」
首を小さく横に振って見せると、父様は困ったように笑って、ぽんぽんと頭を撫でてくれた。
撫でて、毛布を肩までかけて…エルネストが完全に潜ってしまうことに気付いて。
そっとエルの顔がぎりぎり潜らない位置まで毛布を下げると『残りの書類を終わらせてくる』と言って、ルークと個室の方へ行ってしまった。
……必死に声を殺しながら、泣き疲れて寝てしまったエルネスト。
こっちの世界の子供たちは、ずいぶん発育が、特に精神的な発達が早いと思っていたけど、やっぱり子供は子供だ。
辛いものは辛い。
これは大人だって同じ事だけど。
(ありがとうだなんて。……言わなきゃいけないのは私の方なのにね)
ユージアはともかくとして、エルネストやカイルザークに関しては『孤児院が教会との繋がりが高いから預けられない』という条件がついていたとしても、本来であれば公爵家で引き取る必要は、ない。
ないけど、セシリアの事を考えて、引き取ることにしたのだと思う。
周囲の反対を押し切ってまで。
(……ルークの後押しは、確実にあったのだろうけど)
なんだかんだ言いながら、魔導学院に来たばかりの幼いカイルザークを、一番可愛がっていたのはルークだ。
同じ特徴を持ったエルネストもそうだし、ましてやカイルザーク本人が困っているのなら『手を差し伸べない』なんて選択は、絶対にしない。
まぁ、その分、成人した後のカイルザークへの対応には笑っちゃったけど。
(急に冷たく、そっけなくなって。でも、よくよく見ていると、何も言わずにそっとフォローをしておいてくれるルークに、フォローされたことになんとなく気づいてるけど、すぐにはお礼が言えないカイルザークという構図になることが多くて。見ていて歯痒かったんだよなぁ……)
歳の離れた男兄弟って、こんな感じなのかな?といった風だったから。
……エルネストにも、そうやって気の許せる関係が築けたら良いな。
その相手は私じゃなくても良い。
カイルザークでも、ユージアでも…レオンハルト王子でも。
誰か一人でも良いから、嬉しさも辛さも、全ての心の支えにしていけるように。
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