異世界で『索敵』スキルが最強なの? お前らの悪事は丸っと全てお見通しだ!

花咲一樹

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第二章

第33話 サイドチェンジ4 舞い降りた黒き翼 《マリアベル》 前編

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 我が王都を襲った大地震。城から見る街並みは幾つもの建物が倒壊し、幾つかの火災が発生しているのが見えた。
 城内も壁が崩れ落ち、装飾品の数々が床に散乱している。

「姫。まだ足元が危険ですので、どうかお部屋でお待ち下さい」
「大丈夫だ。其より街の被害はどうなっている」
「死者も出ている様ですが、詳しい事はまだ報告を受けていません」
「警備隊はどうしてる」
「被害状況を見に行った後まだ戻られていないようです」

 歯痒い。王はなぜ軍を出して救助に向かわせないのか!何が『軍隊とは戦う為にあり、土木工事をさせるものではない』だ!我が父が生きていれば必ずや国民を助けに向かわせていたろうに……。

 5年前。前国王であった父と母は国内巡幸の際に事故で亡くなった。其の後の叔父アルカラムの手際の良さには舌を巻く。然も当然の如く王位に就いてしまった。父は叔父に暗殺された。状況が其れを物語っているが証拠は何もなかった。あの頃の10歳の私では何も出来る事はなかったのだが。

 私も今年で15になる。王からさっさと嫁ぎ先を言い渡されるかと思っていたが其れも無い。王が私を見るあの醜い目は、私を手込めにでもしようとしているようだ。もしそうなったら、私は王の其れを食い千切り、私も果てよう。この世界に面白いものなど何も無い。この鳥籠の国で生きていてもつまらないだけだ。

「私が直接見に行く」

 私は伴の者を数人連れ被害の出ている街へと足を運んだ。



「酷いな」
 街は至る所で建物の壁が崩れている。倒壊している建物もある。何れぐらいの人が被災しているのか想像も出来ない状況だ。
 街がこんな事になっているのに軍を動かさないなんて…
 私はこぶしを握り締め、悔しさで涙が出てきた。
 そんな私の横を街人達が走って通り抜けて行く。

「おい。お前達は何処に行くのだ」

 走りゆく男に問いかけてみた。

「姫様!わ、私達は学校に救助に向かう所です。救世主様達が人手を集めているとの事でしたので」

 男はそう言って走っていった。救世主?何者だ?
 この先に有るのはエレキア魔法学院…。私も駆け足でそちらに向かった。何が起きている?

 魔法学院を取り囲む塀の中に多くの人が集まっていた。半壊した校舎から瓦礫をよけ救助活動が行われている。皆が大きな声をあげ被災者に呼び掛けている。
 私は近くの女性に声をかけた。

「状況はどうなっている?」

「ひ、姫様!は、はい。瓦礫の下に子供達がいます。ぐ、軍は来ないのですか?」

 女性の悲痛な声に私はまた悔しさが込み上げてきた。

「ぐ、軍は来ない」
「な、何故……」

 何故。まったくだ。何故あの愚王は軍を出さない!

「其れで状況は?」
「救世主様達が此方に見えてからは人手も集まり出しました。瓦礫の中には33人の子供達がいると仰っていたとか」

 33人?何故分かる?

「救世主様とは何者だ?」
「聖下様の元に舞い降りた聖記の御告げの使徒との事ですが」

 聖記の使徒?地母神怒土の件りか…『大地母神が怒りを震う時、その者疾風迅雷の黒き翼を持ちて舞い降りる。その者駈りて民を救わん』……。何者だ?
 私は其の者達を探してみた。指揮を取る黒髪の男女……あれか!

 彼等は4人2組で活動しているようだ。
 私はもう少し近くで其の者達を見ようと歩み寄るが、鋭い気を当てられ立ち止まった。気を当てて来たのは黒服のメイド服の女性……?よく見ると彼等を警護する位置に複数のメイドが立っている。全部で10人。何処の者だ?
 黒服のメイド…。黒き翼……。…ナイトウイングス!ラグナドラグーンの特務機関ナイトウイングスが何故此処に!
 私は彼女達を警戒しつつ救助活動が続く学院へと近付いて行く。

「相沢君、其処の倒れている梁と左手の壁が上の瓦礫を支えてるから消しちゃダメだよ」
「了解だ渡辺さん!おりゃー!分解ーッ!」

 彼が触れた瓦礫が砂塵と化していく。魔導師?見たこともない魔法を使う彼が救世主なのか?ナイトウイングスの目的は何だ?

