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第二章
茜凛の初発情
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来週から初発情の祝宴が始まる。祝宴はご祝儀のようなもので贔屓の旦那衆のさや当てで、お遊びの延長だと聞いている。それには一見のお客様も入るが、贔屓のお客様に挟まれて場が荒れないように牽制される。1日2回の1時間程で10人ほどの宴会、ひとりひとりに茜凛がお酒の酌をしていくが、宴会の中には先輩遊女も入って場を和ませて盛り上げてくれる。
その次の週からの二週間のどれかに初発情が当たれば良いとされている。なぜならそこから一対一でのお接待で一回に45分で村雨が後見役として入る。初発情の確率が増えるのでお接待の枠を取る倍率が高くなり、花代も跳ね上がる。
初発情が起きる10日間を妓楼だけでなくそれを見守る遊女たちも大変なのだ。その日はご祝儀がふるまわれる。その為にも初発情を身内の遊女も楽しみにし、成功を祈っていた。
紅玉は、久乃に会って茜凛の様子を告げ、自分の意見も添えておくと、その日の昼休みに瑞葵と茜凛と茨棘と紅玉は迎えの車に乗っていた、いつもなら支配人が付き合うらしいが、その日は村雨が載っていた。
「村雨にいさんが外に出るのって久しぶりでしょう」
茜凛も久しぶりの外に少しはしゃいでいた。
「そうだね、家の人と婚姻届けを出した時以来かなぁ」
紅玉は、村雨が番っているとは聞いていたが、結婚しているのにびっくりした。
「紅玉には言っていなかったね。僕の旦那は、田阪だよ」
「え、えぇ」
「支配人になる前は、銀行マンでお客だったんだ。25歳の年季明けの清算であと少し借金が残った時に銀行マンを辞めてその退職金で俺を身請けしたんだ。俺は『藤ノ井』が好きで遊女達も愛しているから遣り手になって支えたいと思って『藤ノ井』に就職したかった。田坂は、俺の気持ちを知っていた。彼は楼主と友人だから無理して支配人になって今俺と一緒に『藤ノ井』を支えると言う選択を選んでくれた。銀行マンとしてのキャリアを捨てて俺を支えてくれると言ったことには感謝しかない」
「そうなんですね」
紅玉は、2人にもそれ相当の葛藤があったんだと思い、自分にもそんな人がいたらと考える。
「村雨にいさんは、現役の遊女の時から、遊女同士が喧嘩してても平気な顔で喧嘩している2人の顔を引っぱ叩くし、遊女の愚痴を一刀両断で解決していたからその頃から遣り手の素養はあったんだ。今ではすごい遣り手だよ。かなわない」
茨棘と瑞葵は微笑みあう。
「2人の愚痴はたんまり聞いた。現役の頃からずーっと今でも」
「村雨にいさんがいるから、僕は松の位でいられる」
「俺も竹の位でいても大丈夫だと思える」
信頼でき人情の厚い村雨の一面を見て、新参者の紅玉にはあまり馴染みの少ない村雨がとても近い姉御に見えた。
「ここの2人はこれからだね。愚痴も恋も愛も私は聞くよ、聞いて馬鹿かって言って上げるよ。遊女の悩みは、結構ないものねだりが多いから」
「「よろしくお願いします」」
茜凛と紅玉は笑いながら顔を見合わせた。車は隣町の繁華街にある外資系のホテルの地下駐車場にある玄関で止まった。そこには、久乃と靖子が笑顔で迎えに来ていた。
「おはようございます。この度はお昼間のお茶席にお呼びくださりありがとうございます」
村雨が、挨拶をする。
「村雨も一緒に楽しもう」
久乃が、言うと靖子が、大きな声で若い2人を呼ぶ。
「私は若い二人が良いので、こっちにおいで」
「靖子先生は相変わらず若者好きですね」
「瑞葵も茨棘も可愛いけど、フレッシュさが違う」
「「はい、はい」」
靖子のサッパリとしたところは好感を持っている紅玉は、彼女の持つ森林の匂いが好きだった。
