花火の思い出

蒼空への繋がり

夏の終わりを感じさせる風が港町を優しく包み込む。毎年恒例の花火大会の日、人々の期待が空に向かって高まっていく。その中でも、高校三年の結衣と健人は、少し違った想いを胸に花火を待っていた。

「今年の花火、何色が一番多いかな？」結衣が夕暮れ色の空を見上げながら言う。
「赤かな、それとも青？」健人は笑いながら結衣の肩を軽く叩く。二人は幼なじみで、毎年この花火大会を一緒に見てきた。

公園の丘に座り、海からの風を感じながら、二人は夜空に打ち上げられる花火の開始を待った。すると、夜空を彩る最初の花火が打ち上げられ、華やかに夜を照らし出す。

「美しいね…」結衣が呟くと、健人は静かにうなずいた。花火の一つ一つが彼らの過去を彩るかのように、様々な色で輝いていた。

「結衣、実は言いたいことがあるんだ。」健人の声が少し震えていた。
「何？」結衣が振り向く。

「これからのこと、大学は遠くへ行くかもしれない。でも、結衣とのことは変わりたくない。だから…」
「健人…」

その時、空中で特別な花火が炸裂した。それは二人が初めて花火を見た時に健人が「キレイだね」と言った、青と白の組み合わせだった。

「この花火を見るたびに、俺たちのことを思い出してほしい。離れていても、心は一緒だよ。」

結衣の目に涙が溢れる。それは喜びと寂しさが混じった涙だった。健人はそっと彼女の手を握り、ふたりは再び空に上がる花火を見上げた。

夜空に咲く花火は、まるで二人のこれからを祝福するかのよう。結衣は健人の手を強く握り返し、
「約束、守るよ。どんなに離れていても。」

花火が終わり、静けさが訪れると、二人は新たな未来への誓いを固めた。この夜の記憶が、どれだけ時が経っても彼らの間で明るく輝き続けることを信じて。