オーデンスのΩの物語《I》

風鈴

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《第一部》一途なΩは幼馴染のαに恋をする

入学式

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 王立トルベール学園は中等部と高等部の6年一貫校である。性徴も関係なく入学試験を受けて合格すれば入学できる。数年前迄は貴族しか入れなかったが、今では庶民の子供でも入学試験を受けて合格すれば入学できるようになっている。
 地方からの生徒には寄宿舎も併設されていてそれは性別と性徴で分かれている。貴族は寄宿舎に入る場合は生活費等別途料金が必要だが、庶民の子供の場合は無料となっている。また高等部になるとΩとβの女子はマリア棟と言われるΩ専用の棟で学ぶ。そこには親兄弟、婚約者でもαの訪問入室は禁じられていて、教える教師はもちろんこの棟に関わる人間は全て番持ちのΩかβしか入れない。と言う徹底ぶりである。
 加えてΩは高等部の2年ぐらいから発情期が始まるのでそれに対して常駐の医師や看護師もいて地方からのΩが発情期を迎えても隔離して対応する等魅力的な施設であった。
 トルベール学園では中等部3年生からは単位制なので、優秀ならば高等部1年生になれば卒業単位数を満たすといつでも卒業できる。
 特に、貴族のΩ達は発情期が始まって以降は番になるまでの期間に不測の事態を心配して家や番が軟禁してしまう事が起きていた。勉強半ばで退学を余儀なく選択する者が多かった。
 それを回避する為にΩのカリュキュラムを見直して、学園に通えなくても家で勉強をしてレポートを提出するれば単位が取れて卒業できるように便宜を図っている。Ωが、発情期で勉強を諦めないようにサポートしてくれる体制が出来つつあった。トルベール学園が、Ωに受け入れられている理由でもある。勿論、Ωであっても飛び級制度を利用することはできる。
 これらの学園の改革は、アスラン王国アン王妃が中心になって推進して来た。彼女は、『女であろうと、Ωであろうと学びたい気持ちに戸を建てるのはおかしい。これからは、アスラン王国の全ての人々が学べる仕組みを作りたい』と宣言する。
 そして、少しづつではあるが、番った後に働く者や大学に通う者も出ている。Ωの社会進出が始まりつつあった。
 今から3年前のトルベール学園中等部入学式に入学試験会場で見なかった人物が入ってきた。それも途轍もなく美しい男が講堂の中を堂々と前に向かって歩いて行く。中等部の制服を纏いひときわ目立っている。それを見つめて講堂内は一瞬静寂になる。彼は、ゆっくりと前の空いている席に座ると前の壇上を見つめた。
 彼を見た貴族の保護者席から
『ルナ・オーデンス伯爵?違う、あの方は亡くなってしまった』
『良く似ている、まるで生き写しではないか、ってことは?』
『それじゃ、彼が、あの方が亡くなって以来行方不明だったリュウール・オーデンス?何とルナ様に似てる。何と言う美しさだ、輝いている。絶世のΩの子供はやはり天使の様なΩだ』
 と言う囁き声が、保護者席から溢れている。
 リュウールは、そんな声等を無視して前を見つめていた。
『あれは、席順から言って王族だな。って事はあれが、第二王子のセバスチャン殿下だな、その横にいるのが3年首席か、誰だろう?格好が良い人だ、身体つきからしてαだな、顔も好み』
 と思って微笑む。周りはリュウールに釘付けだからその微笑みを見て騒ぎ出す。
 その時後ろの席から
『あれって、クラーブ・グランデール様じゃない?』
『そうだ、お家の仕事の関係で去年は殆ど学園に顔を見せてなかったって聞いてたけど、それでも首席って凄いよ』
『もちろんαだよね』
『当たり前だよ』
『やっぱり生粋のαは頭も全て良いのね』
『あんな方と番たら幸せになるよね』
『ここだけの話狙っている人は多けれど本人はもう決めた人がいるからって見合い話も告白も全て断っているんだって』
『そんな、意中の人って誰よ』
『誰かは教えてくれないらしい』
『でも、夢でも良いからデートしたい』
『ほんとだね』
 うっとりと話す声を聞いて、リュウールは、幼馴染のクラーブだと思ってもう一度彼を見ながらひとり言を呟く。
『あれが、クラーブなんだ、格好良すぎるよ。幼馴染のリュウールですって言えば話せるかなぁ?そして、…あぁそんな事に成れば嬉しいけど思うだけなら大丈夫だよな』
 と思うと顔が赤く火照って来た。
 クラーブの方もリュウールを見つけてから目を離せなくなっていた。
『やっぱり、リュウールだ。ルナおばさんにそっくりだ。だけどあの無防備な雰囲気は周りの視線なんてお構なしなんて信じられない。横に座って周りを威嚇したい』
 と思っていると横からセバスチャン殿下が
「お前、何を考えてるんだ、こんな所で威嚇はダメだろ」
「えっ、すまん、ありがとうございます」
 そう答えながら
『こんな所で俺が威嚇フェルモンを出すなんて親父に知れたら懲罰モンだ。だけど、あれはどう見ても反則だろう、可愛すぎる』
 クラーブも胸が高鳴るのであった。
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