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第一章
第11話 サイドチェンジ1 大好きだよ 《姫川彩月》 前編
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4日前にこの世界に突然飛ばされて来ました。理由は分かりません。分かっている事はこの世界が異世界である事です。あと何人かの友達は特別な力が有りました。私には其の力は有りません。
あの日、森の中に飛ばされた私達は、獣から逃げ、光斗君とは知らぬ間にはぐれ、森の中を彷徨い、幸いにして白山先生の登山経験により森の中にあった山道を見つけ、命からがら街道に出た私達。街道を2日程歩くと人の住む町にたどり着きました。
私達は今、エンティオの町の孤児院にいます。街に着いたものの途方にくれていた私達に、院長先生が声を掛けてくれたのです。夜は孤児院の食堂をお借りして、女子全員で雑魚寝しています。男子は廊下をお借りしています。
夜7時には消灯する孤児院で、私達は気を紛らわすかの様に、短い時間だけスマホを操作していました。
突然スマホの着信音が、静かな食堂に鳴り響きました。其れはもう心臓が止まるかの様な衝撃でした。
【発信元 桜井光斗】
えー!光斗君!慌てて電話を取ります。
「光斗君!!!」
周りのみんなもビックリしています。
生きてた!光斗君が生きてた~!
何処?何処にいるの?直ぐにでも逢いたい、逢いたいよ~。
涙が、涙が溢れる様に出て来て、せっかく光斗君が電話して来てくれているのに、鳴き声で話しをする事が出来ませんでした。
葵さんが電話を変わり、私が本当はいっぱいお話がしたいのに、溢れ出る涙には勝てませんでした。
暫くして葵さんがスマホを返してくれました。光斗君との電話が終わったのだと気付き、悲しくてまた涙が沢山溢れて来ました。茜音ちゃんが私を抱いて、一緒に泣いてくれました。
「皆さん、姫川さんが落ち着いたら、桜井さんとの電話の内容を伝えます。宜しくお願いします」
……少し落ち着いて来ました。
「みんな、ゴメンね……」
ハンカチで涙を脱ぐってみんなに謝ります。茜音ちゃんが背中を擦ってくれています。ありがとう茜音ちゃん。
「桜井さんは王都にいて、元気にしています」
白山先生始め何人かの女の子も泣き出しました。
「彼は今日、冒険者になったと言ってました」
凄い。中山君達が冒険者になろうとギルドに行ったところ、身元証明不十分で冒険者には成れませんでした。光斗君は身元証明が出来てるって事だ!
「彼のスマホが使えるようになったのは、魔導通信アプリをダウンロードしたからと言っていました?」
アプリをダウンロードってどういう事?光斗君、王都でいったい何をやってるの?
「詳細を聞こうとしたところ、女性の声でお風呂がどうとかで電話を切られてしまいました」
「「「えーーー!女性とお風呂ーー!」」」
ハワワワ~、じょ、女性とお風呂って……。
「明日の朝、電話して来ると言ってましたので姫川さん、朝の朝は電源を入れておいて下さい。…姫川さん、大丈夫ですか?彩月さん?彩月さん?」
女性、お風呂、女性、お風呂、女性、お風呂ブツブツブツ……(白目)。
◆
昨夜は光斗君の事を色々考えていて、余り眠れなかったです。生きてて嬉しかった事、???な事、女性関係の事…、そして今日またお話出来る事。
1人になって光斗君とお話したいとみんなに言って、今は孤児院の外れにあった石の上に座り、彼からの電話を待っていました。
朝7時にスマホの着信音が鳴りました。
「おはよう光斗君」
「おはよう姫川さん。えっと昨夜は何か驚かせちゃったみたいで…、ゴメンね」
「私の方こそゴメン……」
暫くお互いの状況を話し合いました。『お風呂の女の子』は宿屋の娘さんが、宿のお風呂の準備が出来て呼びに来た時の声だと、慌てながら説明してくれました。ホッと胸を撫で下ろします。…いいな、お風呂。
「逢いたいよ」
「えっ」
「今すぐ光斗君に逢いたい」
「俺もみんなに……姫川さんに逢いたい」
「うん。逢いたい」
「で、でもゴメン!今はダメなんだ。俺は此の世界で生きて行くって決めた、誓ったんだ。」
「えっ、だ、誰に?」(女の人?)
「両親と妹だよ…。俺達の街は…世界は、多分、核ミサイルで消滅してる。両親達は生きていない……。考えるだけで胸が痛くて、苦しくて。でも俺が生きてる。生き残っている。きっと両親達は俺が生き残っている事が嬉しい、良かったって思ってくれているって、俺は思っているんだ。だから俺は此の世界で生きて行くって誓ったんだ」
私の涙は止まりません。昨日から光斗君に泣かされてばかりです。私は両親の事を考えると、直ぐに泣いてしまっていました。もう死んでる、もう会えない、悲しい、悲しい、悲しい。
光斗君ありがとう。
そうだね。そうだよね。私が生き残っている事は、お母さんもお父さんも凄く嬉しいに決まっている。私も生きる。生きるんだ。光斗君と一緒に此の世界で生きるんだ!
