異世界で『索敵』スキルが最強なの? お前らの悪事は丸っと全てお見通しだ!

花咲一樹

文字の大きさ
14 / 76
第一章

第13話 黒猫探しミッション 前編

しおりを挟む
 姫川さんとの電話の後、俺は子猫探しの依頼主の家に向かった。

「あれ???」

 依頼カードに書かれた住所に来た俺は『???』になっていた。

「で、でかい家だな?」

 其処にはそれはもうドデカイ塀、ドデカイ中庭、その奥にドデカイお屋敷があった。立派な門の所に二人の門兵が立っている。
 テレシアさんの話しのイメージでは貧しい家の子供って感じだった。

「家、間違えたかな?」

 とりあえず門兵の人に聞いてみる。

「すみません。この紙の住所は此方でしょうか?」

 門兵は怖い目で俺を睨み付ける。

「そうだが、何ようだ」
「此方の家の方が、冒険者ギルドに依頼したクエストの件ですが…」

 門兵のオーラの色が紫に変わった?

「そんな話しはお館様からは聞いてはいない」
「こいつ怪しいな」

 もう1人の門兵も紫オーラで俺を睨む。ヤバくなりそうだよ。此れは撤退だな(冷汗)。

「ハハハ、家を間違えたみたいですね。失礼しました~(汗汗)」

 立ち去ろうとする俺に、館の二階の窓から女の子の声が響く。

其奴そやつを捕らえるのじゃーーー!」

 はい?
 慌ただしく二人の門兵が、俺を両脇からガッチリ捕まえる。
 はい?

 しばらくして遠くのお館の玄関が開き、女の子が此方らに向かって走ってくる。

「手荒な事はするでないぞ~」

 走りながら声をかけてくる。

「其の者は我の客じゃ~」

 …お客さんに『捕らえるのじゃ~』とか何かおかしくない?

「よう来た、よう来た。よう来てくれた。こんな処じゃ話しも出来ん。此方らに参れ」

 走って来た女の子はピンクのドレスに、ピンクのリボンのポニーテール。セシリちゃんと同じくらいの歳で、目はややつり目だがとても可愛らしいお嬢様だった。

 俺はお嬢様に誘われ、中庭のベンチに腰掛けていた。

「我の名はルミナ。其方そなたの名は?」

 うわ~!『我』って喋る人、初めて見た~。

「俺の名はライトです。駆け出しの冒険者ですが宜しくお願いします」
「うむ。待てど暮らせど誰も来ない。其方を待ちわびたぞ」
「もう少し報酬が高ければ、誰か来たかもしれないですね」
「………。あれが我の全財産じゃ…」

 うつむくルミナ様。

「………。そうでしたか。スミマセン」
「なに、気にするな。お主が来た(笑顔)」

 うわ~。笑顔が可愛い~。ヤッパ俺ってこっち系?
 和やかな雰囲気の中、俺の気配感知が中庭に隠れている、多分護衛の8人の殺気をひしひしと伝えている。
 手を出したら殺されるね(汗)。

「エルマーニャがいなくなったのじゃ」
「依頼の猫ですね」
「父殿が捨ててしまったのじゃ」
「どうしてですか?」
「祟るそうじゃ。猫は死んだら祟るからダメなそうじゃ」

ルミナ様はお化けだぞ~のポーズで説明してくれた。
 はい?

「納得出来んのじゃ。まったく納得出来んのじゃ!」

 確かに全ての猫が祟るのなら、其処ら中が祟りだらけだ。

「だからエルマーニャを探して父殿にお願いするのじゃ!エルマーニャは絶対祟らないと」
「よし!頑張ってエルマーニャを探します。エルマーニャはどんな猫なんですか?」
「黒じゃ」
「他に何か特徴はありますか?」
「黒じゃ!」
「………」
「全て真っ黒じゃ!」
「大きいとか小さいとかは?」
「子猫ではないが小さいぞ」

 子猫じゃないけど小さい黒猫…子猫の黒猫と見分けつくの?

