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1.出逢い
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高校が始まるとまたつまらない毎日がやってきた。
中学時代、馬鹿騒ぎしていた連中はいなくなった。クラスメイトは、ある程度の常識は備えている者が多かったのか、僕に対するいじめはなくなった。だからといって過ごしやすい環境になったかどうかは別だ。
休み時間のたび、中身のない、くだらない会話ばかりするクラスメイトたちにうんざりしていた。僕はまた話し相手をなくしてしまった。
それに、この頃になると僕は自分が特別な人間ではないのではないかと薄々気づき始めていた。それでもその疑念を振り払うように孤高を気取り、周りとは交わらなかった。
高校では失敗したが大学で逆転してやると心に誓い高校三年間の青春は勉強に捧げた。石山と同じ大学に行って彼とまた語り合うんだ。その時は酒でも飲みながら高校の同級生の馬鹿さ加減を話してやろう。
そして今、僕は関西の三流大学に通っている。僕は特別な人間ではなかったのだ。人生で一番楽しいであろう高校時代の青春を捧げたのにもかかわらず僕の学力では石山が目指す国立大学を受けることすらできなかった。
それでも関西の有名難関私立には合格するだろうと楽観的に捉えていたが、結果は散々なものだった。
結局、駆け込むようにして三流大学を受けた。合格通知を受け取ったとき、まったく喜びというものを感じなかった。
大学に通い始めてもちっとも楽しくなかった。周りは馬鹿ばっかりなのだから。そしてはたから見ると自分もその馬鹿の一人だということに嫌気がさした。
毎日のようにどこで間違えたのかと半生を振り返った。
子供の頃は、自分はすごい大人になると思っていた。
そして気づけばその大人になるまであと一ヶ月半だ。きっと誕生日を迎えて成人しても大して変わることはないだろう。僕は特別な人間ではなかったのだ。
そしてその絶望は七月のある日僕に一大決心をさせた。
その日、僕は大学に行く電車で酔っ払いの男に絡まれた。午前中から酒を飲んでいるやつなんてまともじゃない。ちょうど降りる駅だったし無視を決め込むことにした。
だが男はそれが気に食わなかったらしく、電車を降りようとする僕の腕を掴んで罵声を浴びせた。
それでも無視を続けると男は僕の胸ぐら掴んでさらに怒鳴りつけた。男の唾が顔に飛んで気持ち悪い。
カチンときた僕は男の顔を睨んだ。酔いのせいか、それとも怒りからか男は顔を真っ赤にしていた。左頬のあたりにある紫色に変色した痣だけが暗さを放ち異様に目立っている。
男はしばらくの間、僕を罵ると気が済んだのかどこかへ行ってしまった。
意味がわからない。僕がいったい何をしたと言うんだ。ただでさえ足取りが重い通学だ。それなのにどうしてこんな目に遭わなければならないんだ!
顔に飛んだ唾をハンカチで拭った。でもやっぱり気持ち悪い。駅のトイレで顔を洗おう。
そう考えた時、電車が動いていることに気がついた。慌てて外を見ると降りる駅が遠ざかっていく。
大学に着いてもまだ腹の虫が収まらかった。
乗っていた電車が特急だったこともあって大幅な遅刻だ。
自慢じゃないが入学して今まで無遅刻無欠席だ。それがあんな酔っ払いのせいで記録が途絶えたというのは非常に腹立たしい。
それでも授業は受けなきゃいけない。しかも次の授業は、よりによって門から一番遠い大講義室だ。荒れた気分のまま講義室に急いだ。
授業は半分近く終わっているけど、欠席するよりマシだろう。
息も切れ切れ、講義室前に到着すると一番後ろのドアから静かに中に入った。
その直後、「今入って来た君、何時だと思っている」とマイク越しの声が室内に響いた。どきりとして前を見やると黒板の前に立つ教授がこちらを睨んでいた。
僕は「すいません!」と腰を折って、近くの空席に座った。
「やる気がない人は来なくて結構だ。出ていきなさい。早く!」
教授のしかめっ面が僕に向けられる。それに釣られたように僕の周囲に座る学生も野次馬的視線を向けてくる。
それは波紋のように瞬時に広がっていった。
あっと言う間にほぼ満員の講義室でほとんどの学生が僕を見ていた。中には友達と何やら話しながら嗤っているやつもいた。
視線、視線、視線。
四方八方からの悪意の視線は僕の弱り切った心を押し潰した。
急に目の前の景色がここではないどこかのように見えた。まるでテレビでも見ているみたいだ。そして音はすべてが湾曲して聞こえて気持ち悪い。
鼓動が激しくなるのを感じる。息も苦しい。
どうして……?
