25 / 77
第二章
紅玉のお泊まり*(1)
しおりを挟む
紅玉は初日からラウンジのショーウィンドウにすわされて緊張の連続だった。彼の顔は赤く染まり道行く人は新人遊女の初見せを優しく見ていた。彼はお客様からのご指名があると少しホッとした。やはり妓楼『藤ノ井』はラウンジでも30分遊女と過ごすと最低でも2万円なのが功を奏して客筋は良い。遊女とは話すだけでタッチすることはないので、紅玉は、とても楽しく過ごせた。
だが、一週間で次の段階になると個室の部屋でのお接待になる。遊女は横に座りお酌をする、タッチも手や腰などを触らせる。ゆっくりそれまでより時間をかけてお互いに付き合えるかを探る。紅玉は、始めた時は身体が硬直して動きもぎこちなかったが、お客様の方が遊び慣れている方々が多くて自然とリラックスできるようになった。紅玉のような新人でもお花代は最低5万は必要で、遊女のランクや発情期までの期間など様々な条件が付くと金額が張っていった。
紅玉は発情期を迎え、とうとうお客様とのお泊まりの日を迎える。その日は朝から熱っぽく発情期の始まりを感じていた。遊女は発情期を売って金を稼ぐ、その為に抑制剤を飲む事はできないし、してはいけない。紅玉は、昼ご飯の前に竹の間の茨棘に挨拶に行く。
「おはようございます、紅玉です」
「おはよう、体調はどうだい、紅玉、中へ」
「はい、失礼します。体調はそろそろ始まると思います。夜に合わせる為に村雨さんがお薬を持ってきてくれましたので今は大丈夫です」
紅玉は頭を下げたまま答える。
「そうか、それじゃこの部屋の内風呂に入って、おいで」
と茨棘が、唐突に言ったので、その真偽が分からずに顔を上げた。
そこには茨棘が着物の掛かっている衣桁の前でにこやかに笑っていた。衣桁に掛かって着物は友禅染めの美しいりんご園の様子が書かれていた。肩から裾に向かって薄緑色から赤い色のグラデーションにりんごの木の下で童子が遊んでいる絵が描かれていた。とても高級感ある絹で作られていた。
「にいさんそれは」
「コレ、今日のお客様梶山様からのお届け物です、今日の記念にと贈ってくださった」
「そっ、そんな」
紅玉は、あまりの事に驚いて尻もちをついた。
「紅玉、もうお前は遊女なんだ、贔屓のお客様が居てその中から梶山様が旦那様に名乗りを上げてくださった。お前がショーウィンドウに立った時にすぐに楼主に話があったそうだよ。自分がいの一番の旦那になると、それでお忙しい方なのに遊郭の掟通りに今日を待たれた。その気持ちを込めての贈り物だから、お前は誠心誠意でおもてなしをすれば良い。あの方は奥様もよく出来た方だからそれに対しても誠心誠意尽くしなさい」
茨棘は、紅玉を見つめて言いながら弟を送り出すような気になった。いい方が旦那様になってくださったことがうれしく思った。
「ありがとうございます。紅玉はもう何も迷いません。ここまで私のような者に心を尽くしてくださる梶山様に感謝して誠心誠意尽くします」
紅玉は、茨棘がとても優しく笑っていたことが嬉しかった。彼は普段のクールな顔よりも笑顔がとても美しいからだった。
「もうお昼も近い、早くお風呂に入って今日は私が着付けてあげるから」
「ありがとうございます」
紅玉は、竹の間の風呂場に入った。そして、茨棘が風呂上がりの下着も全てシルクの物に変えてくれた。美しいりんご園の着物と真っ赤な長襦袢を帯一本でしっかりと着付けてくれる。そして最後に、茨棘の持つ羽織を掛けてもらった。
そして、平太にお昼の呼び出しを受けて一階の食堂に下りた。
そこには遊女達が頭を下げていた。
「初床入りおめでとうございます」
松の位の瑞葵が言って頭を下げる。
「皆さんありがとうございます、本日より皆さんの正式なお仲間として誠心誠意尽くします、よろしくお願いいたします」
紅玉は、そう返した。
村雨より、
「梶山様より、皆に金一封を頂いています」
「「ありがとうございます」」
遊女は元より下女下僕の下々まで今夜仮初めに梶山様の嫁になる紅玉に頭を下げたのだ。
お泊まりは、夜半から夜が明けるまでの時間にまぐわう事込みでのお付き合いとなる。
紅玉は、梶山様が来るまで、今日用意された部屋でじっと彼の到着を待つ。遊び慣れた梶山様なら、10時頃迄は現れないからと言われたが、1分が過ぎていくのを長く感じてソワソワしていた。熱っぽくなる自分の身体を感じながら待っていると平太が、来て告げる。
「旦那様がお着きになります。お出迎えをお願いいたします」
「わかりました」
緊張している声だがかろうじて言えた言葉にホッとする。
だが、一週間で次の段階になると個室の部屋でのお接待になる。遊女は横に座りお酌をする、タッチも手や腰などを触らせる。ゆっくりそれまでより時間をかけてお互いに付き合えるかを探る。紅玉は、始めた時は身体が硬直して動きもぎこちなかったが、お客様の方が遊び慣れている方々が多くて自然とリラックスできるようになった。紅玉のような新人でもお花代は最低5万は必要で、遊女のランクや発情期までの期間など様々な条件が付くと金額が張っていった。
