過去からの手紙

過去からの手紙

緩やかに黄ばんだ封筒が、アンナの郵便受けに静かに滑り込んだ。その封筒は遠い過去から届いたもののようで、古びた墨と筆圧の強さが年月を感じさせた。アンナは手紙を開く前に一息つき、自宅の小さなリビングで窓辺に座った。手紙を開けると、見知らぬ筆跡が彼女を過去へと誘った。

「愛しいアンナへ、

これが私の最後の手紙になるかもしれません。もし読んでいるなら、私はもうこの世にいないでしょう。私たちの時間は短かったですが、君のことを忘れる日は一日もありませんでした。

20年前、私たちは同じ大学に通っていました。君はいつも図書館の窓際で本を読んでいて、その姿が私の心を捉えました。しかし、運命は残酷で、私たちの関係は始まる前に終わりを迎えました。私の家族の問題で、突然海外に移住することになり、君に別れを告げることすらできませんでした。

私がどれだけ君を愛していたか、その全てをこの手紙に込めました。君への想いを胸に秘め、私は一生を終えることにします。もし可能なら、君の記憶の片隅に私のことを留めておいてください。

永遠に君を愛している、
トム」

アンナの手は震え、涙が頬を伝った。トムとの記憶は、彼が突然姿を消して以来、彼女の心の奥深くに封印されていた。手紙は彼からの最後のメッセージだった。彼の死を悼みつつも、アンナは彼が残した言葉に感謝した。彼の愛は、時間を超えて彼女の心に届いたのだ。

日が暮れていく中、アンナは久しぶりに大学のキャンパスを訪れた。図書館の窓際に立ち、かつて二人が共有したはずの景色を一人で眺める。風が彼女の髪を優しく撫で、まるでトムがそこにいるかのように感じられた。彼女は深く息を吸い込み、トムへの感謝とともに、新たな一歩を踏み出す勇気を胸に秘めた。

過去からの手紙は、アンナにとって予期せぬ贈り物であり、心の傷を癒す薬となった。彼女は再び前を向き、人生の次の章へと歩き出した。過去の愛が教えてくれたことは、時として、最も深い教訓となる。