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第一章
信じてくれる人
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久乃が、紅の決意表明を聞いて、大声で言う。
「よく言った。紅さんが、遊女になってでも正看護師になりたいと言う強い決意があるなら私が協力する」
久乃の言葉を聞いて紅は、驚いて久乃を見つめる。
「えっなんで」
「久乃先生も俺もだが、遊女として沈むことが悪いとは思っていない。次への架け橋になるのなら嬉しい」
良弥も言いながらも久乃の入れ込み様に少し違和感を感じていた。そして次の話は衝撃だった。
「紅さんの支度金は、私が用意する。支度金まで借金しては君の正看護師への道のりが遠くなる。それに准看護師の研修を後からするともっと遠回りすることになる」
紅はあまりの事に何も言えずに戸惑っていた。久乃にそこまでしてもらうことは絶対におかしすぎると思った。久乃は続けた。
「そこで、紅は『藤ノ井』で遊女をするが、週に3回は朝から昼まで診療所で働く。本来3年の実習期間が要るが5年間働いて実習期間を埋める。それと、私は、αだが女性なので遊郭には入れるが、遊女の身体を診る定期健診には携わることができない。その代わりに男性医師が1カ月に一回は遊女の検診をする義務があるが、今まで看護師を連れていけずに仕事が完璧でないため病気を見落としてしまう事があった。それを防ぐために紅さんには看護師として手伝ってもらう。その看護師で働く給料と私が貸す支度金と相殺すれば良い。夜遅い遊女の仕事、朝の早い准看護師の仕事、大変だが君の今の気迫を持っていればできるだろう」
「そこまで甘えては久乃先生に何も返せない、自分には重すぎます」
紅は今までの人生でそこまで期待されたことは無かった。自分に久乃が言っているような力があるとも思わなかった。唐突に久乃に持ち上げられたことが信じれなかった。次の久乃の言葉は紅の中の殻を壊し始めた。
「それなら、紅さんは准看護師だと言って老人の世話ばかりさせられた自分に、レイプ犯に虐げられた自分に、夢を現実にするには人より遠回りするのはΩなら仕方ないことに、君は全て納得ができるのか」
「納得は……したくないですが…それと…先生のご好意に甘えることは…それに先生のご期待に添える自信が僕にはありません」
『Ωに生まれた自分はこれ以上の分不相応の夢を抱いたらだめだ。Ωに生まれたことに納得するしかないんだ。しかし、これはチャンスだ。応援してくれる人の手を掴んむでも良いと思う。自分の頑張りに期待してくれた、信じてくれた人の手を無闇に振り解くのは烏滸がましい行為だ。今まで誰も手を貸してはくれなかった。だが、僕はΩだが人間だ。自分の夢を叶える為に前に一歩出しても良いはずだ』と思うと紅の中で何かが壊れていく。久乃は紅の顔を見てあと一息だと思った。
「紅さん、Ωの地位向上の為に君の能力を私に貸してくれないか、Ωは決してぞんざいに扱われて良い存在ではないと私は思っている。αでもβでもΩでもこの世に生まれてきたからには平等に扱われないといけない。その為には君の心意気を存分に開花させて欲しいと思っている。だから、君に力を貸すんだ。それだけの力があるΩだと私は思っている」
久乃にそこまで言われて紅は断れなかった。力がないと嘆くばかりでは何も始まらない。今は久乃先生の手を取って力を付けよう。充分に力をつけて次の人々を引き上げれるように頑張りたい。
「失敗するかもしれませんが、引き受けた以上は頑張ってみます。それでよろしいでしょうか」
紅は、久乃の『Ωの地位向上』という言葉を実現する為に前にできた道を歩くことを決心した。
「もちろん、紅さん、もう君は一人ではない。私もここにいる楼主も君を支える。それを信じて欲しい」
