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第一章
第3話 王都へ後編
しおりを挟むラグナドラグーン王国。大陸の西側に位置している小国群の1つとの話しをカレンさんがしてくれた。この国に有る神山ラドラナにドラゴンが棲む聖域が有り、国の名前も神竜に由来しているとか。
王都ラインハイネは、取り巻く壁に守られた城塞都市だった。高い城壁の上に兵士が街の周囲を警戒しているのが見える。
「す、凄い壁ですね!」
俺は其の壁に圧倒されてポカーンと口を開けていた。
「約300年前に大規模な国取り合戦があったんです。北の帝国が大陸全土を制圧する勢いがあったそうです。野戦に於いて帝国は圧倒的だったそうで、この辺りの小国は籠城戦が主体だったそうです」
カレンさんが説明してくれた。
「なるほど。だから堅固な壁を作ったんですね」
キャラバンの馬車は王都に入る為に、入都待ちをしている列に並んだ。此処で問題が発生する。王都に入るのに身分証明が出来るものが必要って事らしい。
「残念だったな少年」
サクッとミミアさんに切り捨てられた。
「こればっかりは仕方ありませんね」
カレンさんも手は無いと言う。流石に俺も不法侵入しようとは思わない。取り敢えず列に並び、兵士さんと相談する事とした。
漸くキャラバン隊の順番となった。
「少年頑張れよ」
ミミアさんは門を抜け街の中に入って行く。商隊の人達も勿論入って行く。戦士さん、僧侶さん、エルフさんと入って行き、最後にカレンさんが俺にお辞儀して門を抜けて行った。
門には二人の兵士がいる。若い兵士とベテラン兵士だ。融通を利かせてくれるのはベテラン兵士だったりする。しかし残念にも若い兵士が俺の担当になってしまった(涙)。
俺はダメ元で兵士さんに伺ってみるが、やはり断られた。其処を何とかと粘るが後ろの人から「いい加減にしろ!」言われて、俺はトボトボと身を引いた。其の時に見た後ろの人は紫のオーラが見える。其の男がギロリと睨む。怖え~。
オーラについて少し分かった事がある。紫は悪意や敵意。更に濃くなると殺意だ。コボルトに見えたのは黒の様な紫だった。緑は普通の状態、大多数の人は緑だ。
俺は門の脇にバッグを置き、あの男と兵士のやり取りを眺めていた。あの男は相変わらず紫のオーラを出している。て言うかさっきより黒みが増してる?
若い兵士があの男から渡された紙を見ている。何か揉めているようだ。詳細は分からないが、あの男のオーラが黒身がかっていく!そして殺意が現れた!
ヤバッ!っと思った瞬間直ぐ様駆け出し、若い兵士を横からタックル。俺のズボンを男の黒い短剣が切り裂くが、痛みはなくスレスレセーフ。しかし倒れこんだ俺に男はナイフを振り下ろす。
死にましたね。
って思ってギュッと目を瞑り……………ドサッと男が倒れこんだ。男の頭には剣が刺さり、男は絶命していた。もう1人のベテラン兵士が異変に気付き、助けてくれたのだ。
俺は足元で死んでいる男を見て、ガクガク震えだした。そんな俺を若い兵士が立たせてくれてた。
「ありがとう。助かったよ」
もう一人の兵士が走って来て近寄り、死んでいる男を確認する。顔に変装の後があり、結果として指名手配中の凶悪殺人犯であることが分かった。
俺は城壁にある兵士詰所で、冷えていない麦茶を飲んでいた。殺風景なその部屋は、長いテーブルと椅子が6脚。その1つに俺が座り、向かい側にさっきの兵士二人が立っていた。若い兵士とベテラン兵士。ベテラン兵士は警備隊長だと挨拶されている。
「あんたのおかげで、内の若い奴の命が助かった。ホントありがとうな」
警備隊長のおじさんが俺に頭を下げる。
「いえいえ、ただボーッと二人のやり取り見てたら、急にあの男の殺気がしたので」
警備隊長は若い兵士の頭を小突き
「こいつが凶悪犯前にして、チンタラやって恥ずかしいよ」
更に頭をグリグリする。
「あれが殺気だ。分かったか!」
更に更に頭をグリグリする。
「はい!あの感覚を忘れぬよう肝に命じます」
「しかしお前さんスゲエな」
俺の顔をまじまじ見る。「?」的な顔をしていると
「俺がアイツの殺気に気付いた時には、お前さんはもうタックルして、こいつを突き飛ばしていた。俺も戦場を幾つか周り殺気には鋭敏なんだがなぁ~。どうだい?俺の部隊で働かないか?」
いきなりの勧誘に俺はワラワラするが、俺は腕の袖を捲まくり力瘤(小)を作る。
「生憎と腕っぷしは残念レベルで~(汗)」
「あっはっはっ、何じゃいこのプニプニは~。子供でもこんなプニプニいないぞ~」
嫌味じゃない笑いで力瘤(小)をプニプニする。
「あっ、あの~、お、俺は此処に友達を探しに来たんです。俺と同じ歳で黒髪の人達は来ませんでしたか?」
「いや、見てないな。東方人なら其なりに目立つから、来れば記憶に残るはずだ」
「私も見ていません」
と若い兵士。やはり来ていないか。方向的には逆だもんな~。
「あんたは暫く王都に滞在するのか?」
「はい。そのつもりで来たんですが……」
「身分不詳で入れなかったと」
「はい…」
「大丈夫だ。あんたは良い奴だ。俺が身元保証人になってやる」
「えっ」
「名前は?」
「ら、らいと、桜井光斗です」
「ライトか、ちょっと待ってろ」
警備隊長は奥へと行き、暫くして戻って来た。手にもっていた紙を俺に向かって渡す。俺は紙を受け取る。羊皮紙のその紙には…読めないね。異世界文書解読スキルはありませんでしたとさ。
「あの~、スミマセン。文字が読めなくて」
右手で頭をポリポリ。警備隊長さんはこの紙は身元保証書で、街中であれば大概の場所で通用すると説明してくれた。俺は警備隊長さんの手を両手で握りしめ感謝を伝える。
俺はバッグを持ち上げ、兵士さん達に別れと再度感謝を伝え部屋の扉に向かう。
「待って下さい」
若い兵士さんが呼び止めた。
「これをお渡しないと」
一枚の紙を俺に手渡した。羊皮紙に書かれている文字は、当然俺には読めない。
「何ですか此れは?」
「先程の凶悪殺人犯の死亡確認書と懸賞金引換証です。この紙を冒険者ギルドに持って行けば懸賞金が貰えますよ」
お金貰えるの!超激ラッキー!
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