どうして、僕がこんな目に会わなければならない? 本当なら今ごろ石山と楽しい大学生活を送っているはずだったのに。今までの我慢はなんだったんだ……?
その時、僕の中で何かが崩れる音がした。
講義室を飛び出すとそのまま帰りの電車に飛び乗った。
アパートに戻ると手も洗わずに布団に突っ伏した。涙が次から次へと溢れてくる。
この先の人生もこんなことばかりだろう。僕は特別な人間ではないんだ。僕が見下していたやつらと同じ凡人なんだ。いや、それどころか友達が一人もおらず、何か自慢できる才能や特技があるわけでもない。夢だってない。そんな僕は凡人以下なんだ。
僕は特別な人間になるために生きてきた。でもそれが絶望的だと分かった今、僕には生きる意味がない。
そうだ、死のう。
そして来世に期待しよう。その方がよっぽど賢明だ。
その日、僕は死ぬことを決めた。
決行日は一ヶ月半後の九月八日。僕の誕生日で僕が大人になる日。
気がつくと布団に涙の模様ができていた。こんなに泣いたのはいつ以来だろう。しかし、おかげで少し気分が落ち着いてきた。
しゃくりあげながら、ティッシュで泣きはらした目を拭った。目の周りがヒリヒリする。
僕は布団に仰向けに寝転がった。天井の木目をぼーっと見ていると、ふとあることを思いついた。
——残された日々を有意義に過ごすために計画を立てよう。
僕は起き上がるとリュックの中からルーズリーフを一枚出した。そこに死ぬまでにやりたいことを書き出すのだ。
一番はじめに『大学に行かない』と書いて筆が止まった。
いきなりの思いつきで始めたが「死ぬまでにやりたいこと」なんてそう簡単に思いつかない。
僕は死ぬまでに何をしたいのだろう……。
今までの人生で我慢していたことやいつかやってみたいと思っていたことを振り返ってみる。
そうして頭をひねって出した〈やりたいこと〉を箇条書きでリストに追加していく。
三時間ほどかけて百個の〈やりたいこと〉が紙の上に並んだ。
ここから〈やりたいこと〉を実現可能なものと実現不可能なものに振り分けていく。『大学に行かない』や『旅行に行く』は実現可能だ。
一方で『宇宙に行きたい』や『車の免許をとる』という一般人には無理だったり、時間やお金がかかるものは却下だ。そういった実現不可能な項目に取り消し線をいれていく。
困ったのは『ライブに行く』などのできなくもない項目をどうするかだった。免許をとるほどお金がかかるわけではないから、金銭面ではクリアだとしても、そもそも自分の好きなアーティストのライブが開催されていなければ話がはじまらない。それにチケットが取れるかどうかという問題もある。
悩んだ結果、『ライブに行く』は保留にしてできそうならすることにした。
そうした作業を繰り返し、厳選に厳選を重ねた結果、四つの〈やりたいこと〉が残った。
気がつけば夜の帳がすっかり下りている。
街灯の光が差す薄暗い部屋の中で、僕は完成したリストを初めから読み直した。
一つ目、『大学に行かない』
あと一ヶ月半でこの世を去る僕には大学の授業なんて無駄だ。それにもう七月も下旬に差し掛かっている。授業も今週で終わりだ。来週からは期末考査があるけど、成績の出る九月末には僕はこの世にいないから関係ない。
それに死ぬまでの限りある時間を苦痛なことに使いたくない。
二つ目、『実家に帰る』
自室の片づけもあるし、死ぬ前に一度、家に帰ろう。死んだあと、片づけをさせるのは家族に申し訳ない。極力手間をかけないように自分のものは今のうちに処分してしまおう。
それから家族への別れもしたい。両親に感謝の一つでも言わなければ。
三つ目、『遠くへ旅行に行く』
決まった目的地があるわけじゃない。ただ、ここじゃないどこか、できれば遠くに行ってみたい。きれいな景色が見える場所がいいな。
そしてリストの最後は『石山と会う』
これが一番楽しみだ。久しぶりに石山と会って昔のことを語ろう。
