夏の思い出

お盆休みの再会

お盆休み、それは日本のどこかで必ず訪れる家族の時間。東京で働くサラリーマンの康太は、この時期だけは故郷の秋田で過ごすことを欠かさなかった。彼にとって、家族と過ごす時間は、忙しい日常を忘れる貴重な機会だった。

「久しぶりだな、康太。ちゃんと帰ってきたか。」

空港で待っていたのは、父親の和也。彼の顔には数年の間に深く刻まれたしわが、増えていた。

「おう、父さん。変わらず元気そうで何よりだ。」

車を走らせながら、二人は昔話に花を咲かせる。田舎道を抜ける風は涼しく、都会の喧騒から解放された康太の心も、少しずつ解きほぐされていった。

家に着くと、母親の絵里子と妹の美香が出迎えてくれた。家族が一堂に会するのは、実に一年ぶりのことだった。

「康太、おかえり！ちゃんとご飯食べてる？」

「おかえりなさい、兄ちゃん！東京の話、いっぱい聞かせて！」

晩酌をしながら、家族は近況を報告し合う。康太は都会での生活、美香は大学の話、そして両親は町の最近の変化について語った。

翌日、康太は父と一緒にお墓参りに行った。彼らがお墓を掃除していると、隣にいた老夫婦が声をかけてきた。

「和也さん、お孫さんですか？」

「いや、息子です。東京で働いてましてね。」

お墓参りを終えた後、康太と和也は町を散策した。変わらぬ風景に、康太は幼い頃の記憶が蘇る。

「父さん、子供の頃は毎日こんな道を走り回ってたな。」

「ああ、お前はいつも元気だった。お前が家を出てから、静かになっちゃってな。」

散歩を終えて家に戻ると、絵里子が特別な夕食を用意していた。地元の食材で作った料理は、康太の懐かしい味がした。

「みんなで食べるご飯はやっぱり美味しいね。」

夕食後、康太は美香と話を深める。彼女が大学での生活に慣れてきた様子を聞き、安心した。

「兄ちゃん、私もいつかは東京で…」

「うん、その時はいつでも相談に乗るからね。」

お盆休みの最終日、家族は近くの祭りに出かけた。町中が賑わう中、康太は改めて家族の絆の大切さを感じた。

「来年もまた、みんなでこうして集まれたらいいな。」

和也がそう言うと、絵里子と美香も頷いた。康太は心から同意し、家族と過ごす時間の尊さを再認識した。

お盆休みが終わり、康太は再び東京へと戻ることになる。別れ際、彼は両親に深く頭を下げた。

「ありがとう、父さん、母さん。また帰ってくるから。」

「気をつけてな。待ってるからな。」

康太が東京へ戻っても、秋田の家では常に彼の帰りを待っている家族がいる。お盆休みは終わったが、彼らの心の中で、家族の絆は年中無休で続いていく。