私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

449、やっぱり、要領の良い子の方が可愛いですかね。

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 ちなみに、ここまで色々やらかした後輩は、この時すでに、会場で他の部署の人たちに紛れ込んで、お酒を飲んでいた。
 ……私の管理不行き届きも…酷すぎですね。はい。

 要領が良いというかなんというか……呆れるばかり。
 食材の運搬をお願いしてたのだけどね。
 2~3個目のトレーを運び込んだまま、戻ってこなくなってしまった。

 一方、私はひたすら食材を切り分けていて気付かず、女性上司が『食材足りなくなってきてるけど大丈夫?』と、食堂の様子を見にきてくれて発覚…という、ね。


(女性上司の声が枯れてしまうのも、わからなくはないかなぁ。と、ちょっと思ってしまった私はダメかもしれない)


 この時の女性上司は、殺気立つ勢いで怒り狂っていたのだけれども。
 私は怒るより何より、脱力してしまった。


(この時ばかりは女性上司に『あなたも怒りなさい!』と怒られてしまった。けど、怒る気力も無かったんだよね)


 朝から…いや、昨日の夕方から1人で収穫したり、買い出しに行ったり、下拵えしておいた食材の、ほとんどを無駄にしてくれた。
 上司に怒られても、後輩は『だって…だって…』と涙ながらに言い訳しか、しない。

 切り分けておいた野菜とかさ、そのままにしておいてくれたら良かったのに。
 怒りよりも、自然と涙がにじんでくるくらいに、悲しかった。

 せっかくのお野菜が……本当に、もったいなかったし。


 贔屓ひいきするわけじゃないけど『収穫祭』って言うくらいだからさ、そのほとんどが、自分たちで育てた野菜たちだった。

 ジャガイモのように広大な敷地で、出荷前提でたっぷり育てたものもあれば、大型の機械で耕すには半端な畑を『家庭菜園として好きに使って良いよ!』と。
 そんな一角を提供してもらって、育てた野菜もある。


(苗を発注した、他の部署の上司が……加減を知らなかったから。食べる人間に対してではなくて、家庭菜園の敷地に植えられるだけの量を発注しちゃったから。ピーマンだけでも植えすぎ状態で、収穫時期である夏の間、毎日みかん箱3箱分採れちゃったりとか……色んな意味で大変だったけど)


 毎日ピーマン尽くし……どころじゃなくてね。
 同量のトマトや胡瓜きゅうり茄子なすにカボチャ、玉ねぎに……。
 本当に様々な野菜を、家庭菜園というにはかなり大掛かりな広さで作ってしまったんだ。

 植えるときは、実務の部署の方が、本業だからね。
 仕事の合間に、綺麗に耕してくれて。
 苗の運搬も引き受けてくれて……。

 苗の多さに『こんなに作って、食べ切れるの?』って笑われてしまったのだけど、他部署の上司が発注をかけたものだし、初めて育てる野菜が多かったから、失敗も込みでの数なのかな?と思って、お世話をしていた。

 実務の部署の方達が、作業に入る前に定期的に見回りをしてくれて、病害虫の対応や肥料の管理も多少は……してくれていた。


(最初だけね。苗が立派に育ち始める頃には、本業の方が忙しくなってしまうからね。そうなると『そろそろこの野菜には追肥。あっちの野菜にはこの農薬を使っておいた方がいい』と、アドバイスをくれるだけになってしまったので、ほとんどを私がやっていた)


 楽しかったから、苦ではなかったのよ?
 家庭菜園とは程遠い、とんでもない広さの畑作業になってしまったけど、それなりの機械や道具は揃ってたからね。
 わからない事があれば、実務の方に聞けばいいし。
 ……まぁ作業の邪魔にならないように、極力自力で解決できるように頑張ったけど。

 ただ、私も自分の仕事があるからね。
 午後のお仕事が始まる前か、1日のお仕事を早めに終えて、昼過ぎから作業に入ったりと、お世話にも多少の波はあった。
 それでも、日に日に大きくなって、あっさりと私の背を超えたトウモロコシとか、うっかり収穫し忘れて、真っ赤になったピーマンとか、目に見えて成長がわかって嬉しいし、楽しかった。


