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はじまりはじまり。小さな冒険?
435、寝れない子は、だーれだ?。
しおりを挟む「……さぁ、冗談はともかくとして、子供は流石に寝る時間だ。ベッドはセシリアだけ分けるから…セシー、そろそろエルをベッドに寝かせてやってくれ」
父様のなんだか微妙な咳払いと共に、寝る時間だと言われて。
それはわかってるんだ、そもそも、レオンハルト王子もシュトレイユ王子も寝てしまっているし。
その隣にはユージアとカイルザークが潜り込んで、さらにその隣にゼンナーシュタットが寝て……いや、ゼンのこれは狸寝入りだな。
シュトレイユ王子の少しだけ成長した姿を、借りたままのゼンナーシュタット。
そのシュトレイユ王子の寝顔が見える位置に寝てると、本当にそっくりすぎて、兄弟どころじゃなくて双子ちゃんにしか見えないのだけどね……ゼンは眉間がしわしわですよ…?
(これは、まだ起きてるよね?)
ちなみに、その隣に私がエルネストを抱えた状態で座っている。
今のベッドは横にずらりと、密着させて並べてあって、そこにみんなまとめて転がってるような感じなんだ。
前世のテレビで何度か見た、高級ホテルのキングサイズ以上のベッドを作るときと同じような感じに、ピッタリといくつものベッドがくっつけられている。
なので、やたらと横に広いベッドになっていた。
『女の子だから』という事で、ベッドを私の分だけ離すんだろうなと思って、ひとまずエルネストをそっと持ち上げて離そうとして違和感に気づく。
……エルネストが離れない。
「はい……ん?んん…?」
「どうした?」
「えっと…あれ?……ちょっと、まってね。……えーっと」
ちょっと力を入れて、エルネストを持ち上げようとするのだけど、やっぱり、離れない。
エルネスト本人は、泣き疲れてぐっすり眠ってしまっているから、実はケモ耳もしっぽも『こんにちわ』している。
その魅力的なケモ耳が、ピクリとも動いていないから、熟睡中なのはわかってる。
……ケモ耳ってね、可愛いだけじゃなくてかなりの高性能で、本人が意識していなくても、勝手に音を集めちゃうらしくて。
つまり、眠りが浅かったり、意識がある時は、勝手に耳が動いちゃうらしいんだ。
(ケモ耳が、ピクリとも動かないってことは、熟睡してる…はずなんだけど?)
腰に回された手は、硬く握りしめられていて、外せそうにもなかった。
「セシリア、どうしたの…って、ああ!…あははっ!」
カイルザークがゆっくりと起き上がってこちらを振り返ると、エルネストとは対照的に、眠気で力なく垂れていたカイルイザークのケモ耳がぴっと立って、笑い出していた。
ユージアまでも『どうしたの?』と覗き込もうとして、私の手前で寝ているゼンナーシュタットに、のしかかる。
ゼンナーシュタットは一瞬、眉間の皺がさらに深くなると、くるりと私に向き直るように横向きに寝直す。
その拍子に、上にのしかかっていたユージアが、バランスを崩してこちらへ転がり込んできた。
……その姿は、完全に眠りに落ちる直前だったようで、3歳児の姿に縮んでいた。
可愛い…!
っと…そうじゃなくて、今はエルネストだ。
「えぇと…くっつかれて、剥がれません…」
「これは、エルは起きてるのかい?」
抱え込んだ直後は嫌がったのに、今はしっかりと、しがみついて離れなくなってしまったエルネスト。
父様がエルネストを抱き上げようと引くと、私まで引っ張られる状態に、カイルザークはさらに笑い出す。
「父様…これは……僕たちの種族の癖です。これ…」
今までの眠そうな表情はどこへいってしまったのか、くすくすと笑いながら『朝まで剥がれませんよ』と……どういうことっ?!
