現世勇者~勇者になり狂った少年~

サドマ

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罪悪感

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「ん? どうしたの、学校は?」

 母の言葉を無視して自分の部屋に入る。
 学校に行ける精神状態ではなかった。
 布団に包まり光を遮断した。
 
「悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない」

 僕は何も悪くない。
 だとしたら今、僕が感じているこの心臓を押しつぶされるような感情はなんだ。
 
「アァァァァァァア!!!!」

 近所迷惑も甚だしい声で叫んだ。
 僕には何も出来なかったんだ。あのままあの場所にいればあの悪魔に僕も殺されていたんだ。
 ドアノブがカチャリと回されドアが開いた。
 見なくとも誰か分かる。今、家にいるのは僕と母さんだけだ。

「どうしたの、カナ? 何か嫌なことでもあったの? 母さんに教えて」

 返事はしなかった。何て言えばいいのか全く分からなかったからだ。
 現実に起こったことを全て話したところで信じて貰えないのは考えずとも分かる。
 黙りこんで布団に包まり続ける僕の背中を母さんが布団と上から撫でた。

「まあ、言いたくなかったら言わなくて言い。辛かったんでしょ? じゃあ泣きな」

 全身に心地よい衝撃が走った。涙が溢れ流れる。
 1回、2回と母さんが背中を摩った。

「覚えてる? カナを泣かしたの」

 覚えている。あれは僕が幼稚園に通っていた頃の話だ。
 確かあの時、僕はカエの事が大嫌いだった。
 カエが生まれたせいで僕の人生は狂った、本気でそう思っていた。
 僕へ向けられる愛情の殆どをカエに奪われたからだ。
 僕が何をしても誰も僕を見てくれずカエばっかり贔屓する。
 お兄ちゃんだから我慢して、ほら泣かないカエが起きちゃうだろ。こんなことばかり言われていた。
 何でカエばっかり、僕のことも見てよ。そんな気持ちが心に押し込められず爆発したんだ。
 僕は物心もまだまともについてない妹の手のひらを抓った。。
 もちろんカエは号泣し僕は両親にことごとく叱られた。
 
「あの時、アンタ母さんにこう言ったんだよ。僕は悪くない、って。」

 確かにそうだった気がする。あの時の僕は本当に自分は悪くないと思っていた。

「あの時は本当にビックリしたよ。ひねくれて言ってると最初は思ってたけど、本気で自分は悪くないって思ってるんだもん」

 フフと笑って母さんが続けた。

「あれから10年たった今、アンタは本当に成長した。あのことを反省したのかは知らないけど、カエとの仲も良好だし。そしてほら、今、罪悪感で押しつぶされてる」

 僕は布団から顔を出した。
 何で母さんは僕が罪悪感に押しつぶされていると分かるんだ。何も言ってないのに。普通子供が学校から突然帰ってきて泣いていたら、イジメられたとか 思うだろ。

「なんで分かるって顔してるな。そりゃ母さんだから。」

 額をデコピンして満面の笑みを僕に向けた。
 今朝見たカエの表情と本当に似ている。

「カナは私の自慢の息子だ。だから母さんは信じてる。カナの成長がこれで終わらないって」

 涙を制服の袖で拭って僕は立ち上がった。
 ありがとう母さん。

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 バシッと母さんに背中を叩かれた勢いを利用して僕は走る。
 公園に、早く公園に。間に合わないかもしれない、もう遅いかもしれない。でも少しでも希望があるなら僕は行かなければいけない。
 罪悪感を感じるだけではダメなんだ。罪悪感を感じた後は罪滅ぼしをしないとダメなんだ。
 脇腹が痛むのを堪えて僕は走った。
 

 







 

 
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