交換日記の恋愛小説

ちちまる

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君の言葉に触れた日々

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春の訪れを感じるある日、私は高校の図書室で一冊の本を手に取っていた。新学期が始まり、クラス替えで新しい顔ぶれに囲まれる日々に少し疲れていた。そんな時、図書室の静けさが私を癒してくれた。

その日は特に忙しい日ではなかった。ほとんどの生徒が帰宅し、図書室には私ともう一人の生徒だけが残っていた。彼の名前は悠真。同じクラスだが、あまり話したことはなかった。彼は黙々と本を読んでいて、時折ペンで何かを書き込んでいた。

「何を読んでいるの?」私は思い切って声をかけた。

彼は顔を上げ、少し驚いた表情を見せた。「詩集だよ。自分の感じたことを書き留めてるんだ。」

その返事に興味を引かれ、私は彼の隣の席に座った。「詩を書くのが好きなんだね。私も読むのが好きだから、よかったら見せてくれない?」

彼は少し恥ずかしそうに笑いながら、自分のノートを差し出した。そこには、彼の心の内が丁寧に綴られていた。その日から、私たちは図書室で会うたびに話すようになった。

ある日、私は彼に提案した。「ねえ、交換日記をしてみない?」

彼は驚いたように私を見た。「交換日記?どうして?」

「お互いのことをもっと知りたいし、直接言えないことも書けるから。」

彼は少し考えた後、頷いた。「それは面白そうだね。やってみよう。」

こうして、私たちの交換日記が始まった。最初はお互いの趣味や日常の出来事を書き綴っていたが、次第に心の奥底にある感情や秘密を打ち明けるようになった。

「今日は放課後に見た夕焼けがとても綺麗だった。君にも見せたかったな。」

「僕も同じ夕焼けを見たよ。同じ空を見ていたんだね。なんだか嬉しいな。」

そんな何気ないやり取りが、私たちの絆を深めていった。彼の言葉はいつも優しくて、読んでいると心が温かくなった。

ある日、悠真が日記に書いた言葉が、私の心に深く刺さった。

「実は、僕には秘密がある。心臓に持病があって、定期的に治療を受けているんだ。」

その言葉を読んだ瞬間、私は涙がこぼれた。彼がそんな辛い状況にあるとは知らず、ただ楽しい日々を過ごしていた自分が恥ずかしかった。

「悠真君、そんなことがあったんだね。知らなくてごめん。でも、これからは一緒に支え合っていこう。君のことをもっと知りたいし、君の力になりたい。」

その後も、私たちは交換日記を通じてお互いを支え合った。彼の病状は一進一退だったが、私たちは毎日を大切に過ごしていた。

「今日も病院で検査があったけど、君の言葉を思い出して頑張れたよ。」

「私はいつでも君のそばにいるから、辛い時はいつでも頼ってね。」

そんな日々が続いていたある日、悠真が突然学校を休んだ。心配になった私は、彼の家を訪ねることにした。インターフォンを押すと、彼の母親が出てきた。

「悠真君は…?」

彼の母親は悲しそうな顔をして言った。「悠真は今、入院しているの。病状が悪化してしまって…」

その言葉に、私は愕然とした。何も知らずにいた自分が悔しくて、涙が止まらなかった。

次の日、病院を訪れた私は、ベッドに横たわる悠真を見つけた。彼は驚いた顔をした後、微笑んだ。

「来てくれてありがとう。でも、大丈夫だよ。少し休めばまた元気になるから。」

しかし、彼の顔には疲れが滲んでいた。私は交換日記を手に取り、彼に見せた。

「これからも続けよう。君の言葉が、私の力になるから。」

悠真は頷き、また少しずつ交換日記を続けるようになった。彼の病室で、私たちは静かに言葉を交わし合った。病気と戦う彼の姿に、私は何度も勇気をもらった。

ある日、彼は涙を浮かべながら、こう言った。

「もしも…僕がいなくなっても、君は前を向いて生きてほしい。君の笑顔が、僕の一番の宝物だから。」

その言葉に、私は何も言えなかった。ただ、彼の手を握りしめることしかできなかった。

その後、彼の病状は悪化していった。最後のページに彼が書いた言葉は、今でも私の心に深く刻まれている。

「君と過ごした時間が、僕にとっての宝物。ありがとう。そして、さようなら。」

彼が亡くなった日は、晴れ渡った空に美しい夕焼けが広がっていた。私は彼との思い出を胸に、これからも生きていくことを誓った。

彼との交換日記は、私の宝物となった。ページをめくるたびに、彼の優しい笑顔が浮かんでくる。彼が教えてくれた大切なことを胸に、私は前を向いて生きていく。

「君の言葉に触れた日々」は、私たち二人だけの大切な物語。いつまでも色褪せることのない、心の中に刻まれた思い出だ。
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