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第三十三話 夜の務めとディナー

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「マーレ様、今日の夜は旦那様との夜の務めの日でございます」

 お昼過ぎ。部屋の中でゆっくりくつろいでいると、突然入室してきたメイドにそう言われ私は分かった。と返事をする。

「つきましては夕食後、入浴と身支度をお願いします」
「はい、わかりました」

 メイドは一礼して部屋から去っていった。ドアを閉める音がほぼ聞えない程に静かに消えていったのだった。

(サリオスくんと、か…)

 ちょっと浮かれた状態で夕食の時間が訪れた。ここに来てからは部屋で一人寂しく夕食を頂く日が続いていたが、この日は違うようで、なんと家族が集合しての夕食のようだ。

「マーレ様、食堂へどうぞ」
「はーい」

 食堂は一つの大きな長い机がど真ん中に配置され、真っ白なテーブルクロスの上には食器類と金ぴかの燭台に乗ったろうそくがシャンデリアと共に煌めいている。

「こちらへどうぞ」

 メイドが椅子を引き、私はその椅子に座った。その直後メラニーとマルク、そしてサリオスの順で食堂に人々が集っていく。

(挨拶しといた方が良いかな)
「皆様ごきげんよう」

 私が3人に向けて挨拶を交わすと、彼らも穏やかな笑みを浮かべてこんばんは。ごきげんよう。と挨拶を返してくれた。

「では、お食事をお持ちします」

 夕食が始まった。この日のメインディッシュは鴨肉のステーキだ。濃厚なデミグラスソースにしっかりとした鴨肉との相性がばっちりと合う。
 添えられた野菜にこっそりデミグラスソースをつけて食べてみたが、これもまた相性が良い。しかも今回はライス付きだ。不思議な事に形も味も日本のお米とほとんど変わらない。
 
 私は右後ろにいたメイドに米の産地について聞いてみる事にした。

「このライスはどこの産地ですか?」
「西の方ですね」 
「ありがとうございます」

 メイドは透き通った声音で説明すると、ぺこりとお辞儀をしたのだった。この間サリオスとマルク、メラニーは黙々と夕食を食べ進めている。
 そしてサリオスはというとライスとメインディッシュをあっという間に完食した。

「ステーキとライスのおかわりを」

 サリオスの食欲は凄まじい。私はしばらくその光景が目に留まってしまい、ナイフとフォークが止ってしまったのである。

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