エレベーターは、どこにも止まらずに最上階の個室の前で停まる。中には『藤ノ井』の習い事を教えている先生方が揃っていた。そして、茜凛に一斉にクラッカーを鳴らして
「初発情、おめでとう」
と言ってくれた。茜凛は嬉しそうにしていた。たくさんのケーキが載ったテーブルに座らされて、いろんな話をして楽しい時間を過ごした。
最後に久乃が、茜凛だけでなく頑張っている遊女に言葉をと言って話し始めた。
「初発情を祝う者がいると言うのも幸せだ。ほとんどのΩは初発情の恐怖を胸に生きている。急に発情し見も知らない男の番となってしまい一生苦しむΩもいる。苦しい泥濘の闇の中に生きるお前たちだが、守られて見守れることを喜んで笑って生きろ、何かあれば私や靖子が絶対救ってやる。それを信じて借金を返しまっとうな道に戻って頑張れ、困ったことが有れば絶対紅玉に話せ、南川下町診療所がお前たちを守ってやるから、分かったな」
「ありがたいお言葉本当に感謝いたします。先生の存在は私たちの支えです。茜凛の初発情必ず成功させます」
瑞葵が、感謝を伝え
「今日は皆様にお会いできてうれしく思っております。ありがとうございました。又、ラウンジでお待ちしています。これからも『藤ノ井』をご贔屓いただけますようよろしくお願いいたします」
村雨が最後の挨拶をして楽しいお茶会は終わった。
それから14日目の夜に、茜凛は初発情を迎えた。紅玉は、なえる茜凛のモチベーションを向上させて、自然に発情できるようにサポートした。そして無事初発情が終わった時誰よりも紅玉が疲れていた。それを見て、瑞葵も茨棘も村雨もご苦労様と言って労ってくれた。そして、今回も久乃の読みがまた当たったと茨棘が、言っていた。その日のお客様は茜凛の御贔屓の中でも最得意の社長で茜凛は優ししくされて夢ごごちで無事に終わった。
『見知らぬ人は嫌だと言った茜凛の思いは紅玉も理解できる。それを久乃は『藤ノ井』にいるから守られているのだと言った、それは事実だ。あのレイプの日紅を救ってくれたのはあのヒノキの匂いの彼だけだった。彼がいなければどうなっていたのかわからない。外の世界も中の世界もΩにとっては生きにくい、それでも生きる希望を捨ててはいけない』と思った。
その次の週からの二週間のどれかに初発情が当たれば良いとされている。なぜならそこから一対一でのお接待で一回に45分で村雨が後見役として入る。初発情の確率が増えるのでお接待の枠を取る倍率が高くなり、花代も跳ね上がる。
初発情が起きる10日間を妓楼だけでなくそれを見守る遊女たちも大変なのだ。その日はご祝儀がふるまわれる。その為にも初発情を身内の遊女も楽しみにし、成功を祈っていた。
紅玉は、久乃に会って茜凛の様子を告げ、自分の意見も添えておくと、その日の昼休みに瑞葵と茜凛と茨棘と紅玉は迎えの車に乗っていた、いつもなら支配人が付き合うらしいが、その日は村雨が載っていた。
「村雨にいさんが外に出るのって久しぶりでしょう」
茜凛も久しぶりの外に少しはしゃいでいた。
「そうだね、家の人と婚姻届けを出した時以来かなぁ」
紅玉は、村雨が番っているとは聞いていたが、結婚しているのにびっくりした。
「紅玉には言っていなかったね。僕の旦那は、田阪だよ」
「え、えぇ」
「支配人になる前は、銀行マンでお客だったんだ。25歳の年季明けの清算であと少し借金が残った時に銀行マンを辞めてその退職金で俺を身請けしたんだ。俺は『藤ノ井』が好きで遊女達も愛しているから遣り手になって支えたいと思って『藤ノ井』に就職したかった。田坂は、俺の気持ちを知っていた。彼は楼主と友人だから無理して支配人になって今俺と一緒に『藤ノ井』を支えると言う選択を選んでくれた。銀行マンとしてのキャリアを捨てて俺を支えてくれると言ったことには感謝しかない」
「そうなんですね」
紅玉は、2人にもそれ相当の葛藤があったんだと思い、自分にもそんな人がいたらと考える。