「相沢君。其の奥3mに3人」

 私は女性が手にしている小さな箱が気になる。何を見ている?メイドの視線を気にかけつつ近付いて行く。

「何を見ているのだ?」

 思い切って声をかける。女性は私のたたずまいを気にしたようだが説明をしてくれた。

「此処に有る黄色の点が子供達です。この場所に10名、少し離れて7名。向こう側にも12名と4名の33名が要救助者の数になります。向こう側でも私達の仲間が支援活動をしています」

 其の箱には黄色の光点が写し出されていた。何だ此の魔導具は?

「いたぞー!」

 相沢と呼ばれた男が声をあげる。近くの街人が幾人か近付いて救助を行う。瓦礫と砂塵の中から男の子が救出された。私も慌てて子供に駆け寄り声をかけた。

「頑張ったな!よく頑張ったな!」

 男の子は意識が朦朧もうろうとしている。汚れた顔には涙の跡が残っていた。怖かったよな、苦しかったよな、よく頑張った、よく頑張ってくれた。まだこんな子供達が、瓦礫の下に30人以上いる……。何故だ!何故この国は何もしようとしない!ナイトウイングスの目的がどうであれ、いま彼等は間違いなく救世主に違いない。

 男の子は布団が敷かれた人力荷車に乗せられた。すぐさま子供の親が駆け寄ってきた。両親の涙する姿。手を強く握り励ます姿。私は何も出来ない。何かをする力が無い。歯を噛み締め、こぶしを強く握り締め、悔しがる事しか出来ない。
(……此のままで良いのか)

 子供は大聖堂で治療をされるとの事を聞き、私は子供を乗せた荷車と共に大聖堂に向かった。
 大聖堂に向かう道は瓦礫が脇によけられていた。此れもナイトウイングスの指示があったようだ。其の手際の良さに感心してしまう。



 大聖堂の庭には多くの避難者が集まっていた。ざっと見ただけで100人は超えている。体に感じる地震が何度かあった。皆が不安な顔をして寄り添っていた。
 子供を乗せた荷車は大聖堂内へと入って行った。直ぐに僧侶が駆け寄って来て子供に治癒魔法を施す。子供の怪我が癒え両親も安堵の顔を浮かべた。良かった。本当に良かった。私も胸を撫で下ろした。

 大聖堂の中には怪我をした多くの人が体を横にしている。神の治癒魔法を持ってしても治らない怪我も有る。骨折や裂傷、内臓にしても刀等の切り傷は治るが程度にもよるし、治癒に時間も掛かる。

「ハルカ様、此方もお願いします」

 ハルカ様?
 辺りを見回すと黒髪の女性が走る姿が目に留まった。彼女は大怪我の男性に治癒魔法をかける。見たこともない光を放ち、男性の大怪我を忽ち治癒してしまった。

「ハルカ様!此方もお願いします!」

 大聖堂の僧侶達が彼女を立て続けに呼んでいる。それはつまり僧侶達では治癒出来ない怪我を、彼女が治しているという事だ。彼女もナイトウイングスか?

「姫様!」

 私は声を掛けてきた人物を探す。聖下様が近付いてきた。

「聖下様。大聖堂が健在で何よりです。街の方を見て来ましたが酷い有り様でした」
事此処ことここに至っても軍は動きませぬか?」
「済まない」
「いえ。姫様が悪い訳では有りますまい」
「私に力が無いのだ。これ程までに自分の無力さを痛感した事はなかった。所で聖下様、ラグナドラグーン国のナイトウイングスと思われる者達が、救助活動をしているようだが」
「……。彼等は聖記が示す所の救世主様達です。何卒お目溢しの程をお願いいたします」

 周りの人々が不安な目で私を見ている。私が彼等を捕らえる事を心配しているのだろう。出来るはずが無い。私は無力で彼等は有力なのだ。いま彼等を捕らえる事に何のメリットも無いのだから。

勿論もちろんだ」
「ありがとうございます」

 私を見る人々の顔に安堵の顔が浮かぶ。私が、いや私達王家の者が信用されていない。そういうことか。

「聖下様の知る状況を、教えてはくれませんか?彼等は何時からどうやって、この国に来ているのですか?」
「彼等は地震が発生して一刻も立たないうちに舞いられました。彼等がどのようにして来たかはお答え出来ません」
「そんなに早くにどうやって……」