完璧だ。これで人生の最後は楽しい思い出で終わることができる。
ただ石山と再会できればの話だが。彼と最後にメールしたのはいつだっただろう。
高校に入った最初のうちは学校のクラスメイトに対する愚痴や行きたい大学のこと、中学時代の昔話に花を咲かせていたが、高校一年の夏を境に段々と連絡するペースが下がっていき二年になる頃にはほとんど交流がなくなっていた。だから僕は彼が希望の大学に行ったか知らない。もしかしたら、志望校を変えているかもしれないし、すでに関西にはいないかも知れない。
それでもまずは連絡しないことには始まらない。リュックに入れっぱなしだったスマホを取り出しメールアプリを開いた。
宛先が石山基樹と表示されたメール作成画面とにらめっこしながらなんと打ち込むべきか頭を悩ませた。昔のようにくだけた調子で行くべきか、それとも礼儀正しい硬い文章で行くべきか…。
熟考の末、間をとって当たり障りのない文面のメールを作成した。あとはこれを送信するだけだ。
なのに、なかなかそれを実行に移せなかった。
もし、送っても無視されたら?
もし、メアドが変わっていたら?
そういう嫌な考えが頭をよぎってしまいなかなか指が動かなかった。
それでも覚悟を決めて送信ボタンをタップした。軽やかな送信音とともにメールは送信されていった。
中学時代、馬鹿騒ぎしていた連中はいなくなった。クラスメイトは、ある程度の常識は備えている者が多かったのか、僕に対するいじめはなくなった。だからといって過ごしやすい環境になったかどうかは別だ。
休み時間のたび、中身のない、くだらない会話ばかりするクラスメイトたちにうんざりしていた。僕はまた話し相手をなくしてしまった。
それに、この頃になると僕は自分が特別な人間ではないのではないかと薄々気づき始めていた。それでもその疑念を振り払うように孤高を気取り、周りとは交わらなかった。
高校では失敗したが大学で逆転してやると心に誓い高校三年間の青春は勉強に捧げた。石山と同じ大学に行って彼とまた語り合うんだ。その時は酒でも飲みながら高校の同級生の馬鹿さ加減を話してやろう。
そして今、僕は関西の三流大学に通っている。僕は特別な人間ではなかったのだ。人生で一番楽しいであろう高校時代の青春を捧げたのにもかかわらず僕の学力では石山が目指す国立大学を受けることすらできなかった。
それでも関西の有名難関私立には合格するだろうと楽観的に捉えていたが、結果は散々なものだった。
結局、駆け込むようにして三流大学を受けた。合格通知を受け取ったとき、まったく喜びというものを感じなかった。
大学に通い始めてもちっとも楽しくなかった。周りは馬鹿ばっかりなのだから。そしてはたから見ると自分もその馬鹿の一人だということに嫌気がさした。
毎日のようにどこで間違えたのかと半生を振り返った。
子供の頃は、自分はすごい大人になると思っていた。
そして気づけばその大人になるまであと一ヶ月半だ。きっと誕生日を迎えて成人しても大して変わることはないだろう。僕は特別な人間ではなかったのだ。
そしてその絶望は七月のある日僕に一大決心をさせた。
その日、僕は大学に行く電車で酔っ払いの男に絡まれた。午前中から酒を飲んでいるやつなんてまともじゃない。ちょうど降りる駅だったし無視を決め込むことにした。
だが男はそれが気に食わなかったらしく、電車を降りようとする僕の腕を掴んで罵声を浴びせた。
それでも無視を続けると男は僕の胸ぐら掴んでさらに怒鳴りつけた。男の唾が顔に飛んで気持ち悪い。
カチンときた僕は男の顔を睨んだ。酔いのせいか、それとも怒りからか男は顔を真っ赤にしていた。左頬のあたりにある紫色に変色した痣だけが暗さを放ち異様に目立っている。
男はしばらくの間、僕を罵ると気が済んだのかどこかへ行ってしまった。
意味がわからない。僕がいったい何をしたと言うんだ。ただでさえ足取りが重い通学だ。それなのにどうしてこんな目に遭わなければならないんだ!