紅玉は発情期を迎え、とうとうお客様とのお泊まりの日を迎える。その日は朝から熱っぽく発情期の始まりを感じていた。遊女は発情期を売って金を稼ぐ、その為に抑制剤を飲む事はできないし、してはいけない。紅玉は、昼ご飯の前に竹の間の茨棘に挨拶に行く。
「おはようございます、紅玉です」
「おはよう、体調はどうだい、紅玉、中へ」
「はい、失礼します。体調はそろそろ始まると思います。夜に合わせる為に村雨さんがお薬を持ってきてくれましたので今は大丈夫です」
紅玉は頭を下げたまま答える。
「そうか、それじゃこの部屋の内風呂に入って、おいで」
と茨棘が、唐突に言ったので、その真偽が分からずに顔を上げた。
そこには茨棘が着物の掛かっている衣桁の前でにこやかに笑っていた。衣桁に掛かって着物は友禅染めの美しいりんご園の様子が書かれていた。肩から裾に向かって薄緑色から赤い色のグラデーションにりんごの木の下で童子が遊んでいる絵が描かれていた。とても高級感ある絹で作られていた。
「にいさんそれは」
「コレ、今日のお客様梶山様からのお届け物です、今日の記念にと贈ってくださった」
「そっ、そんな」
紅玉は、あまりの事に驚いて尻もちをついた。
「紅玉、もうお前は遊女なんだ、贔屓のお客様が居てその中から梶山様が旦那様に名乗りを上げてくださった。お前がショーウィンドウに立った時にすぐに楼主に話があったそうだよ。自分がいの一番の旦那になると、それでお忙しい方なのに遊郭の掟通りに今日を待たれた。その気持ちを込めての贈り物だから、お前は誠心誠意でおもてなしをすれば良い。あの方は奥様もよく出来た方だからそれに対しても誠心誠意尽くしなさい」
茨棘は、紅玉を見つめて言いながら弟を送り出すような気になった。いい方が旦那様になってくださったことがうれしく思った。
「ありがとうございます。紅玉はもう何も迷いません。ここまで私のような者に心を尽くしてくださる梶山様に感謝して誠心誠意尽くします」
紅玉は、茨棘がとても優しく笑っていたことが嬉しかった。彼は普段のクールな顔よりも笑顔がとても美しいからだった。
「もうお昼も近い、早くお風呂に入って今日は私が着付けてあげるから」
「ありがとうございます」
紅玉は、竹の間の風呂場に入った。そして、茨棘が風呂上がりの下着も全てシルクの物に変えてくれた。美しいりんご園の着物と真っ赤な長襦袢を帯一本でしっかりと着付けてくれる。そして最後に、茨棘の持つ羽織を掛けてもらった。
そして、平太にお昼の呼び出しを受けて一階の食堂に下りた。
そこには遊女達が頭を下げていた。
「初床入りおめでとうございます」
松の位の瑞葵が言って頭を下げる。
「皆さんありがとうございます、本日より皆さんの正式なお仲間として誠心誠意尽くします、よろしくお願いいたします」
紅玉は、そう返した。
村雨より、
「梶山様より、皆に金一封を頂いています」
「「ありがとうございます」」
遊女は元より下女下僕の下々まで今夜仮初めに梶山様の嫁になる紅玉に頭を下げたのだ。
お泊まりは、夜半から夜が明けるまでの時間にまぐわう事込みでのお付き合いとなる。
紅玉は、梶山様が来るまで、今日用意された部屋でじっと彼の到着を待つ。遊び慣れた梶山様なら、10時頃迄は現れないからと言われたが、1分が過ぎていくのを長く感じてソワソワしていた。熱っぽくなる自分の身体を感じながら待っていると平太が、来て告げる。
「旦那様がお着きになります。お出迎えをお願いいたします」
「わかりました」
緊張している声だがかろうじて言えた言葉にホッとする。
11
あなたにおすすめの小説
交際0日婚の溺愛事情
江多之折(エタノール)
BL
死にたくはない。でも、生きたくもない。ふらふらと彷徨う根無し草は、世界の怖さを知っている。救いの手は、選ばれた者にだけ差し伸べられることも知っている。
だから緩やかに終わりを探して生きていた。
──たった数回の鬼ごっこを経験するまでは。
誠実すぎて怖い人は、4回目の顔合わせで僕の夫となる。
そんな怖がりな男と誠実な男の、結婚生活の始まり。
■現実だけど現実じゃない、そんな気持ちで読んでください。
■家庭に関してトラウマを抱えている方は読まない方が良いと思います。
落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした
444
BL
『醜い顔…汚らしい』
幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。
だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。
その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話
暴力表現があるところには※をつけております
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とスタッフ達とBL営業をして腐女子や腐男子たまに普通のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる