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第三章
24歳の壁
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事務所に入ると、支配人が紅玉を奥の会議室に呼ぶ。いつもなら支配人は遊女と話し合う場合事務室で話を済ませるのにと思いながら紅玉は入っていった。
「紅玉、茨棘の事で久乃先生に文を書いたな、怒っていないから教えてほしい」
紅玉は支配人の真剣な声で茨棘の事の立場が危うのかと思った。
「はい、三峰先生の事で一度は揺れていましたが、お手紙を頂けたと言って喜んで揺れは収まっていたのです。1週間ほど前からまた茨棘さんが、ボーっというかやる気がないようにぼさーっとしているのが気になるのです。今日は僕の戻りは平太さんの事で『藤ノ井』に戻るのは早かったですが、茨棘にいさんが着物姿で朝食を食べて竹の間でゆっくりされる時間を見計らって挨拶に行ったら竹の間に居なくてまだ着替えもせずに自室の前の窓の桟に腰掛けて中庭を見つめていました。他の人なら良くある事かもしれません.しかし、茨棘さんらしくないので心配しています。知り合ってまだ3年間で今までそんな事が一度もなかったので気になって…」
黙って聞いていた支配人が、一言言った。
「ふーん、24歳の壁か?」
「24歳の壁?」
紅玉は、初めて聞いた言葉だった。
「あぁ、茨棘は今年の冬に23歳になる。借金の多い茨棘は、25歳の清算が気になっているんだと思う。特に借金が多い者達は非常にナーバスになる。清算するのは南川組の金貸しだ。だから俺らは幾ら残っているとかわからない」
「あんなに働いてもダメなんですか?」
紅玉は、支配人に不満の声を上げた。
「あぁ、あいつの借金は母親のやらかした事も含まれてるから大変なんだ、だから何かあればちょっとした事も教えてくれると嬉しい。あいつにはバレない様に頼む、変な考えを持ったら大変だから」
支配人の田阪は、良弥が慎重に茨棘の借金を返してきていることを知っている。彼の借金は、悪意に塗れて増えた経緯がある。良弥がそれを少しずつ南川組に悟らせないように支払ってきた。だから、これについては簡単に言えない。茨棘は、清算まで粛々とここで働いていくしかないのだ。そのために本人には事実を言っていない。何故なら悪意を持っている者は茨棘の近くにいるからだ。
「わかりました」
紅玉は、『茨棘への義理がある。何もわからない紅玉にお客様との事を色々教えてくれた。長く『藤ノ井』にいるから知っているだけだよ。と言いながら、色々と手を回して教えてくれる。彼がいなければとっくに遊女と看護師の二足の草鞋は真っ当できていない。茨棘を守って見せる。あの壊れそうに繊細な心を大切にしたい』と誓った。
田阪は、事務所を出て行く紅玉の後ろ姿を見て茨棘の事を無言でもう一度頼む。彼は思慮深く人を見る目がある。これから瑞葵が起こす騒動で、茨棘は損害を被る事になる。わかっていても瑞葵が引くわけがない。『藤ノ井』を愛している自分の番も傷つくが、それは俺が居ればどうにかなる。
しかし、今回の件は24歳の壁と言うには少し違和感がある。茜凛は平太が上手く丸め込めると思う。もしかしたら番も何か感じている可能性もある。遊郭、遊女を取り巻く黒い霧に包まれないよう『藤ノ井』は動いてきている、それで有れば警戒しなければならない。
茨棘には、楼主が手を出してもらうのが1番だが、あれだけ思い合っていてもあんなに奥深く思いを沈めている2人を見て田阪は本当は想い自体も嘘のように思えることがある。だが、村雨は、茨棘を支えているのは楼主だと言い切る。それを信じている。
今宵も『藤ノ井』にもたらせられる全てをしっかりと受け止める自分の番を全力で支えようと支配人は玄関口の小部屋を見つめる。
「紅玉、茨棘の事で久乃先生に文を書いたな、怒っていないから教えてほしい」
紅玉は支配人の真剣な声で茨棘の事の立場が危うのかと思った。
「はい、三峰先生の事で一度は揺れていましたが、お手紙を頂けたと言って喜んで揺れは収まっていたのです。1週間ほど前からまた茨棘さんが、ボーっというかやる気がないようにぼさーっとしているのが気になるのです。今日は僕の戻りは平太さんの事で『藤ノ井』に戻るのは早かったですが、茨棘にいさんが着物姿で朝食を食べて竹の間でゆっくりされる時間を見計らって挨拶に行ったら竹の間に居なくてまだ着替えもせずに自室の前の窓の桟に腰掛けて中庭を見つめていました。他の人なら良くある事かもしれません.しかし、茨棘さんらしくないので心配しています。知り合ってまだ3年間で今までそんな事が一度もなかったので気になって…」
黙って聞いていた支配人が、一言言った。
「ふーん、24歳の壁か?」
「24歳の壁?」
紅玉は、初めて聞いた言葉だった。
「あぁ、茨棘は今年の冬に23歳になる。借金の多い茨棘は、25歳の清算が気になっているんだと思う。特に借金が多い者達は非常にナーバスになる。清算するのは南川組の金貸しだ。だから俺らは幾ら残っているとかわからない」
「あんなに働いてもダメなんですか?」
紅玉は、支配人に不満の声を上げた。
「あぁ、あいつの借金は母親のやらかした事も含まれてるから大変なんだ、だから何かあればちょっとした事も教えてくれると嬉しい。あいつにはバレない様に頼む、変な考えを持ったら大変だから」
支配人の田阪は、良弥が慎重に茨棘の借金を返してきていることを知っている。彼の借金は、悪意に塗れて増えた経緯がある。良弥がそれを少しずつ南川組に悟らせないように支払ってきた。だから、これについては簡単に言えない。茨棘は、清算まで粛々とここで働いていくしかないのだ。そのために本人には事実を言っていない。何故なら悪意を持っている者は茨棘の近くにいるからだ。
「わかりました」
紅玉は、『茨棘への義理がある。何もわからない紅玉にお客様との事を色々教えてくれた。長く『藤ノ井』にいるから知っているだけだよ。と言いながら、色々と手を回して教えてくれる。彼がいなければとっくに遊女と看護師の二足の草鞋は真っ当できていない。茨棘を守って見せる。あの壊れそうに繊細な心を大切にしたい』と誓った。
田阪は、事務所を出て行く紅玉の後ろ姿を見て茨棘の事を無言でもう一度頼む。彼は思慮深く人を見る目がある。これから瑞葵が起こす騒動で、茨棘は損害を被る事になる。わかっていても瑞葵が引くわけがない。『藤ノ井』を愛している自分の番も傷つくが、それは俺が居ればどうにかなる。
しかし、今回の件は24歳の壁と言うには少し違和感がある。茜凛は平太が上手く丸め込めると思う。もしかしたら番も何か感じている可能性もある。遊郭、遊女を取り巻く黒い霧に包まれないよう『藤ノ井』は動いてきている、それで有れば警戒しなければならない。
茨棘には、楼主が手を出してもらうのが1番だが、あれだけ思い合っていてもあんなに奥深く思いを沈めている2人を見て田阪は本当は想い自体も嘘のように思えることがある。だが、村雨は、茨棘を支えているのは楼主だと言い切る。それを信じている。
今宵も『藤ノ井』にもたらせられる全てをしっかりと受け止める自分の番を全力で支えようと支配人は玄関口の小部屋を見つめる。
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