また光斗君が私の心を救ってくれました。…だから私は光斗君が…、好きなんです。
「……ゴメン。両親の死とか寂しくなる事言っちゃって」
「……」(涙で声が出ません)
「イヤ、ホントにゴメン」
「……」(喋らないと光斗君が困ってる)
「……」
「ち、違うよ。違うの光斗君」
「……」
「ありがとう。また私の心を救ってくれた。ありがとう光斗君」
「えっ…と?」
「私も生きるよ。両親の為に私も生きる!」
「……うん。一緒に生きよう。俺、今日初めてのクエストをやるんだ」
「あ、危なくないの?」
「ハハ、全然危なくないよ。迷子の子猫探しだから」
「クスッ、なに其れ」
「小さな女の子が依頼主。報酬が安過ぎて、誰も引き受けないんだって。俺は最弱冒険者に認定されたから調度いいよ」
「子猫見つかるといいね」
「俺には索敵スキルが有るから自信は有るんだ」
「索敵スキル?」
「なんか気配感知みたいな事が出来るみたいだよ?」
「そっか。じゃあきっと見つかるね。その女の子の心も救ってあげられるね」(あの時の私の様に)
「うん、頑張るよ。さっきの話し、戻れない理由はさ、生活基盤を冒険者として一歩イヤ半歩かな? 歩み始めたばかりだから少し地を固めて、そしたら逢いに行く、絶対行く!だから…」
「うん!分かった!待ってる!」
「ありがとう。彩月さん」(イエス、マスター。なゴニョゴニョゴニョ…)
「……何か声が聞こえなかった?」
「い、イヤ、気のせいじゃない?それじゃ切るね」
「あっ、ら、光斗君。また電話くれる?」
「うん、また電話するよ…ってバッテリーは大丈夫?」
「あっ……、心もとないかも~。光斗君は?」
「俺は魔力で充電出来るみたいです……」
「……す、凄いよ光斗君?」
「メール送るよ!毎晩メール送る。い、いいかな?」
「嬉しい!絶対返信するから!」
私達はメールの約束をして電話を切りました。『彩月さん』って初めて名前で呼んでくれた。
私はスマホを胸の前で、両手で抱くように握りしめました。胸が、心が暖かくなり、また涙が溢れてきます。大好きです光斗君…、私の…、初恋の人………。
あの日、森の中に飛ばされた私達は、獣から逃げ、光斗君とは知らぬ間にはぐれ、森の中を彷徨い、幸いにして白山先生の登山経験により森の中にあった山道を見つけ、命からがら街道に出た私達。街道を2日程歩くと人の住む町にたどり着きました。
私達は今、エンティオの町の孤児院にいます。街に着いたものの途方にくれていた私達に、院長先生が声を掛けてくれたのです。夜は孤児院の食堂をお借りして、女子全員で雑魚寝しています。男子は廊下をお借りしています。
夜7時には消灯する孤児院で、私達は気を紛らわすかの様に、短い時間だけスマホを操作していました。
突然スマホの着信音が、静かな食堂に鳴り響きました。其れはもう心臓が止まるかの様な衝撃でした。
【発信元 桜井光斗】
えー!光斗君!慌てて電話を取ります。
「光斗君!!!」
周りのみんなもビックリしています。
生きてた!光斗君が生きてた~!
何処?何処にいるの?直ぐにでも逢いたい、逢いたいよ~。
涙が、涙が溢れる様に出て来て、せっかく光斗君が電話して来てくれているのに、鳴き声で話しをする事が出来ませんでした。
葵さんが電話を変わり、私が本当はいっぱいお話がしたいのに、溢れ出る涙には勝てませんでした。
暫くして葵さんがスマホを返してくれました。光斗君との電話が終わったのだと気付き、悲しくてまた涙が沢山溢れて来ました。茜音ちゃんが私を抱いて、一緒に泣いてくれました。
「皆さん、姫川さんが落ち着いたら、桜井さんとの電話の内容を伝えます。宜しくお願いします」
……少し落ち着いて来ました。
「みんな、ゴメンね……」
ハンカチで涙を脱ぐってみんなに謝ります。茜音ちゃんが背中を擦ってくれています。ありがとう茜音ちゃん。
「桜井さんは王都にいて、元気にしています」
白山先生始め何人かの女の子も泣き出しました。
「彼は今日、冒険者になったと言ってました」
凄い。中山君達が冒険者になろうとギルドに行ったところ、身元証明不十分で冒険者には成れませんでした。光斗君は身元証明が出来てるって事だ!