久乃は紅に頭を下げた。良弥はこの光景を一生忘れないだろうと思った。久乃はここ南川町だけでなく、県下一の旧家の当主である。その当主が頭を下げて迎えたいと思わせる紅と言う青年の未知なる可能性が気になってしまう。それだけではない、紅の支度金は南川組を通さずに久乃から出すと言う。それは久乃への借金として返すと言う。南川組が久乃へ文句を言って困らせることはありえないが、前代未聞の事が起こっていた。
紅は自分を信じてくれる人に会えた幸運に感謝した。
久乃は初めの計画通りに事が運ぶのを喜んでいた。良弥は責任重大だと思うのであった。
「万事『藤ノ井』で取り仕切るとして南川組の組長さんには、久乃先生がご連絡してくださいね」
良弥は、久乃の無理押しに念のために釘を刺しておくのを忘れていない。
「それは、了承した」
久乃の言質をとって紅に釘を刺す。
「ただ、今回の借金のことは内密に進めてくださいよ。他にわかると揉めます。紅さんもよろしくお願いしますよ」
「はい、久乃先生と楼主のご期待に応えるよう頑張ります」
紅は、2人に頭を下げて感謝を述べた。
久乃はホッとした。彼にある実力は疑うべきところがないが、自分の能力を低く評価していた。Ωは相対的に自己肯定感が低いというか能力が低いと周りが言って育てる。Ωもそう思って身を守ってきた。しかし、Ωは芸術や文化等に開花している者も多い、そんなΩは能力が高いのを久乃は知っていた。
「明後日にここから退院して、1週間は心のカウンセリングを受けてもらう。その後は『藤ノ井』に託す」
「了解致しました」
紅は、今起こったことを反すうしていた。『自分の意見を初めて他人に言えた。自分を信じてくれると言ってもらえた。もちろん、不安材料は多い、レイプのあの感覚は時々背筋を這うように思い出す。ここにいる間久乃に守られていた。それでもいつかはここを出ないといけないのは分かっている、今回久乃に背中を押されたことで自分の人生が変わった。背筋がしっかりと一本伸びたような気がした。味方のいなかった自分にこれ以上の味方はいないだろう、その方々に絶対泥を塗らないようにしなければならない、自分を信じて最後までやり抜く』と誓った。
「よく言った。紅さんが、遊女になってでも正看護師になりたいと言う強い決意があるなら私が協力する」
久乃の言葉を聞いて紅は、驚いて久乃を見つめる。
「えっなんで」
「久乃先生も俺もだが、遊女として沈むことが悪いとは思っていない。次への架け橋になるのなら嬉しい」
良弥も言いながらも久乃の入れ込み様に少し違和感を感じていた。そして次の話は衝撃だった。
「紅さんの支度金は、私が用意する。支度金まで借金しては君の正看護師への道のりが遠くなる。それに准看護師の研修を後からするともっと遠回りすることになる」
紅はあまりの事に何も言えずに戸惑っていた。久乃にそこまでしてもらうことは絶対におかしすぎると思った。久乃は続けた。
「そこで、紅は『藤ノ井』で遊女をするが、週に3回は朝から昼まで診療所で働く。本来3年の実習期間が要るが5年間働いて実習期間を埋める。それと、私は、αだが女性なので遊郭には入れるが、遊女の身体を診る定期健診には携わることができない。その代わりに男性医師が1カ月に一回は遊女の検診をする義務があるが、今まで看護師を連れていけずに仕事が完璧でないため病気を見落としてしまう事があった。それを防ぐために紅さんには看護師として手伝ってもらう。その看護師で働く給料と私が貸す支度金と相殺すれば良い。夜遅い遊女の仕事、朝の早い准看護師の仕事、大変だが君の今の気迫を持っていればできるだろう」
「そこまで甘えては久乃先生に何も返せない、自分には重すぎます」
紅は今までの人生でそこまで期待されたことは無かった。自分に久乃が言っているような力があるとも思わなかった。唐突に久乃に持ち上げられたことが信じれなかった。次の久乃の言葉は紅の中の殻を壊し始めた。
「それなら、紅さんは准看護師だと言って老人の世話ばかりさせられた自分に、レイプ犯に虐げられた自分に、夢を現実にするには人より遠回りするのはΩなら仕方ないことに、君は全て納得ができるのか」