顔に飛んだ唾をハンカチで拭った。でもやっぱり気持ち悪い。駅のトイレで顔を洗おう。
そう考えた時、電車が動いていることに気がついた。慌てて外を見ると降りる駅が遠ざかっていく。
大学に着いてもまだ腹の虫が収まらかった。
乗っていた電車が特急だったこともあって大幅な遅刻だ。
自慢じゃないが入学して今まで無遅刻無欠席だ。それがあんな酔っ払いのせいで記録が途絶えたというのは非常に腹立たしい。
それでも授業は受けなきゃいけない。しかも次の授業は、よりによって門から一番遠い大講義室だ。荒れた気分のまま講義室に急いだ。
授業は半分近く終わっているけど、欠席するよりマシだろう。
息も切れ切れ、講義室前に到着すると一番後ろのドアから静かに中に入った。
その直後、「今入って来た君、何時だと思っている」とマイク越しの声が室内に響いた。どきりとして前を見やると黒板の前に立つ教授がこちらを睨んでいた。
僕は「すいません!」と腰を折って、近くの空席に座った。
「やる気がない人は来なくて結構だ。出ていきなさい。早く!」
教授のしかめっ面が僕に向けられる。それに釣られたように僕の周囲に座る学生も野次馬的視線を向けてくる。
それは波紋のように瞬時に広がっていった。
あっと言う間にほぼ満員の講義室でほとんどの学生が僕を見ていた。中には友達と何やら話しながら嗤っているやつもいた。
視線、視線、視線。
四方八方からの悪意の視線は僕の弱り切った心を押し潰した。
急に目の前の景色がここではないどこかのように見えた。まるでテレビでも見ているみたいだ。そして音はすべてが湾曲して聞こえて気持ち悪い。
鼓動が激しくなるのを感じる。息も苦しい。
どうして……?
どうして、僕がこんな目に会わなければならない? 本当なら今ごろ石山と楽しい大学生活を送っているはずだったのに。今までの我慢はなんだったんだ……?
