現世勇者~勇者になり狂った少年~

サドマ

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悪魔の予兆

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 結論から言えばあの賭けに勝ったのは僕だった。
 あの賭けをしてから2週間が経過した今も地震は起きていない。
 柳は涙を流して鼻水を啜りながら僕に1000円を渡してきたが受け取らなかった。
 せっかく僕が慈悲を慈悲で返してあげたというのに、男に二言はねぇとか言って無理やり財布に押し込もうとしてきたがそれでも受け取らなかった。
 僕にとってお金はそれほど重要ではなかったからだ。お金より友達との些細な遊びがしたかっただけだ。それに賭けに勝ったという事実だけで僕は充分だったから。
 まあそれでも1000円を渡そうとしてきたときは呆れてデコピンをしたけど。
 教室にはもう僕以外だれもいなかった。
 部活へ行く者、塾へ行く者、家に帰宅する者。僕はどれでもない。ただ1人教室に残って窓から外を見ている。
 グラウンドではサッカー部が練習をしている。
 柳がパスを受け取りドリブルをしてシュートを外した。
 グラウンドの向こうには夕日が美しく世界をオレンジ色に染めていた。
 僕はこの夕日を見るために毎日こうして教室に残っている。
 ここから夕日を見ていると何だか生きてるなって感じるからだ。  
 コンコンと教室の扉を誰かがノックした。
 返事はする必要ない。誰か分かっているからだ。

「や、今日も残ってたんだね。」

「うん、何だか毎日こうしてないと気持ち悪くてさ」

 僕に近寄ってくる。

「隣いいかな?」

「うん、いいよ」

 僕が承諾すると彼女は僕の隣に腰を下ろした。

「綺麗だね」

「うん、綺麗だ」

 生きている気がすると言ったがあれは口実だ。本当の理由は彼女とこうして話すためだ。
 彼女は僕の教室の隣のクラスの子だ。
 忘れ物をして教室に戻ったとき偶然、隣の教室で僕が今していたように夕日を眺めていた彼女に出会い、一目惚れをした。
 あんなに夕日の照らす教室と画になる女の子は見たことがなかった。
 僕はそれからこうして教室から夕日を見ている。
 もちろん彼女と仲良くなるためだ。
 念願叶って今ではこうして2人並んで夕日を見る仲だ。まだ名前も知らないけど。

「ねぇねぇ、名前聞いてもいいかな?」

 突然話を振られても動揺しない。僕はクールな男だから。

「あ、言ってなかったね。僕は奏大だよ奏でるに大きいって書くんだ」

「うーん、奏大君かー。うーんカナタ、カナ、カナカナ。」

「カナでいいよ?」

 好きな子にカナカナとは呼ばれたくない。

「うんカナ君! 私は未咲、
未来に咲くで未咲。」

「未咲さんだね。うん覚えた。」

 クスリと口もとに制服の袖を当てて未咲さんが微笑んだ。
 心臓が少し跳ね上がり顔が熱くなった。

「もう1週間くらいこうして話してるのに名前も知らないなんて変だもんね」

「確かに変だね。アハハ」

 気づけばサッカー部が活動を終えていた。

「あ、僕もう行かないと! じゃあまた」

「うんまた明日」

 玄関で柳が僕を待っていた。髪は汗で湿っている。

「お疲れ、ナイスシュート!」

「チェ、やっぱ見てたのか。俺のミス」

 柳が唇を尖らして拗ねた。

「あれはパスが悪かったんだぞ。俺のせいじゃない」

「まあそう言うことにしてあげるよ。さあ暗くなってきたし帰ろ」

「お、おい待てよまだ俺の弁解が」

 弁解と言ってる時点でダメだとは柳は気づいていない。そんなところが好きな訳だけど。
 夕日が沈み空は暗くなっていた。
 
「それにしても最近、地震起きねぇなあ」

「まあ平和が一番だよ」

「そうなんだけど、何か面白くないよなー。刺激が足りないっつうかさー」

「そう? 僕は毎日が楽しいよ」

「お、お前! まさか女か? 女なのか?」

 冗談半分に柳が言っているが的を付いている。
 だけど何だか恥ずかしくて僕は違うよと笑って言った。

「僕は柳とこうして話してるだけで楽しいんだよ」

 柳が口でポッと言って頬を赤めた。

「それやめろって、気持ち悪いな」

「冗談だって、マジになんなよなー。おっと俺はこっちだじゃあな」

 柳に手をふって別れた。好きな人が出来たからか毎日がいつも以上に楽しくて幸せだった。
 僕は幸せ者だ。友達がいて家族がいて、好きな人もいる。
 そんなことを考えながら家へと歩を進めていたときだった。
 地が細やかに震え始めた。余震だ。これは大きのがくる。僕は咄嗟に走って周りに建物がない公園へと移動した。
 だが、地震はこなかった。余震で終わった。何分間か待ってみたがそれ以降大きな揺れは起きなかった。

「何だったんだろう、今の揺れ」

 安全と判断して公園から出る。背後でカサカサっと葉が風にゆすられて音を立てた。
 


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