ポッキーゲームの恋愛小説

ちちまる

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ポッキーと唇の距離

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夕焼けが校舎をオレンジ色に染める放課後、生徒たちは文化祭の準備で大忙しだった。教室では、高橋ユウと佐藤アヤが飾り付けをしていた。ユウは真剣な表情でポスターを貼り付けており、アヤはテーブルクロスを整えていた。二人は小学校からの親友で、何でも話し合える関係だった。

「ユウ、もう少し右かな?」アヤが微笑みながら言うと、ユウは振り返り、彼女の指示に従ってポスターを貼り直した。

「こう?」ユウが尋ねると、アヤは満足げに頷いた。「うん、完璧!」

その時、クラスの中心にいる藤本ミカが大声で提案した。「ねえ、ちょっと休憩してポッキーゲームしない?」

教室内は一瞬静まり返った後、すぐに興奮した声が上がった。ポッキーゲームは、ポッキーの両端を二人が咥え、どちらが最後まで食べられるかを競うゲームで、唇が触れ合う可能性もあるためドキドキするものだった。

「誰が最初のペアに挑戦する?」ミカが笑顔で尋ねると、クラスメイトたちは次々と名前を挙げ始めた。

「ユウとアヤがいいんじゃない?」誰かが言い出すと、教室全体が賛成の声で満ちた。

ユウとアヤは顔を見合わせ、少し赤面しながらも頷いた。「いいよ、やってみる。」ユウが言うと、アヤも微笑んで同意した。

ミカがポッキーの箱を持ってきて、ユウが一本を取り出した。ユウが片端を口にくわえると、アヤも反対側をくわえ、二人の間に緊張感が漂った。

「じゃあ、始め!」ミカの合図で二人はゆっくりと顔を近づけていった。最初は笑いながらも、ポッキーが短くなるにつれて真剣な表情に変わっていった。

「負けないよ、ユウ。」アヤが挑戦的な笑みを浮かべた。

「僕だって負けない。」ユウも同じく笑い返した。

ポッキーが短くなるにつれ、二人の心臓は高鳴り、距離がどんどん縮まっていった。ついに、唇が触れ合うか触れないかの瞬間、ポッキーがパキッと折れ、二人は唇が軽く触れ合った。

周囲から歓声が上がり、ユウとアヤは顔を赤らめながらも笑い合った。「なんか、すごくドキドキしたね。」アヤが照れ笑いを浮かべた。

「うん。でも、楽しかった。」ユウも同意し、二人は自然と手を握り合った。

その夜、文化祭の準備が終わり、教室を出た二人は、夕焼けが広がる校庭を歩いていた。静かな空気の中で、アヤがふと口を開いた。「ユウ、今日のポッキーゲーム、ちょっと特別だったよね。」

ユウは頷きながら答えた。「そうだね。でも、なんで特別だったんだろう?」

アヤは少し考え込んだ後、笑顔で言った。「たぶん、私たちがずっと一緒にいたからだよ。いつも一緒にいるけど、今日はなんか違った感じがした。」

ユウはその言葉に驚きつつも、心の中で同じ気持ちを抱いていることに気づいた。「アヤ、実は僕も同じことを思ってた。」

アヤは驚いた顔をしながらも、すぐに笑顔になった。「やっぱりね、私たちって本当に気が合うんだね。」

二人は夕陽が沈むまで校庭で語り合い、そのまま一緒に帰宅した。心の中でお互いの気持ちを確認し合い、新たな一歩を踏み出すことを感じていた。

文化祭当日、学校は活気に溢れ、様々な催し物が行われていた。ユウとアヤのクラスのカフェも大盛況で、多くの生徒たちが訪れていた。忙しいながらも楽しい一日が過ぎ、最後にはクラス全員で打ち上げをすることになった。

打ち上げの席で、再びミカが提案した。「ねえ、またポッキーゲームしない?今度はみんなで!」

全員が賛成し、再びポッキーの箱が回された。ユウとアヤも再びペアになり、ポッキーを咥えて顔を近づけていった。前回よりもさらに緊張感が漂う中、二人は再び唇が触れ合う瞬間を迎えた。

その瞬間、アヤがそっと目を閉じ、ユウも自然と目を閉じた。唇が触れ合い、甘いポッキーの味と共に、二人の心は一つになった。

打ち上げが終わり、ユウとアヤは一緒に校庭を歩いていた。「ユウ、今日は本当に楽しかったね。」

「うん、僕も。アヤと一緒に過ごせて、本当に幸せだよ。」

アヤはユウの手を握り返し、微笑んだ。「これからも、ずっと一緒にいようね。」

ユウも微笑み返し、心の中で確かに感じた。アヤとの時間が、これからもずっと続くことを。

その後、二人は互いに支え合いながら、学校生活を楽しみ続けた。ポッキーゲームが二人を結びつけた特別な思い出となり、時折その話題を振り返りながら、未来に向けて共に歩んでいくことを誓った。

文化祭の夜空の下、二人は手を取り合い、新たな一歩を踏み出すことを決意した。その決意は、これからの未来に向けた大切な一歩であり、二人の心に永遠に刻まれることとなった。

ポッキーゲームから始まった二人の恋物語は、甘くて切ない初恋の予感と共に、新たな未来へと続いていった。ポッキーの魔法がもたらしたこの瞬間を、二人はずっと大切にしていくことを心に誓い、これからも共に歩んでいったのだった。
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