「村雨にいさんは、現役の遊女の時から、遊女同士が喧嘩してても平気な顔で喧嘩している2人の顔を引っぱ叩くし、遊女の愚痴を一刀両断で解決していたからその頃から遣り手の素養はあったんだ。今ではすごい遣り手だよ。かなわない」
茨棘と瑞葵は微笑みあう。
「2人の愚痴はたんまり聞いた。現役の頃からずーっと今でも」
「村雨にいさんがいるから、僕は松の位でいられる」
「俺も竹の位でいても大丈夫だと思える」
信頼でき人情の厚い村雨の一面を見て、新参者の紅玉にはあまり馴染みの少ない村雨がとても近い姉御に見えた。
「ここの2人はこれからだね。愚痴も恋も愛も私は聞くよ、聞いて馬鹿かって言って上げるよ。遊女の悩みは、結構ないものねだりが多いから」
「「よろしくお願いします」」
茜凛と紅玉は笑いながら顔を見合わせた。車は隣町の繁華街にある外資系のホテルの地下駐車場にある玄関で止まった。そこには、久乃と靖子が笑顔で迎えに来ていた。
「おはようございます。この度はお昼間のお茶席にお呼びくださりありがとうございます」
村雨が、挨拶をする。
「村雨も一緒に楽しもう」
久乃が、言うと靖子が、大きな声で若い2人を呼ぶ。
「私は若い二人が良いので、こっちにおいで」
「靖子先生は相変わらず若者好きですね」
「瑞葵も茨棘も可愛いけど、フレッシュさが違う」
「「はい、はい」」
靖子のサッパリとしたところは好感を持っている紅玉は、彼女の持つ森林の匂いが好きだった。
エレベーターは、どこにも止まらずに最上階の個室の前で停まる。中には『藤ノ井』の習い事を教えている先生方が揃っていた。そして、茜凛に一斉にクラッカーを鳴らして
「初発情、おめでとう」
と言ってくれた。茜凛は嬉しそうにしていた。たくさんのケーキが載ったテーブルに座らされて、いろんな話をして楽しい時間を過ごした。
最後に久乃が、茜凛だけでなく頑張っている遊女に言葉をと言って話し始めた。
「初発情を祝う者がいると言うのも幸せだ。ほとんどのΩは初発情の恐怖を胸に生きている。急に発情し見も知らない男の番となってしまい一生苦しむΩもいる。苦しい泥濘の闇の中に生きるお前たちだが、守られて見守れることを喜んで笑って生きろ、何かあれば私や靖子が絶対救ってやる。それを信じて借金を返しまっとうな道に戻って頑張れ、困ったことが有れば絶対紅玉に話せ、南川下町診療所がお前たちを守ってやるから、分かったな」
「ありがたいお言葉本当に感謝いたします。先生の存在は私たちの支えです。茜凛の初発情必ず成功させます」
瑞葵が、感謝を伝え
「今日は皆様にお会いできてうれしく思っております。ありがとうございました。又、ラウンジでお待ちしています。これからも『藤ノ井』をご贔屓いただけますようよろしくお願いいたします」
村雨が最後の挨拶をして楽しいお茶会は終わった。
それから14日目の夜に、茜凛は初発情を迎えた。紅玉は、なえる茜凛のモチベーションを向上させて、自然に発情できるようにサポートした。そして無事初発情が終わった時誰よりも紅玉が疲れていた。それを見て、瑞葵も茨棘も村雨もご苦労様と言って労ってくれた。そして、今回も久乃の読みがまた当たったと茨棘が、言っていた。その日のお客様は茜凛の御贔屓の中でも最得意の社長で茜凛は優ししくされて夢ごごちで無事に終わった。
『見知らぬ人は嫌だと言った茜凛の思いは紅玉も理解できる。それを久乃は『藤ノ井』にいるから守られているのだと言った、それは事実だ。あのレイプの日紅を救ってくれたのはあのヒノキの匂いの彼だけだった。彼がいなければどうなっていたのかわからない。外の世界も中の世界もΩにとっては生きにくい、それでも生きる希望を捨ててはいけない』と思った。
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