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第二章
紅玉と茜凛の出会い
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茜凛と紅玉の出会いは、彼の初発情の競りが始まった頃、久乃から紅玉に茜凛の様子を知っておきたいと言われ、瑞葵の部屋で初めてゆっくりと話した。
始めはツーンとした茜凛だったが、紅玉のおっとりとした嘘のない言葉に魅かれていろいろと話し始めた。それからお昼のミーティングで隣り合い、昼食も話しながら食べたりして打ち解けていく。紅玉が、知らない『藤ノ井』の遊女達の話やお客様の話などを茜凛に教えてもらい、茜凛が知らない外の世界への話などを紅玉は話す。紅玉と茜凛にとっては初めての友人と呼べる人だった。年も近い2人組は、お互いの部屋を行き来するようになるのも早く部屋から2人の笑い声が聞こえていた。
競りが締切日に近くなればなるほど茜凛は言葉が少なくなり、食欲も減って心配になった紅玉は久乃にその事を話すと、彼女は考えがあると言った。
次の日の昼食の後、紅玉は瑞葵に部屋でお茶をしにおいでと誘われた。
「茜凛、久乃先生がお前の事を心配しているらしいよ。僕もお前の不機嫌を見て心配だ」
瑞葵が、茜凛に向かって話をふる。
「瑞葵さんも紅玉も初発情なんてものを済ましてからの入楼でしょ、僕の気持ちなんてわかるはずないよ。うっとしいだけ、どこかで捨ててしまいたい」
茜凛は、プイっと2人から視線を逸らす。
「まぁ、あんなものを競りでと言うのもおかしい話だが、お前が禿の時に芸能界に入っておけばここまでヒートアップはしなかっただろう」
瑞葵は、『まぁ、あっちはあっちで大変だと聞くが』という言葉を胸に押し込んだ。
「そんな事ないよ、瑞葵にいさんは僕がものを知らないと思って、あっちの方が、みんなに知られてプライバシーもないってことを知っている。そう思うとここから出たくない」
茜凛は視線を迷わせて答える。紅玉は茜凛の気持ちがよくわかっていなかった。茜凛がどうして不機嫌になるほど嫌な遊女を選択したのかが理解できなかった。
「お前の気持ちは痛いほどわかる。発情期は僕達にとってプライベートな問題だ。それを売って商売しているのが遊女の仕事だ。しかしそれを承知で遊女になった限りは、それを売りものにする。何回もまぐわうが、今でも発情期は他人と肌を合わせたくない。松の位の御職として発情期で稼げる金はいつも以上だから多額の借金を持つ私にとっては稼ぎ時だと思う事にしているよ。自分を欺かないとやってはいけない」
「瑞葵さんみたいに簡単に割り切れないよ。競りなんてうっとうしいとしか思えない」
「茜凛の理想の発情期のお相手がいるの?例えば好きな人とか」
紅玉が無遠慮に爆弾発言をした。
「そっ、そんな人はいるわけない」
茜凛は、顔を赤らめながら紅玉に怒っている。
「紅玉は、好きな人いない?好きな俳優や歌手でも良い、そんな中でも良いから…」
瑞葵は、多分良く分からずに質問を投げた紅玉に茜凛の仕返しのように聞く。紅玉は、しばし考えてふと嗅いだヒノキの香りを思い出して、顔を手で押さえる。紅玉は助けてくれたが、見たこともない人の香りで心が熱くなるのが不思議だった。
「ほら、いるでしょ、こんな仕事をしてても好きな人はいるものよ。添える添えないは別として、想い人がひとりはいないと色気も出ない」
瑞葵も思い人を心に描く。絶対添えないその人を思い出す。紅玉は遊女は誰も好きな人を作ることは禁止されないが、好きな人にのめり込んでしまうことは禁止されると言う事実を思い出した。俳優や歌手などのあまり接点がない人を好きになると良いと茨棘に言われた。
「それが、茨棘にいさんが言う色気や艶と言うものなのですね。茜凛にも仄かな理想があるんでしょう」
「そりゃそれなりにあるよ、昔から可愛いがって良く知っている贔屓の方だったら気分的には安心できるけど、一覧表には全く見ず知らずの人の名前まであってそれが憂鬱なんだ」
茜凛は顔を赤らめて下を向く。そして話を続ける。
「その全く知らない人の時に初発情が始まればそれから最低でも3日は部屋にこもってまぐわうなんて絶対無理だよ。頑張れる気もしない」
瑞葵はかわいそうな子猫を見るように茜凛に目を向ける。
「素人の客は、盛り出したら止まれないから避妊もしない場合がある。それを村雨にいさんが、頃合いを見て割って入ってくれて避妊薬を飲ませてくれる。αはΩに必死になって周りが見えなくて村雨にいさんに手を上げる奴もいる。殴られても村雨にいさんが、そんなαを蹴り倒して遊女に避妊薬を飲ませる。それを聞くと痛快だし、騒動を起こした客へのあの支配人の制裁の威嚇は凄いらしい。すごすごと慰謝料を払って二度と『藤ノ井』には近寄らない」
瑞葵が、さらりと暴露する。
「久乃先生がお客さんならいいのに」
茜凛は、泣き出した。瑞葵が、慰めに入る。紅玉は額に手を当てて熱を見る。情緒不安定は初発情に影響を与えるのだ、だから、瑞葵の傍でゆっくりと過ごして様子を観察している。お客様も居ないところで急に発情が始まればそれこそ妓楼は大損害を被る。それを起こさせないためには気晴らしが必要かもしれないと紅玉は思いながら久乃から初発情についての講義を思い出し手を握って擦る。