 空から?いや空挺部隊ならば兵士が気がつく。いったいどうやって?いや注目すべきは其の迅速さだ。直ぐに駆けつけ救助をする。我が国が未だに出来ない事を迅速に行動する行動力。ラグナドラグーン国とはなんと素晴らしい国なのだろう。悔しい。我が国の情けなさがこんなにも悔しい気持ちにさせるとは。

「聖下様。ナイトウイングスの指揮を取っている方にお会いしたいのですが」

 聖下様は暫く思考したのち了解してくれた。

 聖下様の後に続き聖堂の奥へと進んで行く。其処には黒髪の男女とメイド服の女性が数人いた。
 聖下様が身なりの整った黒服の青年に頭を下げた!
 なんという事だ!
 聖下様が頭を下げる相手は国王ただ一人。しかも今の国王に対しては、頭を下げた所を見たこともない。其の聖下様が頭を下げたのだ。其れほどまでにあの青年を、聖下様は信頼し崇めているという事だ。

 金の刺繍を施した黒服の青年が此方に来た。

「マリアベル前国王姫様。私はラグナドラグーン国のナイトバロン、ライト・サクライと申します。此度は失礼と存じながらも、震災の救助活動に馳せ参じました。何卒ご容赦の程宜しくお願い致します」
「いや。此方こそ貴殿あなた方の迅速な対応に感謝致します」
「ありがとうございます。姫様には現在の状況をご説明致しますので、どうぞ奥の方へ」

 ナイトバロンの爵位を持つ青年、ライト・サクライに言われ奥へと進む。其処には黒板が有り、街の地図が貼られていた。いや描かれていた?

 其の地図上には青い点、黄色い点、黒い点が有る。脇のスペースには地震発生時刻:10時13分。其の下に2/48時間、青16、黄164人、黒44と書かれている。

「姫様。現状は残念ながら44名の死者が出ています。しかしまだ164名の人達が瓦礫の下で助けを待っています。この人達を何としても助けてあげたい」
「まだそんなに沢山の人が瓦礫の下に……」

 彼が言う言葉に迷いは無い。其の数字が真実であると語っている。しかし彼等の目的が未だに不明だ。

「なぜ貴殿方は我が国の人々を助けるのですか。いったい何が目的で」
「目的?人命救助ですよ」
「馬鹿な!有り得ない!先日、我が国は貴殿方の国に戦争を仕掛けようとした!そんな敵対する国の民を救うメリットは貴殿方には無いはずだ!」

「人助けにメリットは必要ですか?メリットが無いから黙って見ていろと?俺はそんな事は出来ない!瓦礫の下で苦しんでいる子供達を見殺しには出来ない!其れが敵対する国でもだ!人助けに国境線があってたまるか!姫様は子供達を見捨てられますか!この国の未来を見捨てられますか!」
「…………」

 人助けに国境線はない……。そんな考えを持つ者がいるのか?僧侶でさえ国外での大規模な奉仕活動は行わない。メリットが無いからだ。其れを彼は完全に否定した。そして彼は子供達をこの国の未来だと言った。敵国の未来をも案じている。私は彼が言う言葉を信じられないでいた。

「光斗君。お城から食べ物と調理道具、持って来たよ」
「彩月、ありがとう。スミマセ~ン!手の空いてる人は此方に来て下さ~い」

 ライト・サクライが沢山の食料と共に人を集めている。

「パンとか直ぐに食べれる物は、救助に行ってるみんなに届けて下さい。此方の食材は炊き出しにしますので、準備をお願いします。暖かい食事は心も暖まりますからね(笑顔)」

 私は彼の屈託の無い笑顔を見つめていた。

 ドキッ

 な、なんだ?胸が熱い…。

「其の食材はどうしたのだ?」

 私は沢山持ち込まれた食材についてライト・サクライに問いかけた。

「私達の国からの持ち込みです。お昼の時間ですので」
「わ、我が国の為に食事まで…」

 するとライト・サクライの脇にいたサツキと呼ばれた小柄で可愛い女性が話しかけてきた。

「災害の時にお腹が空くと不安を駆り立てるので、国を出発する前に光斗君が手配してくれたんです」
「俺達の食事も入っていますけど」
「光斗君、救助隊は食事持参が基本だよ」