「納得は……したくないですが…それと…先生のご好意に甘えることは…それに先生のご期待に添える自信が僕にはありません」
『Ωに生まれた自分はこれ以上の分不相応の夢を抱いたらだめだ。Ωに生まれたことに納得するしかないんだ。しかし、これはチャンスだ。応援してくれる人の手を掴んむでも良いと思う。自分の頑張りに期待してくれた、信じてくれた人の手を無闇に振り解くのは烏滸がましい行為だ。今まで誰も手を貸してはくれなかった。だが、僕はΩだが人間だ。自分の夢を叶える為に前に一歩出しても良いはずだ』と思うと紅の中で何かが壊れていく。久乃は紅の顔を見てあと一息だと思った。
「紅さん、Ωの地位向上の為に君の能力を私に貸してくれないか、Ωは決してぞんざいに扱われて良い存在ではないと私は思っている。αでもβでもΩでもこの世に生まれてきたからには平等に扱われないといけない。その為には君の心意気を存分に開花させて欲しいと思っている。だから、君に力を貸すんだ。それだけの力があるΩだと私は思っている」
久乃にそこまで言われて紅は断れなかった。力がないと嘆くばかりでは何も始まらない。今は久乃先生の手を取って力を付けよう。充分に力をつけて次の人々を引き上げれるように頑張りたい。
「失敗するかもしれませんが、引き受けた以上は頑張ってみます。それでよろしいでしょうか」
紅は、久乃の『Ωの地位向上』という言葉を実現する為に前にできた道を歩くことを決心した。
「もちろん、紅さん、もう君は一人ではない。私もここにいる楼主も君を支える。それを信じて欲しい」
久乃は紅に頭を下げた。良弥はこの光景を一生忘れないだろうと思った。久乃はここ南川町だけでなく、県下一の旧家の当主である。その当主が頭を下げて迎えたいと思わせる紅と言う青年の未知なる可能性が気になってしまう。それだけではない、紅の支度金は南川組を通さずに久乃から出すと言う。それは久乃への借金として返すと言う。南川組が久乃へ文句を言って困らせることはありえないが、前代未聞の事が起こっていた。
紅は自分を信じてくれる人に会えた幸運に感謝した。
久乃は初めの計画通りに事が運ぶのを喜んでいた。良弥は責任重大だと思うのであった。
「万事『藤ノ井』で取り仕切るとして南川組の組長さんには、久乃先生がご連絡してくださいね」
良弥は、久乃の無理押しに念のために釘を刺しておくのを忘れていない。
「それは、了承した」
久乃の言質をとって紅に釘を刺す。
「ただ、今回の借金のことは内密に進めてくださいよ。他にわかると揉めます。紅さんもよろしくお願いしますよ」
「はい、久乃先生と楼主のご期待に応えるよう頑張ります」
紅は、2人に頭を下げて感謝を述べた。
久乃はホッとした。彼にある実力は疑うべきところがないが、自分の能力を低く評価していた。Ωは相対的に自己肯定感が低いというか能力が低いと周りが言って育てる。Ωもそう思って身を守ってきた。しかし、Ωは芸術や文化等に開花している者も多い、そんなΩは能力が高いのを久乃は知っていた。
「明後日にここから退院して、1週間は心のカウンセリングを受けてもらう。その後は『藤ノ井』に託す」
「了解致しました」
紅は、今起こったことを反すうしていた。『自分の意見を初めて他人に言えた。自分を信じてくれると言ってもらえた。もちろん、不安材料は多い、レイプのあの感覚は時々背筋を這うように思い出す。ここにいる間久乃に守られていた。それでもいつかはここを出ないといけないのは分かっている、今回久乃に背中を押されたことで自分の人生が変わった。背筋がしっかりと一本伸びたような気がした。味方のいなかった自分にこれ以上の味方はいないだろう、その方々に絶対泥を塗らないようにしなければならない、自分を信じて最後までやり抜く』と誓った。
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