(知ってる?牛蒡ごぼうってね、まっすぐ延びられる場所がないと、太くなるの)


 大根の場合は、伸びる先に硬い土があると二股になったりするんだけど、牛蒡は、むしろ、大根のようにまるまると太く短く育ってしまった。

 実務の人たちが『肥料やりすぎたかな?』と首を傾げていたけど、大根みたいな立派な太さの牛蒡が続々と収穫されてしまって、掘り上げながら、大笑いだった。


 それこそ女性上司に『この都会っ子は……』と、呆れられるほど、畑のお世話が楽しかった。
 ……そうやって大切に育てて、収穫した野菜が、食べられる事なくゴミ箱へ。


 嫌がらせにしては、ひどすぎるよね。
 なんだかんだ言いつつ、私だけではなく、色んな人の手間も費用もかかってる。
 量も量だし、被害も甚大すぎるしね?

 あまりにも悲しすぎて、怒るつもりは無かったのだけど『どうしてこんなことをしたの?』って、思わず聞いてしまった。


 答えとしては……女性上司の前だったから、いつものようにはっきりとは言いにくかったのか、もにょもにょと、歯切れの悪い話し方で、ぽつぽつと……まぁ、内容的には、しっかりと私を貶しながら、話してくれた。

 意訳をすると……劣化を防ぐためだったらしいですよ?
 表面がカッサカサに乾かないように、変色しないように。


(私が見た時は、むしろ、洗剤を吸った影響なのか、べっちゃべちゃだったけどね!?)


 私の保管方法が乱雑だったから、後輩が、わざわざ手を加えてくれたそうです。

 お皿に盛り付けてラップしてあったのを『ラップなんかしたら蒸れて臭くなっちゃうじゃないですか!』と、わざわざ洗って臭みをとってくれたのだそうだ。
 ……まさかの食器用洗剤を、薄めた水で。

 食器洗剤を薄めた水にさらして、蒸れた野菜の臭みをとってから、特大の大皿に盛り付け直してくれたそうです。

 ……流石に。
 バーベキューとはいえ、お客様まで招いている席に洗剤入りの野菜は出せないでしょ?

 せっかく準備した野菜たちが全て、ゴミとなってしまった。

 ラップして野菜室じゃ、ダメだったの?
 一応これは、女性上司に確認をとった方法で、保管してたんだけど…。


 バーベキューのスペースは、そこそこ広めだったから、一つの大皿に野菜を山盛りで盛り付けるよりは、2枚~3枚のお皿に小分けに置いた方が、焼くときに1箇所に食材が集中しないで取りやすいかな?って思っての盛り付けで……。

 ていうか、山盛りに盛られすぎて、下の方の野菜……潰れてるよね?

 一応さ…その、お野菜たちこそが、今回の収穫祭の主役だったりするからさ……。


(最後の一枚まで綺麗な状態で食べてもらえるようにって考えて、盛ってあったんだけどなぁ)


 ……私は『余所者よそもの』だからと、散々バカにされ続けていたので、仕事以外の会話に関しては、完全に諦めの境地に至っていた。
 だから『こんなことも知らないんですか?!』と言われてしまうと、どうにも言い返しにくい心境になっていた。

 でもね、幸か不幸か……この、自信満々に失敗をした『自慢すべき地元っ子』の後輩の件があり、調理に関しては、それほどバカにされることは、なくなっていった。


(まぁそうだよね。散々怒鳴られて罵倒されて、そもそも自信を無くしてたから。神経質なほどに、全ての行動に確認をとってからしか、私は動かなかったもの)


 女性上司も、そういう動きの方が、作業の把握をしやすかったのか、しつこく聞く分には、イヤな顔もしなかったし。

 気づけば『これだから都会っ子は……』という言葉も、少なくなっていったんだよなぁ。
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