薄明を待つ天女達~南川下町診療所浮世草子

風鈴

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第四章

瑞葵の結末(2)

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 瑞葵の騒動の後3日間は現場検証や事情聴取等で警察が、『藤ノ井』を出入りしていたが、郷原の余罪を洗い出すという警察官僚に協力したという大義名分で、『藤ノ井』の従業員は不起訴相当となった。
 警察も出ていき松の間以外の大掃除を従業員一同で行った。専門家に建物の検査の結果は、良弥や田阪が考えていた以上に建物はあちこちに手を加える必要が出てきて、初めの計画よりも『藤ノ井』は休みは伸びた。休みの間は、観光客相手なら他でもあるが、外国人駐在員や外国の商談等の法人向けに語学研修を充実させたり、勉強もまともに受けていないものもいるので本人のペースで勉強を進められる環境を整えるために中学を引退した先生を雇い入れて勉強会を開催したりと休みでダラダラしないように心がけた。
 良弥や田阪はいつか遊郭はなくなると思っているが、売春は無くならず地下に潜っていく。その時に『藤ノ井』はどうするのかを考える必要がある。それを充分見据えていく必要がある。遊女が路頭に迷わず行けるようにと考える。習い事などしてスキルを持っていれば社会の変化にも対応できると良弥は思った。今回の瑞葵の騒動は世間ではセンセーショナルに報道された。瑞葵や茨棘の名前は洋司さんの手配で伏せられたが、『藤ノ井』の名前は一般人にも知られた。良弥と支配人の舵取り次第では観光名所となって質が落ちることにもなりかねなかった。
 紅玉と茜凛は休みの間警察の事情聴取を受けたり、茨棘の見舞いや瑞葵の見舞い、お客様を呼んでホテルでパーティを開いたりと忙しく活動した。遊女のモチベーションを高めて不安にならないように気を配りいつもと違う仕事に疲れるが、新生『藤ノ井』を担う2人には良い経験になった。
 今迄『藤ノ井』だけの存在であった遊女が外で活動したことで注目を浴びてしまった。宴会場の中の活動でも贔屓の旦那衆の前だけでの活動ではない。場所が大きいとそれなりに第三者の目に見られたことで後に大きな問題になろうとはその時は誰も考えなかった。

 世の中では『陰謀の真実』が最終回を迎えた。ロスを感じる人が続出する中、本編には茨棘の下りはなく、紅玉はホッとする。『藤ノ井』の騒動は『陰謀の真実』のドラマ化に話題が移って為に今では報道もされないようになった。
 現実は、郷原は茨棘の殺人未遂と瑞葵への傷害、烏丸家の保高、珠子、保奈美の殺害等数えられない程の罪で収監され、裁判を待つ身で有る。それに関与した政治家を始めマスコミ、警察関係者、南川組及び高利貸し、高蔵京介たかくらきょうすけも全て白昼の元に晒されてそれ相応の刑罰を受けることが決まった。
 瑞葵には、高木を監禁した事、『藤ノ井』への損壊等で病院入院中の為に在宅起訴となった。瑞葵の体調は薄紙を剥がすように良くなってきた。名前についても復活できるようになり今はそれを待っている状況だった。
 茨棘は、正当防衛が認められて不起訴となった。だが、彼のメンタルはズタボロで簡単に普通の生活が送れる状態ではなかった。休みの間に埃っぽい『藤ノ井』を出て楼主の自宅で療養した。フランスから三峰先生が戻ってくれて2人は親子として過ごした。
 2人で同じ風景や写真を見て絵を描くことを繰り返していく事で茨棘の気持ちも少しずつ前向きになって行った。
 南川組は、組長、若頭等の逮捕により解散となった。南川遊郭は、妓楼組合が運営していく事になり、他の遊郭でも同じような動きが出てきている。
 遊女の借金についても少しずつだが公開されていつでも出ていけるようになって行くだろう。

 新生『藤ノ井』は、外観は前を踏襲していたが、内装を大幅に変更していた。
 一階のラウンジスペースは広くて、ステージができた。
 玄関には変わらず大階段があるが、階段横にエレベーターを設置して、古くからのお客様に優しくなったと好評である。
 二階の個室は松竹梅の広さも部屋数も変わらないが、和洋折衷の良いところを合わせている作りにお客様から自宅の参考にしたいと言われた。
 3階は、今まで通り事務所と支配人と遣り手の部屋と楼主の事務室と倉庫、4階は、遊女の個室で各部屋にシャワー室が付いた。遊女の数は定員30名となり、18歳未満は入楼できないこととなった。楼主曰く、この秋からの議会で審議されるΩ保護法の改正後、禿制度も無くなるからという。その為にそれまで『藤ノ井』で扱ってきた子供達は遊郭の外に児童施設を建てそこで高校生まで過ごすことになった。
 それ以外にも関係各所でΩを巡ることに変化が起きつつあった。
 紅玉は、借金はないが『藤ノ井』に愛着がある。自分の将来をもっと広く考えるなら医師になりたいと思った。高卒認定試験を受けて医学部に合格するには時間が欲しいから、このまま続いて『藤ノ井』で働きながら頑張るつもりだ。
 茜凛は、平太を待つために紅玉に教えてもらいながら勉強を始めた。賢い母親になり、平太と楽しい生活を営むために頑張ると決めた。
 
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