始めはツーンとした茜凛だったが、紅玉のおっとりとした嘘のない言葉に魅かれていろいろと話し始めた。それからお昼のミーティングで隣り合い、昼食も話しながら食べたりして打ち解けていく。紅玉が、知らない『藤ノ井』の遊女達の話やお客様の話などを茜凛に教えてもらい、茜凛が知らない外の世界への話などを紅玉は話す。紅玉と茜凛にとっては初めての友人と呼べる人だった。年も近い2人組は、お互いの部屋を行き来するようになるのも早く部屋から2人の笑い声が聞こえていた。
競りが締切日に近くなればなるほど茜凛は言葉が少なくなり、食欲も減って心配になった紅玉は久乃にその事を話すと、彼女は考えがあると言った。
次の日の昼食の後、紅玉は瑞葵に部屋でお茶をしにおいでと誘われた。
「茜凛、久乃先生がお前の事を心配しているらしいよ。僕もお前の不機嫌を見て心配だ」
瑞葵が、茜凛に向かって話をふる。
「瑞葵さんも紅玉も初発情なんてものを済ましてからの入楼でしょ、僕の気持ちなんてわかるはずないよ。うっとしいだけ、どこかで捨ててしまいたい」
茜凛は、プイっと2人から視線を逸らす。
「まぁ、あんなものを競りでと言うのもおかしい話だが、お前が禿の時に芸能界に入っておけばここまでヒートアップはしなかっただろう」
瑞葵は、『まぁ、あっちはあっちで大変だと聞くが』という言葉を胸に押し込んだ。
「そんな事ないよ、瑞葵にいさんは僕がものを知らないと思って、あっちの方が、みんなに知られてプライバシーもないってことを知っている。そう思うとここから出たくない」
茜凛は視線を迷わせて答える。紅玉は茜凛の気持ちがよくわかっていなかった。茜凛がどうして不機嫌になるほど嫌な遊女を選択したのかが理解できなかった。
「お前の気持ちは痛いほどわかる。発情期は僕達にとってプライベートな問題だ。それを売って商売しているのが遊女の仕事だ。しかしそれを承知で遊女になった限りは、それを売りものにする。何回もまぐわうが、今でも発情期は他人と肌を合わせたくない。松の位の御職として発情期で稼げる金はいつも以上だから多額の借金を持つ私にとっては稼ぎ時だと思う事にしているよ。自分を欺かないとやってはいけない」
「瑞葵さんみたいに簡単に割り切れないよ。競りなんてうっとうしいとしか思えない」
「茜凛の理想の発情期のお相手がいるの?例えば好きな人とか」
紅玉が無遠慮に爆弾発言をした。
「そっ、そんな人はいるわけない」
茜凛は、顔を赤らめながら紅玉に怒っている。
「紅玉は、好きな人いない?好きな俳優や歌手でも良い、そんな中でも良いから…」
瑞葵は、多分良く分からずに質問を投げた紅玉に茜凛の仕返しのように聞く。紅玉は、しばし考えてふと嗅いだヒノキの香りを思い出して、顔を手で押さえる。紅玉は助けてくれたが、見たこともない人の香りで心が熱くなるのが不思議だった。
「ほら、いるでしょ、こんな仕事をしてても好きな人はいるものよ。添える添えないは別として、想い人がひとりはいないと色気も出ない」
瑞葵も思い人を心に描く。絶対添えないその人を思い出す。紅玉は遊女は誰も好きな人を作ることは禁止されないが、好きな人にのめり込んでしまうことは禁止されると言う事実を思い出した。俳優や歌手などのあまり接点がない人を好きになると良いと茨棘に言われた。
「それが、茨棘にいさんが言う色気や艶と言うものなのですね。茜凛にも仄かな理想があるんでしょう」
「そりゃそれなりにあるよ、昔から可愛いがって良く知っている贔屓の方だったら気分的には安心できるけど、一覧表には全く見ず知らずの人の名前まであってそれが憂鬱なんだ」
茜凛は顔を赤らめて下を向く。そして話を続ける。
「その全く知らない人の時に初発情が始まればそれから最低でも3日は部屋にこもってまぐわうなんて絶対無理だよ。頑張れる気もしない」
瑞葵はかわいそうな子猫を見るように茜凛に目を向ける。
「素人の客は、盛り出したら止まれないから避妊もしない場合がある。それを村雨にいさんが、頃合いを見て割って入ってくれて避妊薬を飲ませてくれる。αはΩに必死になって周りが見えなくて村雨にいさんに手を上げる奴もいる。殴られても村雨にいさんが、そんなαを蹴り倒して遊女に避妊薬を飲ませる。それを聞くと痛快だし、騒動を起こした客へのあの支配人の制裁の威嚇は凄いらしい。すごすごと慰謝料を払って二度と『藤ノ井』には近寄らない」
瑞葵が、さらりと暴露する。
「久乃先生がお客さんならいいのに」
茜凛は、泣き出した。瑞葵が、慰めに入る。紅玉は額に手を当てて熱を見る。情緒不安定は初発情に影響を与えるのだ、だから、瑞葵の傍でゆっくりと過ごして様子を観察している。お客様も居ないところで急に発情が始まればそれこそ妓楼は大損害を被る。それを起こさせないためには気晴らしが必要かもしれないと紅玉は思いながら久乃から初発情についての講義を思い出し手を握って擦る。
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