花火の思い出

ちちまる

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砂浜の灯り、夏の約束

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海の香りが満ちる砂浜に、静かな波の音が響く。夏の終わりを飾る花火大会の夜、多くの家族やカップルが海辺に集まっていた。中でも、高校生の優希と彼の幼なじみである葵は、特別な想いを胸に砂浜を歩いていた。

「今年も綺麗だろうね、花火。」葵が期待に胸を膨らませながら言う。優希はただうなずき、心の中で何かを決心する。

二人がいつもの場所、岩場の陰にある小さな隠れたスペースにたどり着くと、目の前に広がる海と空が暮れゆく光に染まっていた。そして、その美しい景色を背景に、一つ目の花火が打ち上げられた。

色とりどりの花火が夜空を彩り、その光は砂浜に降り注ぐ。葵はその光を浴びながら、しばらく言葉を失っていた。優希はそんな葵の横顔をじっと見つめる。彼女の表情が、光と影で揺れている。

「葵、実は言いたいことがあるんだ。」優希の声が少し震えていた。葵は彼に顔を向け、緊張した表情を見せる。
「何?」
「これからも、ずっと一緒に花火を見よう。僕たちの夏の約束だよ。」彼の言葉に、葵の目に涙が溢れた。

「うん、約束!」葵は力強く答え、二人は手を取り合った。その瞬間、また一つ大きな花火が上がり、砂浜全体が明るく照らされた。それはまるで、二人の新しい門出を祝福するかのよう。

花火は次第にクライマックスを迎え、大輪の花が夜空に次々と咲き誇る。優希と葵はそのすべてを見上げながら、静かに未来を語り合った。花火の終わりとともに、夜は更に深まり、海からの風が少し冷たく感じられる。

しかし、二人の心は暖かく、砂浜に残された足跡は、長く続く彼らの物語を予感させるものだった。夜が明けても、二人の約束は確かなものとして、心の中で生き続けるのである。
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