何事かと思ったら、なんて事ない。
母猫が子猫を咥えて移動するときに、子猫は首の後ろを掴まれると、大人しくなる。
これと同じように、眠りが深い時は、母親にしがみつく習性があるのだとか。
「セシリアに抱っこされて、安心しちゃったんだね…可愛い…」
「年上に向かって、可愛いとか…カイ……」
懐かしさのこもる優しげな笑みを浮かべながら『これは、子供が自分の身を守るための術です』とエルネストの頭を撫でながら説明するカイルザークに、父様は眉間を手でおさえながら…でも、同じように優しげに笑う。
「少しは…警戒が解けたのだろうか…?」
「……警戒なんて、エルは最初からしてないですよ?」
「ずっと……こちらの顔色を伺うようだったからね」
「そ・れ・は。真面目なだけです。エルはすごく真面目!…子供のうちから、禿げちゃうくらいに真面目!」
跳ね返った前髪を直しつつ、ニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべるカイルザーク。
ふらりと立ち上がると、隣に転がっていたユージアの足を掴み、引きずっていく。
……どうやら、話しているうちに力尽きてしまったようで、引きずられていても、ユージアはすやすやと寝息を立てている。
ずりずりと、ゼンナーシュタットをも乗り越えて、元いた場所へと転がされるユージア。
(カイ、もうちょっと優しく扱ってあげてっ!それと…さりげなくゼンを潰しちゃってるんだけど!……重くなかったのかな?)
流石に心配になって、エルネストを抱えたまま、はらはらしていると、ユージアの移動を終わらせたカイルザークが、寝ているゼンナーシュタットの上を飛び越えようとしたところで、ゼンナーシュタットに足を掴まれて、毛布の中に引きずり込まれていった。
「うわっ!?…ちょ…」
「ちょ…じゃなくて『ちょっとごめん』とかっ!『危ないよ』とかないのか?堂々と踏むとか!」
「うくく…はははっ!」
……久しぶりに感情のある、ゼンナーシュタットの声を聞いた気がした。
怒ってるけど。
とりあえず、というか、どうやらカイルザークは、毛布の中でくすぐり倒されているらしい。
必死に逃げようとしているカイルザークを、しっかり掴んで離さないとか、意外にゼンナーシュタットは力持ちだね。
「あははははっ…やめっ!…いやっ!なんか考え事してたみたいだし…邪魔しちゃっ…はははっ」
「カイが変なことを言うからだろっ!!…セシリアが…」
「私…?」
「いや…なんでも…あ、こらっ!」
いきなり私の名前が出てきたので、エルネストを抱えつつ、2人のいるだろう毛布の塊へと視線をやると、一瞬、カイルザークの頭が毛布から出て、再度……引きずり込まれて行った。
2人で内緒話、してたもんね。
その関係かな?ていうか、私のことを話してたって、何を話してたんだろう?
「はははははっ!やあぁあっっ」
「まずはっ!『ごめんなさい』だろっ!」
「うひひ……ひゃぁぁっー!!」
布状のスライムが暴れているようにしか、見えなくなってしまったので、元の姿勢に戻る。
目の前にはエルネストの頭。
さりげなく、ふわふわふにふにのほっぺや、さらさらの髪、そしてそこからひょこりと姿を現しているケモ耳を堪能しまくっていたわけですが。
今日はとにかく綺麗。
月明かりを孕んだ髪が、ほのかにきらきらと浮かび上がる。
それはエルネストだけではなくて、ユージアや、ゼンナーシュタットも同じで、とにかく素敵な光景なんだ。
ギリギリ夜目がきく程度の明るさなのに、きらきらとなんとも幻想的で。
「まぁ……カイも充分、真面目だが……」
「だよね。…ま、2人とも良い子って事だ。さぁ、寝ないなら……もう少し手伝ってもらうぞ?今度は、ゼンとカイかな……」
「「えっ?!寝ますっ!!」」
父様の声に、布のスライムのような物体が、びくり!と大人しくなる。
その反応の良さが、あまりにも可愛らしくて、笑いが込み上げてくる。
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