私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

450、どんな記憶であれ、今となっては良い思い出で。

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「セシー?どうした?」

「なんでも…ないです」


 唐突に、父様から声をかけられて、飛び上がらんばかりに、びくりとする。
 ……唐突じゃなかったのかもしれないけど。

 前世むかしの記憶。
 どうにも『そういえば、こんな事もあったなぁ』と思い出すと、不思議と視界いっぱいに映像が広がるように、鮮明に思い出す。
 まるで、映画館のあの大画面を、一番前の席で、見ているかのように。

 そのせいか、思い出している最中は、完全に私の動きが止まってしまうようで、またもや父様に心配されてしまった。


(独身時代の思い出かぁ……懐かしいなぁ。仕事ではある意味地獄だったけど、楽しかったんだよなぁ)


 北海道という土地は大好きだった。
 言葉も、慣れてしまえばどうってことない。
 むしろ愛着があるよ。

 そもそも思い返せば、思い返すほどに、私の職場が少し特殊だっただけだ。
 職員の中で、女性上司と私以外は全員男性で。
 そして、出身が北海道の職員と、関西の職員と、ちょうど半々いた中に、関東から来た私がぽつり。

 おかげで私の言葉は、北海道弁を理解したと思っていたら、関西弁が混ざってたりとかね。
 何やら、よくわからない環境だった。

 地元出身の職員いわく『関西弁は怖い。関東あんたの言葉は機械みたいで冷たい』らしい。
 冷たいかな?
 敬語を使えば使うほど逃げられるのは、これが原因だったみたいで。

 俗にいう、タメ口を使うと距離が縮まるというね。


(でもね、周囲は私の10歳以上も年上なのが当たり前の環境で、それは難しかったんだよ……?)


 まぁ……今の環境も年齢という意味では、酷いことになってるけどさ……。
 ルークとか、ずっと昔には幼馴染だし、同級生だし。
 でも、今は教師だし、国のお偉いさんだし。

 なのに、今も昔のままの態度で話してしまっている。


(ダメダメかも。今までは色々と必死になる、というか、そんなこと構ってられない状況が続いたから、しょうがないとしても、これからは……ちゃんと考えていかないと……)


 王子たちとの関係もそうだし、ゼンも……。
 そういえばゼンは、どう接したらいいんだろう?

 霊獣って、実は生態をよく知らない。
 魔導学園時代に多少、聞き齧ききかじったくらいだった。
 精霊はほら……身近にルナとフレアがいるからさ、否応いやおうなしに、知らざるを得なかったわけなんだけど。


(精霊の獣版くらいにしか考えてなかったわ)


 しかも人化できるくらいに格の高い上に、赤ちゃんじゃなかったとなると、もうお手上げだ。
 失礼な事しちゃったかな?……しちゃったよなぁ。
 名付けもそうだし。

 危うく『きゅーちゃん』って、つけかけてたわけで。
 ゼンナーシュタットが必死に嫌がってくれなかったら…守護龍のアナステシアスがフォローを入れてくれなかったら、きゅーちゃんになってた。


(それでも、真面目に考えた名前だからね?!…きゅうきゅう言ってて可愛かったんだから!)


 バタ焼きされたホタテのヒモを、コリコリと噛みしめながら、ちらりとゼンナーシュタットへ視線を移すと、目がばっちりと会ってしまった。

 なんだろう?
 視線の先のゼンナーシュタットは、怒られてしょげている。と、いうよりは、何かにひどく怯えてるように顔を蒼白に染め上げている。
 私の視線に気づくと、同じようにびくりとして。
 直後、悲しげに瞳を伏せてしまった。


「セシリア…その、さっきは……ごめんなさい」

「私も、ごめんね。びっくりしちゃっただけだから、大丈夫」

「あ……。本当に、ごめんなさい」


 それっきり、悲しそうに俯いてしまうと、何も言葉を、返してはくれなくなってしまった。

 今のゼンナーシュタットは、いつもにこにこ笑顔のシュトレイユ王子とそっくりな姿してるからさ。
 普段見かけないような悲しげな表情に、なんだかとてもいたたまれなくなってしまって。

 所在なげに見上げた空は、まだまだ日が昇りかけの明るさで、不思議な気分になる。
 朝が早すぎたせいか、朝ごはんを食べてる最中なんだけど、そろそろお昼なんじゃないかな?と、錯覚しそうになるほどに、時間を長く感じていたようだ。






 ******






「ねぇ、またここでご飯が食べたいな!」


 とても楽しげなシュトレイユ王子の声。
 確かに、この解放的な雰囲気での食事、素敵よね。
 木漏れ日とはいえ、ほぼ屋外のような場所に設置してある、ガーデンテーブルのセットでの食事。

 ガーデンテーブルも、なんだろう、私が想像してたのとちょっと違う。
 アイアン調の椅子にテーブルに……じゃなくて。
 ラタンのような藤のような素材を編み上げて作ったソファーに、ちゃんと柔らかなクッションがついている、立派なもの。

 テーブルも、ラタンの編み上げに、分厚いガラスが置かれているという、お洒落な作りになっている。


(昨日使った、丸太の椅子に、一枚板のテーブルのセットも屋外っぽくて良かったんだけどね)


 今日の朝ごはんは、小鉢や丼を多く使っていたから、テーブルの凹凸で器が転ばないようにと、ルナがテーブルを変えたのだった。

 それにしても。
 よく、こういうセットが屋外に置いてあるお庭の写真を、前世にほんの家具のカタログとか、あとは映画で見かけてたけどさ。
 これ、雨が降ったらどうするんだろうね?
 ダメにならないんだろうか?


「こことは言わず、今度は庭園でやりたいな!」


 レオンハルト王子がシュトレイユ王子に優しく微笑みかけながら、とんでもない発言をした。


「今度は父様も母様も一緒に。今日よりもずっとずっと楽しいと思う」

「父さまと母さま……喜んでくれるかな?ねぇ、セシリアたちも一緒?」

「ああ、もちろん。いっしょだ」

「うん、絶対楽しい!」


 シュトレイユ王子がアクアマリンの瞳をきらきらと輝かせながら、満面の笑みを浮かべている。
 ……この『避難所』は擬似的な屋外を作り出しているけど、本当の屋外でやるには、まだ少し寒いかもしれない。
 ああ、でも、キャンプとかグランピングみたいな雰囲気でやるのなら、焚き火を囲むことを考えると、ちょっと寒いくらいが暖をとりながら楽しめて、ちょうどいいのかな?
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