「と、取り敢えず探してみます(汗)」
「うむ。では門を出て、塀沿いに右に曲がった所で待っておれ」
「はっ?」
「我も行くから其処で待っておれ」
「えっ、ルミナ様もご一緒に?」
「もちろんじゃ」

 俺は辺りに潜んでいる人達の様子を伺うが反応無しだ。大丈夫ってことかな?

「そ、其れでは其の場所でお待ちしています」

 言われた場所で待っていると、みすぼらしい服を着たルミナ様がやって来た。成る程、この格好で依頼されたら貧しい家の子って感じになるな。

「どうじゃ!街娘の服じゃぞ!凄いじゃろ!」

 何が凄いのか分からないが、ドレスより目立たないから連れ出しても大丈夫?とりま隠れているけど、さっきの護衛もいるみたいだし……。

「では探しに行きましょうか」
「うむ。宜しく頼むぞよ。其れで何処に行くのじゃ?」
「ルミナ様。此れをご覧下さい」

 俺は待っている間に、此の近く約1キロ内の猫を索敵していた。
 ルミナ様にサツキサンを見せるかは悩んだけど、何れは誰かに見せる事になる。ならば今見せてもいいだろうと考え、俺はルミナ様にサツキサンの画像を見せる。近所の猫はざっと30匹は写っていた。

「なんじゃ此れは?」
「俺の魔道具のサツキサンです、ルミナ様。サツキサンは特別な魔道具です。此れを見た事は内緒でお願いします」
「内緒か。内緒とは楽しいな。よし内緒じゃ!(微笑み)」
「ありがとうございます。サツキサン、この中の黒猫をソート出来る?」
「イエス、マスター。黒猫をソートします」

 猫の数は8匹迄減った。

「しゃ、喋ったのじゃ!」
「特別ですので。先ずは此処に写っている8匹からあたってみましょう」
「なんかワクワクして来たのじゃ(星キラ目)」

 俺とルミナ様と隠れているSP8名による俺の初クエストはこうして始まった。



「あの猫は?」

 俺は道端で寝ている黒猫を指差した。

「違うのじゃ」
「此れも違うと」

 俺はサツキサンに4つめのマークを付けた。探し始めて1時間。まあまあのペースだ。でも捨てたとなると近所にはいないかな?もう少し情報が欲しいなー。俺はとことこ歩きだす。

「スミマセ~ン」
「!」

 一番近くに隠れているSPの女の人に話しかけてみた。少し年上の綺麗な人だった。

「何か知ってる情報ありませんか?」
「………何故隠れているのが分かった?」
「館から気付いてましたよ。他の7人の方も」
「………貴様…何者だ…?」
「えっ、駆け出しの冒険者ですが…」
「お~。カーシャではないか!我じゃ!分かるか?」
「もしやルミナお嬢様ですか!全く分かりませんでした!」

…………。テンプレありがとうございます(汗)。

「よい所にいた。カーシャはエルマーニャの事を、何か知らぬか?」
「い、いえ。私は何も知りませんが(汗)」

 あっ、この人何か知ってる。

「其れは残念じゃ」

 あっさり信じてるし(苦笑)

「ルミナ様。お館で働く方々は皆さん誠実な方ですか?」

 俺は探りを入れるようにルミナ様に聞いてみた。

「当たり前じゃ!皆よく尽くしてくれる。其処におるカーシャも我の相談をよく聞いてくれる。心許せる大切な侍女じゃ。のう、カーシャ」
「は、はい!」

 肩がビクッとしたカーシャさん。

「ではカーシャさんは嘘などは申さないと?」
「当たり前じゃ!」
「そ、そう言えばあの日……(汗)」

 カーシャさんが慌てて話し始める。

「そう言えばあの日、エルマーニャを乗せた馬車は、北の方へ向かって行ったと聞いておりました(汗)」

 馬車で北にどうせ行くなら、北側の塀の方迄行くだろう。此処から北の塀迄は8キロはある。歩いて行くとなると結構な距離だ。さてどうしたものか。

「行くぞライト!」
「えっ?」
「行くぞと言っておる」
「結構距離有りますよ」
「エルマーニャがいるのじゃ。何を悩む」
「分かりました。行きましょう(笑顔)」

 俺達は北を目指した。ちなみにカーシャさんも一緒だ。他の7人は隠れながらついてきている。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...