その時、僕の中で何かが崩れる音がした。
講義室を飛び出すとそのまま帰りの電車に飛び乗った。
アパートに戻ると手も洗わずに布団に突っ伏した。涙が次から次へと溢れてくる。
この先の人生もこんなことばかりだろう。僕は特別な人間ではないんだ。僕が見下していたやつらと同じ凡人なんだ。いや、それどころか友達が一人もおらず、何か自慢できる才能や特技があるわけでもない。夢だってない。そんな僕は凡人以下なんだ。
僕は特別な人間になるために生きてきた。でもそれが絶望的だと分かった今、僕には生きる意味がない。
そうだ、死のう。
そして来世に期待しよう。その方がよっぽど賢明だ。
その日、僕は死ぬことを決めた。
決行日は一ヶ月半後の九月八日。僕の誕生日で僕が大人になる日。
気がつくと布団に涙の模様ができていた。こんなに泣いたのはいつ以来だろう。しかし、おかげで少し気分が落ち着いてきた。
しゃくりあげながら、ティッシュで泣きはらした目を拭った。目の周りがヒリヒリする。
僕は布団に仰向けに寝転がった。天井の木目をぼーっと見ていると、ふとあることを思いついた。
——残された日々を有意義に過ごすために計画を立てよう。
僕は起き上がるとリュックの中からルーズリーフを一枚出した。そこに死ぬまでにやりたいことを書き出すのだ。
一番はじめに『大学に行かない』と書いて筆が止まった。
いきなりの思いつきで始めたが「死ぬまでにやりたいこと」なんてそう簡単に思いつかない。
僕は死ぬまでに何をしたいのだろう……。
今までの人生で我慢していたことやいつかやってみたいと思っていたことを振り返ってみる。
そうして頭をひねって出した〈やりたいこと〉を箇条書きでリストに追加していく。
三時間ほどかけて百個の〈やりたいこと〉が紙の上に並んだ。
ここから〈やりたいこと〉を実現可能なものと実現不可能なものに振り分けていく。『大学に行かない』や『旅行に行く』は実現可能だ。
一方で『宇宙に行きたい』や『車の免許をとる』という一般人には無理だったり、時間やお金がかかるものは却下だ。そういった実現不可能な項目に取り消し線をいれていく。
困ったのは『ライブに行く』などのできなくもない項目をどうするかだった。免許をとるほどお金がかかるわけではないから、金銭面ではクリアだとしても、そもそも自分の好きなアーティストのライブが開催されていなければ話がはじまらない。それにチケットが取れるかどうかという問題もある。
悩んだ結果、『ライブに行く』は保留にしてできそうならすることにした。
そうした作業を繰り返し、厳選に厳選を重ねた結果、四つの〈やりたいこと〉が残った。
気がつけば夜の帳がすっかり下りている。
街灯の光が差す薄暗い部屋の中で、僕は完成したリストを初めから読み直した。
一つ目、『大学に行かない』
あと一ヶ月半でこの世を去る僕には大学の授業なんて無駄だ。それにもう七月も下旬に差し掛かっている。授業も今週で終わりだ。来週からは期末考査があるけど、成績の出る九月末には僕はこの世にいないから関係ない。
それに死ぬまでの限りある時間を苦痛なことに使いたくない。
二つ目、『実家に帰る』
自室の片づけもあるし、死ぬ前に一度、家に帰ろう。死んだあと、片づけをさせるのは家族に申し訳ない。極力手間をかけないように自分のものは今のうちに処分してしまおう。
それから家族への別れもしたい。両親に感謝の一つでも言わなければ。
三つ目、『遠くへ旅行に行く』
決まった目的地があるわけじゃない。ただ、ここじゃないどこか、できれば遠くに行ってみたい。きれいな景色が見える場所がいいな。
そしてリストの最後は『石山と会う』
これが一番楽しみだ。久しぶりに石山と会って昔のことを語ろう。
完璧だ。これで人生の最後は楽しい思い出で終わることができる。
ただ石山と再会できればの話だが。彼と最後にメールしたのはいつだっただろう。
高校に入った最初のうちは学校のクラスメイトに対する愚痴や行きたい大学のこと、中学時代の昔話に花を咲かせていたが、高校一年の夏を境に段々と連絡するペースが下がっていき二年になる頃にはほとんど交流がなくなっていた。だから僕は彼が希望の大学に行ったか知らない。もしかしたら、志望校を変えているかもしれないし、すでに関西にはいないかも知れない。
それでもまずは連絡しないことには始まらない。リュックに入れっぱなしだったスマホを取り出しメールアプリを開いた。
宛先が石山基樹と表示されたメール作成画面とにらめっこしながらなんと打ち込むべきか頭を悩ませた。昔のようにくだけた調子で行くべきか、それとも礼儀正しい硬い文章で行くべきか…。
熟考の末、間をとって当たり障りのない文面のメールを作成した。あとはこれを送信するだけだ。
なのに、なかなかそれを実行に移せなかった。
もし、送っても無視されたら?
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