 彼等はなんだ?余りにも手際がいい。

「な、何故そこまでしてくれる?」
「マリアベル様。私達の祖国、ラグナドラグーンではない遠い地にあった国では、災害救助は当たり前の事なのです。幼い頃から救助をする人達を沢山見て来ました。国も普通の人達も当たり前の様に救助活動をする国です。だから俺達にとっては当たり前の事なんです」

 有るのか、そんな国が?いや有るのだろう。だから彼等は当たり前の様に我が国民を助けてくれるのだろう。
 振り向けば幼い子供達が、食材を持って笑顔で走り回っている。普段は何処でも見れる子供達の笑顔が、今はとても愛おしく思う。ふと笑みが溢れた。

 バシッ!

 私は両頬を両の手で叩いた。

「私にも……私にも何か出来ないか!力の無い私にも人助けが出来ないか!」
「姫様。行動有るのみです。如月君、姫様を連れて1班に合流してくれ。中川君達が少し手こずっているみたいだ」
「了解した。合わせて食事も届けるよ」

 人助けに理由はいらない。私だって子供達を、国民を見捨てることなど出来ない。私はライト・サクライに指名された青年キサラギと共にサリマール学園へと向かった。



 あれから救助活動に加わり瓦解したサリマール学園の中から最後の一人を救いだした。

「姫様。お顔をが泥だらけになってしまいましたね」
「リコ。お前の顔も泥だらけだぞ」

 私は救助活動で仲良くなったリコ・ヤマナシと笑いあった。まだまだ救わなければならない人々は沢山いる。しかしサリマール学園の子供達は、無事に全員救助出来た。力の無い私が力になれた。清々しい思いに笑いが出るのは仕方ない事だ。

 キサラギがハンカチを差し伸べてきた。リコの話しでは彼女達の間では一番人気の男性らしい。しかし私は……。

「姫?顔が赤いですよ?」

 リコが私の顔を覗き込んでいた。

「姫様。もしかして如月君に照れてれます?」
「ち、違う!其のような事は無い!(汗)」
「山梨さん。姫様もどうやら光斗のようだよ(笑)」
「また光斗君?」
「またとは?」
「姫様、残念ながら光斗には既に5人の許嫁がいるんですよ」
「5人もいるのか!な、なら5人も6人も変わらないのではない……(カ~)」

 わ、私は何を言っているのだ!な、何だ此の胸を焼く熱いものは!(赤面)

「マリアベル様」 
「なんだリコ?」
「如月君の方を見て笑ってください」
「?」

 パシャ

「何をしたキサラギ?」
「記念撮影ですよ、姫様」

 キサラギがスマホなる魔導具を私に見せた。な、なんだ此れは!私とリコと風景が切り取られてスマホに写っている。

「な、なんだ此れは?」
「写真と言います」
「……」

 ライト達ナイトウイングスは非常に優れた能力と魔導具を有していた。どれも国家機密と言っていいレベルだ。其れを惜し気もなく使い、見せてくれる。

「良いのか?敵国の者に魔導具を見せてしまって?」
「多分、大丈夫…だよね?如月君?」
「ああ、大丈夫だよ。姫様、確かに俺達のスマホは国家機密レベルです。でも光斗が言ったんですよ。俺達の力がばれる事よりも、人の命の方が大切だってね。だから俺達は出し惜しみ無しで救助活動が出来るんです」

 あり得ない。我が国では絶対にあり得ない。いや、他国でもそうだ。敵国の国民を救うのに手の内を開かす行為をする筈がない。人命救助、其の一点の為に其れが出来る信念を、ライト達ナイトウイングスは持っている。

 そんな折、リコのスマホのベルが鳴った。彼等が持つスマホは驚異の魔導具と言っていいだろう。離れた場所間での連絡、複数グループでの情報共有等、作戦行動に於ける連携を確実に行える。

『山梨さん!撤退だ!』
「どうしたの光斗君?」
『王様に気付かれた!間も無く軍隊が大聖堂にやって来る。早く帰って来てくれ!』
「りょ、了解」

 リコは慌てて立ち上がった。

「みんなー!撤退だって~!軍隊が攻めて来ちゃうみたいだよ~!」
「マジか!」「此れからって時になんだよ~!」

 軍隊がライト達を捕らえに動いた?あの愚王!何をしようとしているのだ!
 駆け足で戻るリコ達を追い掛け、私も走り始めた。
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