「彼のスマホが使えるようになったのは、魔導通信アプリをダウンロードしたからと言っていました?」
アプリをダウンロードってどういう事?光斗君、王都でいったい何をやってるの?
「詳細を聞こうとしたところ、女性の声でお風呂がどうとかで電話を切られてしまいました」
「「「えーーー!女性とお風呂ーー!」」」
ハワワワ~、じょ、女性とお風呂って……。
「明日の朝、電話して来ると言ってましたので姫川さん、朝の朝は電源を入れておいて下さい。…姫川さん、大丈夫ですか?彩月さん?彩月さん?」
女性、お風呂、女性、お風呂、女性、お風呂ブツブツブツ……(白目)。
◆
昨夜は光斗君の事を色々考えていて、余り眠れなかったです。生きてて嬉しかった事、???な事、女性関係の事…、そして今日またお話出来る事。
1人になって光斗君とお話したいとみんなに言って、今は孤児院の外れにあった石の上に座り、彼からの電話を待っていました。
朝7時にスマホの着信音が鳴りました。
「おはよう光斗君」
「おはよう姫川さん。えっと昨夜は何か驚かせちゃったみたいで…、ゴメンね」
「私の方こそゴメン……」
暫くお互いの状況を話し合いました。『お風呂の女の子』は宿屋の娘さんが、宿のお風呂の準備が出来て呼びに来た時の声だと、慌てながら説明してくれました。ホッと胸を撫で下ろします。…いいな、お風呂。
「逢いたいよ」
「えっ」
「今すぐ光斗君に逢いたい」
「俺もみんなに……姫川さんに逢いたい」
「うん。逢いたい」
「で、でもゴメン!今はダメなんだ。俺は此の世界で生きて行くって決めた、誓ったんだ。」
「えっ、だ、誰に?」(女の人?)
「両親と妹だよ…。俺達の街は…世界は、多分、核ミサイルで消滅してる。両親達は生きていない……。考えるだけで胸が痛くて、苦しくて。でも俺が生きてる。生き残っている。きっと両親達は俺が生き残っている事が嬉しい、良かったって思ってくれているって、俺は思っているんだ。だから俺は此の世界で生きて行くって誓ったんだ」
私の涙は止まりません。昨日から光斗君に泣かされてばかりです。私は両親の事を考えると、直ぐに泣いてしまっていました。もう死んでる、もう会えない、悲しい、悲しい、悲しい。
光斗君ありがとう。
そうだね。そうだよね。私が生き残っている事は、お母さんもお父さんも凄く嬉しいに決まっている。私も生きる。生きるんだ。光斗君と一緒に此の世界で生きるんだ!
また光斗君が私の心を救ってくれました。…だから私は光斗君が…、好きなんです。
「……ゴメン。両親の死とか寂しくなる事言っちゃって」
「……」(涙で声が出ません)
「イヤ、ホントにゴメン」
「……」(喋らないと光斗君が困ってる)
「……」
「ち、違うよ。違うの光斗君」
「……」
「ありがとう。また私の心を救ってくれた。ありがとう光斗君」
「えっ…と?」
「私も生きるよ。両親の為に私も生きる!」
「……うん。一緒に生きよう。俺、今日初めてのクエストをやるんだ」
「あ、危なくないの?」
「ハハ、全然危なくないよ。迷子の子猫探しだから」
「クスッ、なに其れ」
「小さな女の子が依頼主。報酬が安過ぎて、誰も引き受けないんだって。俺は最弱冒険者に認定されたから調度いいよ」
「子猫見つかるといいね」
「俺には索敵スキルが有るから自信は有るんだ」
「索敵スキル?」
「なんか気配感知みたいな事が出来るみたいだよ?」
「そっか。じゃあきっと見つかるね。その女の子の心も救ってあげられるね」(あの時の私の様に)
「うん、頑張るよ。さっきの話し、戻れない理由はさ、生活基盤を冒険者として一歩イヤ半歩かな? 歩み始めたばかりだから少し地を固めて、そしたら逢いに行く、絶対行く!だから…」
「うん!分かった!待ってる!」
「ありがとう。彩月さん」(イエス、マスター。なゴニョゴニョゴニョ…)
「……何か声が聞こえなかった?」
「い、イヤ、気のせいじゃない?それじゃ切るね」
「あっ、ら、光斗君。また電話くれる?」
「うん、また電話するよ…ってバッテリーは大丈夫?」
「あっ……、心もとないかも~。光斗君は?」
「俺は魔力で充電出来るみたいです……」
「……す、凄いよ光斗君?」
「メール送るよ!毎晩メール送る。い、いいかな?」
「嬉しい!絶対返信するから!」
私達はメールの約束をして電話を切りました。『彩月さん』って初めて名前で呼んでくれた。
私はスマホを胸の前で、両手で抱くように握りしめました。胸が、心が暖かくなり、また涙が溢れてきます。大好きです光斗君…、私の…、初恋の人………。
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